最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

文字の大きさ
上 下
29 / 51

29話 不穏な影

しおりを挟む
「ねぇアルトリア」
「なんだリリィ?」

考え事をしている時、風紀員の仲間であり幼馴染のリリィに話しかけられた。
何を言いたいのか、その少し悲しそうな表情で分かる。
リリィとは長い付き合いの為、表情だけで大体考えている事が理解できる。

「あんまりクロの事虐めちゃダメだよ?」
「あ? あぁ、そういえばリリィはクロみたいな子がタイプだもんね」
「いや、え、別にタイプじゃないよ?」

リリィは分かりやすく動揺をした。
相変わらずこいつ分かりやすい、だからこそ扱いやすい。

「クロはほらあれじゃん。なんか守ってあげたくなるってか、小動物みたいじゃん」
「それに美少年ってか」

わっちの言葉にリリィは食い気味に、首を縦に振る。
その姿を見て、わっちは少し引いてしまった。
人のタイプにとやかく言う趣味はないが、リリィはたまに暴走気味になるから怖い。
クロは確かに顔立ちは整っているし、愛されキャラだろう。
だとしても守ってあげたい小動物。それだけは断固として違う。
あれは獰猛の大型犬だ、自分でも言うのもあれだが、わっちはソロモンではトップクラス。
それでもクロは、自分の意志を貫き通す程の精神力。その原動力はユウナ。
彼はユウナに忠誠を誓っていと同時に、心酔をしている。

「……そろそろワタシたちも現場に向かう?」
「あぁそうだな。クロがいるとはいえ、魔剣持ちの魔人はきついだろうねー」

クロのポテンシャルは高い、魔人を倒せるとは思う。それでも彼はまだ覚醒をしてない。
よくて引き分け、悪くて悪戦苦闘といった所。
まぁそれは現場を見てのお楽しみにしよう。

「それにしても汚いね。この部屋」

リリィは呆れながら部屋を見て言う。それにわっちは苦笑いをする。
確かに部屋は汚い。
薄暗い部屋の中に、魔道具が散らかっている。魔道具から魔力も充満する。
この部屋から出て、赤玄に行くのは非常に面倒くさい。

「リリィおいで、最短距離で向かうよ!」

リリィは近付き、わっちの腕の中に収まる。
するとわっちの鼻腔に、柑橘系のいい匂いが通る。
リリィは本当に女子力があるんだなぁ、わっちと違って、これでも一応女子なのに、クロに男と思われたのは未だに許せない。

「それじゃあ行くからね」

わっちは出窓を開け、リリィを抱えて飛び出す。それと同時に全身に魔力を込める。
無詠唱で魔法を唱える、わっちの足下にに風が生まれる。
風によって体が宙に浮き、上に運び出される。
そんな時、轟音やら、激しい物音が上からする。
どうやら激しくやっているみたいだ。
少し急ぐか、リリィを抱えている腕とは、反対の手を下に向ける。
わっちの体は加速し、あっという間に半壊している建物まで登った。

「やっとついた?」
「あぁ……ついたな」

リリィは下を向いている為、今の現状を分かっていない。
わっちは現場を見て驚きを隠せていない。
クロが魔剣を手にし、魔人の胸を突き刺し殺している。
ユウナは泣き、クロに抱き付いている。
この光景はあまりにも残酷過ぎる。
       ◇

「……様失礼します」
「一体何の用だ?」
「ご報告に参りました。ソロモンに放した魔人が討伐されました」

その言葉を聞き、手に持っていたグラスを握り潰してしまう。
暗い部屋の中、今は俺と知らせにきた部下しかいない。
部下は俺を見るなり怯えている。

「どうしたそんなに震えて?」

椅子から立ち上がり、部下を見下ろすと、分かりやすく体を震わせている。
どうやらこいつも潮時だな。

「お前、もういらない」

部下の頭を掴む、次の瞬間、暗闇の部屋に一つの光が灯される。
赤い色が灯されると共に、二人の人物がこっちに近付いてくる。
一人は筋骨隆々で半裸の変態。その変態が鎖で、拘束されている緑髪の少年を連れてくる。

「例の人物を連れてきましたよ」
「……まぁいいだろう。そいつを儀式の魔に連れて行け」
「我が主の仰せのままに」

半裸の変態は緑髪の少年を連れて行った。緑髪の少年は激しく抵抗したが、その抵抗は虚しく、無意味に過ぎない。
俺は部下の頭から手を離す。

「次はないと思え」
「御意!」

次の手を考えないといけない。
ソロモンの連中は思った以上に厄介だ。
あの出来損ない魔人。俺の剣を持っていて易々と討伐された? 必然的に魔剣が向こうに渡ったと考えよう。
あの魔剣が渡ってもそこまでの害はない。
あれを使いこなせる奴は早々いない。
問題は何処の誰に魔人が討たれたかだ。
アルトリアに討たれたならばまだいい、もし他の違う、誰かに討たれた場合。真っ先に消さないといけない。

「おい出来損ないの魔人を討った奴を調べろ」
「り、了解いたしました」
      
 
         ◇

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉
ファンタジー
当社《東京異世界派遣株式会社》では、転送機で異世界へ派遣しております。 細胞サイズまで情報化して転送しますので、厳密に言えば、転送するたびに存在としては死んでから再生することになります。 さらに、体内に埋め込まれたナノマシンによって、異世界での現地適応を果たしておりますから、派遣依頼に応じて設定した〈勇者〉とか〈聖女〉〈魔法使い〉といった役割を全うしてもらいます。 ちなみに、〈俺様キャラの男〉や、〈ホスト狂いの女〉を派遣することになってしまったのは、バイト募集に応じてくれたのが、この二人だけだったからであって、他意はありません。あしからず。 ※勘違い系コメディーです。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

大魔法Hit!インパクト

夏々蜜柑
ファンタジー
 主人公カツミは美術部員。クラスメートの麻美と茂も同部の仲間だ。物の印象を様々なに記号化して描くのが得意でイマジネーション能力豊かな高校生。  日常の一歩下、現世と異なる魔法力を法則とする世界があった。大陸に出現した邪道機械との戦いの切り札としてカツミは召還されてしまう。  カツミを呼び出した魔法使いラヌは雷と火を極めた強力な術者だった。砦の主人と呼ばれ、領域を統治し、理力が高く威厳ある少女だった。しかし彼女の魔力でも邪道機械には歯が立たない。ラヌはカツミの世界の法則をイメージを介して転用させろと言う。あまりの強引さに渋々応じたカツミだったが、自分の空想をラヌに武装させてしまい、激しい怒りと当惑を買うものの、その威力は絶大だった。遠慮がちで平和主義のカツミと誇り高く激しい性格のラヌはコンビを組んで戦うことになる。  二人の戦いはこの世界の何を変えるのか――――

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...