最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

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32話 宣戦布告

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ポンッと肩に手を置かれる、ゆっくりと後ろを振り向くと、そこには風紀員長が立っている。

「やぁやぁクロ、これから大変になるから覚悟してな」

いきなり脅しを掛けてきた。これまでの間も大変だった。
それなのにまだこれ以上、大変な事が起きるとか泣ける。
だとしても受け入れるしかない、ユウナさんの実績の為にも、ボクが動かないといけない。
理事長が言ってた、新たな試みの魔導戦はよく分からない。
ただ、それはきっと大事な事なのは何となく分かる。

「それでも少しは余裕ができるだろう」
「どういう事ですか?」

風紀員長の言葉の意味が、分からなかった為、問うと、分かりやすく教えてくれた。

「簡単にいうと、今は魔導戦の間の準備期間。我々風紀員も出るし、わっちも勿論出る」
「それ勝負にならないでしょ?」

冗談混じりの軽口を叩くと、風紀員長は少し、考える素振りをしてから、次に不適な笑みを浮かべる。
急に背筋が凍るような感覚が襲ってくる。
自然とボクは身構える。突拍子もない発言が来ると予感ができたから。
予感は見事に当たる。

「クロ、君がいる。期待しているよ」

肩をバンバンと叩かれる。痛い、軽く肩をさすると、大袈裟だなと風紀員長は言う。
何処だだよと思いながらも、風紀員長との戦闘を想像する。
結果としてはボクのボロ負け、たかが想像だけでもこの人は強い。
まだ実力が分からず、未知数、だからこそ勝てる気がしない。

「まぁ冗談はさて置き、君には期待している。せいぜい準優勝くらいはしてね~」
「優勝する気満々すか」
「まぁね、わっち前年度覇者だからさ」

この時のボクは言葉の重さを、まだ分かっていなかった。
後々知る事になる、風紀員長──アルトリアという魔法師の実力。
風紀員長は颯爽と何処かに消えていく。
さてボクはどうした物か、準備期間と言われてもピンっとこない。
誰かに聞くのが得策、風紀員長は去っていたし、ユウナさんは何処にいるか分からない。
うーん、どうした物か、頭を悩ませていると、突如に閃く。

「あっそうだ、あのピンク髪の女性に聞けばいい!」

よし決まったし即行動。
トコトコっと足音がする、一人ではなく複数人。
その足音は明らかに、こちらへ近付いてくる。
それが分かった為、ボクはその場に踏み止まる。
足音の方に体を向ける、すると、見覚えがある男が一人いる。
両横には手下のような二人がいる、白を基調とした制服を着こなしている。

「こんな所で何をしているんだい? 新米風紀員」

一々かんに触る言い方だ。
両横の手下はクスクスと笑っていた。
こいつら一体何しに来た? ボクは少し周りを見渡すと。
今、この広い空間にはボクらしかいない。
風紀員たちも生徒、教員すらいない。
この今の状態をわざわざ狙っていたのか? 流石は策士だなフォスト。

「お前らこそ何をしている? 早くクラスに戻ったらどうだい?」
「てめぇ誰に口を聞いてる!」
「我々は黒虎だぞ!」

このくらいで威張るとか、黒虎も底がしれているな。
一々こいつらに構う必要もない、横を通り過ぎろうとした。
急に押された、危うく転びかける所だった。
何がしたいこいつ? と、押した方を見るとニヤニヤしていた。

「何がしたい? 喧嘩でもする気?」
「いいねぇ! やろうぜ」

ボクの一言に乗るように、拳を一閃してきた。
上体を反らし躱す、すぐさまに横に移動し、左拳で一閃する。
ボクを押した男の腹に突き刺さる。
男は腹を抑え、悶絶し倒れる。

「さっきに手を出したのはそっちだからな」
「流石は強いね魔人殺しの執事」

フォストの何気ない一言、ボクは自然と拳を強く握っていた。
魔人が襲撃した噂が、流れていたのは知っていた。
だけど、ボクが魔人を殺した事は知っている人間は少ない筈。
何処でこいつ知った? そして今、何故この話題を出す? 一種の宣戦布告とも感じ取れる。
フォストはボクの眼前にまで近寄り、胸に軽くトンッと叩く。

「魔導戦に出るんだろう? せいぜい頑張れよ。落ちこぼれの執事!」

ハハッ、ボクの事を悪く言うならば、まだしも、ユウナさんの事を悪く言いやがった。
流石にもう我慢の限界だ。
ボクは殴る態勢を取ると、横に居た手下が近付いて来る。
自分のボスを守ろうってか、その意気はいい物だ。
でも今はうざったい! ボクは右手を伸ばし、手下の方に手を向ける。
右腕に魔力を込め、無詠唱で火球を出す。
火球は容赦なく、男を燃やす、男は叫びながらその場に倒れ込む。
炎は消える様子はなく、ひたすらに燃えている。

「次は僕が相手だな!」

フォストとボクはお互い睨み合う。
少しづづ、距離を取る、無造作に魔法を出すのも一つの手。
だが相手はあのフォスト、一手や二手先を考えるだろう。
考えなしに魔法を放つのは得策ではない。
どうにしかして、フォストに先手を打たせる。
雷魔法は滅多に拝む事ができない、その為、どんな範囲で威力か分からない。
対策をしようもない、だから敢えて、先手を打たせる。
明らか様に隙を作ってはいけない、フォストの噂が本当であれば、少しの事で勘付く。
ボクたちがいる所は無駄に広い空間だ、折角だ! この広さをフルに活用させて貰う。

「そんな距離を離すなよ!」

痺れを切らしたのか、フォストは手を振り、魔法を放つ。
全く魔法は見えない、それでも魔力の流れで放った事が分かる。
弾く事は難しい! それでも魔力の流れ、軌道を少しだけ把握した。
体勢を低くし、空間を走り回る。決して集中攻撃はさせない!

「チッ! ちょこまっかと!!」

だんだんとフォストの魔法が雑になっていく、それと同時に轟音が鳴り響く。
当たったら一溜りもないだろう。
魔法は床に直撃し、煙が生まれた、ボクは煙に紛れ込み、背後に立つ。
これで終わりだ。腕を振り上げ、殴打一閃しようとした時、ボクとフォストの間に、一つの剣が入り込む。

「はいそこまで、こんな所で大暴れしやがってバカ物が!」

声をする方を見ると、呆れ顔をした風紀員長がいる。
まずいな、いつからか分からないが見られていた。

「この勝負はわっちが貰う。付けたいならば魔導戦で戦いな!」
「おいくそ執事! 魔導戦で決着を着ける。最後に勝つのはこの僕だ!」

フォストはそう言い切ると、颯爽と帰っていく。
完全なる宣戦布告をされてしまった。


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