最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

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28話 魔人との激突

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魔人の赤い双眸がこっちをギロッと睨む、ボクを見て、ほんの少し髪が逆上がる。
まるで獣が警戒をしているようだ、魔人は腕を動かし、何かの動作をしていた。
すると、だんだんと腕が変色し、赤黒くなり魔力が集まっているのが分かる。
直感的にこれを喰らったらまずい! ボクは腕を引き腰を落とす。
この剣でどこまで防げるか分からない。それでもさっき魔力の塊を真っ二つにした。
少しは自分を信じてみるか!

「おい新入り、勝てそうか?」

構えを取り、魔人の攻撃を待っている間。風紀員の人が語りかける。

「多分。今の手応え的には何とか。それでも周囲の被害を抑えれません」
「だったらそこはオレらがカバーする!」

先輩らしい事を言われてしまった。遠回しに魔人との勝負を任されしまった。
風紀員として選ばれて初日、そしてソロモンに入って二日目。
まだ二日だってのにとんでもないな、このまま行けばどうなる? そこでボクは考えるのをやめた。
未来の事を思う希望に満ち溢れている。けれど、風紀員長の発言を思い出し、考えるのを自然とやめてしまった。

「……バッ、ドゥ」

魔人の聞き取れない言葉が頭に響く。
思わず頭を抑えたくなる程だ、でもそれはできない。
気を抜けない、抜いた瞬間、ユウナさんたちが危ない。
ロングソードを握る手が強まる。
魔人から濃密度のエネルギーが、集まっていく。
それはだんだんと大きく膨れ上がり、綺麗な円の形をした、赤い球体。
ハハッ、赤い球体を見て思わず口角が上がる。喜びではなく絶望。
こんなのまとも相手にしろ? 冗談じゃない! 絶対に死ぬ。
だとしてもボクはやらないといけない。
腕が震えるのが分かる、歯を食いしばり、覚悟を決める。
と、同時に放たれる、音速を越える速さで、眼前にまでくる。
急いでロングソードを振り上げる、おもっていたよりスピードが、速かったその為、反応が遅れてしまった。

「ッ!!」

ロングソードに重心が乗っかる、これは赤い球体の重さ。
今すぐにでも離したいくらい重い、ピキッと音がなる。
その音にボクの額から汗が流れ始める。
魔人はニヤリと笑い、手をバンバンと叩き、面白がっている様子。
くっそ喜びやがって! うぅぅ、体を捻り、赤い球体ごと、薙ぎ払う。
球体は爆散し、その衝撃がもろに当たる。
後方に吹き飛び、背中に鋭い痛みが走る。
壁に激突し、一瞬意識が朦朧とした。
歯を食いしばってなかったら、確実に気絶をしていた。

「おい大丈夫か!?」

風紀員の一人がこっちにかけ寄り、心配をしてきた。
ありがたいけど、こっちに来るな馬鹿野郎。
壁にもたれながら立ち上がる。その時、右腕に違和感を感じた。
さっきまでの重さと違い、びっくりする程軽い。
パッと右腕を見ると、特に損傷はない。
しかし、ロングソードの刀身部分が、無くなっていた。
あの時に刀身が跡方もなく、消えてしまった。

「大丈夫です。それよりお嬢様を」
「お、おう」

ロングソードはなくなってしまった。
次にどうやって、あのエネルギーを対処した物か。
魔力操作はまだ上手くはない。だったら考えなしに全快で行く! あの魔人のニヤニヤした顔を崩してやる。
足をゆっくり、ゆっくりと進める。
魔人は体を揺らしながら突進してくる。
チッ!! いきなりか!? 魔人の変則的な拳がボクを捉える。

「ハハッ。このくらいじゃあ止まらんぞ」

急な変則的な攻撃には驚いた。でも、痛くはない。
魔力を全開にした事が正解だった、もし出してなかったら、どうなっていたか想像もできない。
魔人の攻撃は一瞬止んだが、たて続けに殴打が飛んでくる。
ボクは反撃ができないでいた──しようとしていない。
魔法、魔力戦ではボクは不利だ。だけど、肉弾戦となれば勝機がある。

「なんで彼奴攻撃しないんだ?」
「どうせビビっているんだろう」

ボクが反撃をしない事に、周りにいる生徒たちがボソボソと言っている。
そんな事言う暇あれば、どっかにかくれるか消えて欲しい物だ。
確かに反撃をすればいい話しだ。それには一つ問題がある。
反撃をした場合、ユウナさんが巻き込まれる。
直線上にユウナさんたちがいる、ボクの攻撃は相手を吹き飛ばしてしまう。
そうなると、反撃をしたくてもできない。
どうか気付いて欲しい!

「彼奴まさか!? リステリちょっと来い!」

直線上の風紀員と、ユウナさんが動き始めた。
それに魔人が気付き、方向転換し、向かって行こうとする。
魔人が一歩、足を踏み込んだ時、服を掴む。すると魔人が止まる。

「やっぱりな!」
「えっ何がですか?」
「彼奴はお前を巻き込まないようにしている」

ある程度、離れたのが分かった。だから、拳を握り振り抜く。
魔人の体を捉える。宙に浮き、吹き飛んでいた。

「やっと殴れた! ここからが反撃開始だ!」

歩みを進めて、魔人に追撃をしようと試みる。魔人はばっと起き上がり、飛びついてくる。
横に体をずらし躱す。続け様に膝蹴りを喰らわす。
その時、始めて魔人から血飛沫が舞った。
苦し紛れに手を振り回す、軌道が簡単過ぎる為、受け流し、一撃、また一撃を当てる。
とうとう魔人は膝をついた。これで終わりだ! 腕を振りあげる!? 凄まじい嫌な予感が襲う。咄嗟に距離を置く。

「ハハハッ、まじで危ない!!」
「カッカッカ。お前……殺す」

魔人は片言だけど、今ボクを殺すと言った。
それを証拠に魔人の右手には、禍々しい剣を持っている。

「あれが魔剣」

風紀員長と話している時、急に入った緊急連絡。
それを聞いてから魔人と対決。少し腑に落ちない所が合った。
それでも今解消された、奥の手として魔剣を隠していた。
どのくらいの力を持ち、威力があるか分からない。
だからこそ油断ができない。
魔人は魔剣を振り回す、まるで棒切れを振っているようだ。
けっして、剣技──剣術ともいえない。
それに関してはボクも、人の事はいないな。

「それにしても禍々しい過ぎる!」

軌道は一定、だがそれを補う程の禍々しいさ、魔力量。
簡単には避ける事ができる、それでも一撃でも当たれば命がない、と思わせる程の存在感。
これが魔剣の力か、上段からあ振り降ろし様に、蹴りを合わせ、魔剣が弾き飛び地面に突き刺さる。
魔人の顔が絶望に変わっていく、そのまま回し蹴りを魔人に叩き込む。
魔人は倒れ、体がピクリともしなかった。

「本当にこれで終わった」

思ったより体力を使ったな、魔力を全快とも考え物だな。
戦いが終わった事に一斉に歓声が、広まる。それを見て、ボクは少しホッとしてしまう。
ユウナさんの所に向かいたいが、魔剣が一番、気になる。
魔剣の所に向かい、引き抜く。

「これが魔剣、禍々しいな。厳重に保管するか処分をした方がいいだろ」

次の刹那、ユウナさんの悲鳴が聞こえる。
ユウナさんの所を振り向くと、さっき倒した魔人がユウナさんに襲い掛かっている。
このままじゃあまずい! ユウナさんが危ない。
ボクは急いで向かい、魔人を引き離す。
魔人は抵抗し、ボクは押し倒される。
だったら!! ──魔人の胸に魔剣を突き刺す。
        ◇


 

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