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33話 ユウナの才能

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風紀員長はボクの体を掴む、あっやばいな。完全に怒られる。
まぁこの惨事を見れば無理もないか。
ボロボロになり倒れている黒虎の生徒、それに床は黒焦げ。
多少はやり過ぎたかもしれない、でも、ボクは悪いとは思っていない。

「はぁー、たっくもう血気盛んなのはいいけど、時と場所は弁えな」

ごもっともな事を言われる、冷静に考えれば戦う必要はなかった。
もし戦うならば魔導戦がある、だけど、ボクはフォストを潰して置きたかった。
これから先、ユウナさんに取って悪因分子になりえる。
とはいえ、あんな魔法を直撃したらどうなっていただろう? 考えるだけでちょっと恐ろしい。

「風紀員長と剣持っていたんですね」
「え、あぁこれね。わっちの魔道具」

ぼくとフォストの間に入った剣、ロングソードよりは細い刀身。
それでも相当な魔力が込められている剣。魔道具といわれ腑に落ちた。
風紀員長が魔道具を出して、止める事があるんだな、ただ単に言葉で止めるのがめんどくさいだけか。

「話しを少し戻すな。ユーリーは鬼才の軍師だ。それでもあり相当にレベルが高い魔法師。そんな奴とここで争うな」

風紀員長がガミガミと怒る、これに関しては全部、風紀員長が正しい。
でもボクの頭には全く入ってこない、フォストの事で目一杯。

「風紀員長、フォストにボクは勝てますか?」
「は? いきなり……今のままだときついだろうな」

ボクの言葉に風紀員長は、怒りを混じりにしていたが、ボクの顔を見ると途端、真剣な顔つきに変わる。

「でも勝機がない訳ではない。運良く、まだ魔導戦は始まらない」
「勝機って何ですか?」
「魔導戦の間までにとにかく、戦闘に慣れろ! それしか言えない。一つの遠回りであり一番の近道だ」

風紀員長は少し、複雑そうな表情をして、何処かに去っていく。
つうか、これ一体どうすればいいの? 床にある残骸を、どうするのか考えていたら、複数人の人が来た。
後片付けをする、みるみる内に床が綺麗になる。
後は任せるか、ボクは後にし、途方もなく学園を歩く。
戦闘経験か、確かにボクはカス程しかない。遠くもあり一番の近道。
風紀員長がいうと妙に説得力がある。
魔導戦の間までの期間、どのくらいあるか分からない。
けれど、その間になるべく多く、対人戦闘をする。

「執事長との特訓を再開するべきか」

ボクは学園に入学するって事になり、執事長との特訓は休止にしている。
特に他の誰かとする人はいないし、唯一できるのは執事長くらい。
ん? ボクが途方もない歩き──散歩をしている。
一つの薄暗い部屋から、激しい物音が聞こえる。
自然と音がする方に足を進める。
窓の方を見ると、少しボロボロのユウナさんがいる。

「ユウナさん、何をしているんですか?」
「えっ、クロくん?」

部屋に入り、ユウナさんに声を掛けていた。
ユウナさんは呆然としながら、こっちを振り向く。
一体ここで何をしていたんだろう? 薄暗い部屋を見渡す。
床には魔道具は散らばっていた。そういえば、ユウナさんと魔道具は、何かと関連性が多い。
こんな所で魔道具を使って、何をするんだ? 頭を悩ませていると、ユウナさんの口が開く。

「こんな所で何をしているとか思ったでしょ?」
「えっいや、あの」
「別に隠さなくていいよ」

ユウナさんの思わぬ言葉、それにボクは動揺をしてしまった。
クスクスと笑い声が聞こえた、視線を向けると、ユウナさんが口を隠していたが笑っている。
そんなユウナさんを見て、何処か緊張の糸がほぐれ、ボクは床に座り込む。
流れるようにユウナさんも座る。
特に喋る訳でもなく、ボクらは座っている。

「ユウナさんがここで何をしていたんですか?」
「うーん。何と言えばいいのかな? まぁ簡単にいうと特訓」

特訓? こんな人気のない所で特訓。魔道具が散らばっているし、魔道具を使った特訓? 

「私には才能がないから、魔道具を頼りにするしかない」

魔道具を隠して、少し恥ずかしそうにしていた。
実際魔道具はバカにされがちだが、応用性、汎用性は高い。
魔力を持っていても魔法を、使えない人はいる。そんな人たちにとって、魔道具は最高の代物。
本来ボクには無関係な事と思っていた、けど、魔帝の魔道具を使う事になった。今はもう身近な存在になっている。

「ユウナさんも魔導戦には出るんですか?」
「うん出るよ。今回の魔導戦は魔道具使用可だからね」

だから魔道具の特訓、それにしても魔道具少し多くないか? 様々な形の魔道具がある。
中には風紀員が使っていた物と、同じ代物もある。

「クロ君って魔道具に興味あるの?」

魔道具に見入ってたら、ユウナさんが聞いてくる。少し怯えている。
ボクの回答次第で、ユウナさんは傷つくだろう。

「ありますよ。魔道具は素晴らしい物なので、ただ風紀員が使ってたのと同じ物が合ったので」
「うんだって私が作ったからね」

脳裏に風紀員長の言葉を思い出す。
「ユウナは風紀員とは協力関係」か、色々と腑に落ちた。
風紀員の一室と、この部屋には少し共通点が合った。
それは床に魔道具が散らばっている事、この学園で魔道具は、あんま復旧されてないと思う。
その中で魔道具をあんな量、手に入れるのは至難の技。
魔道具を作れる人間がいれば別だ、しかも協力関係であれば、無限に手に入る。

「私は魔法を使うより、魔道具を作る方が好きなんだよね」

ニコッと満面な笑みを浮かべている。
まるで今まで言えなかった事を、やっと言えて嬉しそうな様子。
魔道具製作の方が得意、普通の魔法師ではできない事。
膨大な魔力量と技術がないと、魔道具は製作できない。
それを苦と思わず、楽しいと感じている。それで合って、高性能な魔道具。
これは完全にユウナさんの才能。世間的には魔道具は認められてはいない。
だが、もし再び、認められる事があればユウナさんの評価は上がる。
その為には魔道具を少しでも、広めた方がいい。

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