最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

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23話 風紀員

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手を差し伸ばされた、その手を掴み握手する。
この人が風紀員長? 思っていたのと違う。あの説明からだともう少し、厳つい人かと思った。
その真逆で綺麗で華奢な体。それでも握手して感じる事。
まるで岩みたいに重たく、魔力の質が違う。
風紀員長はニコッと笑みを浮かべ、ボクの手を離した。と思えば一回転し、出入り口の扉を指差した。

「いつまでもこの場所にいる訳にはいかないし、わっちたちの部屋に行こう!」
「えっ?」

ちょっと待て!? わっちたちの部屋って何? それよりユウナさんどうするの? 風紀員長はボクの腕を引っ張る。
この人見た目より、力が強い!? このままだと無理矢理連れていかれる。
あんましたくはないが、致し方ない! 右上半身に魔力を注ぐ。
パチンと音と共に、風紀員長の腕が弾かれる。
風紀員長は特に驚いた様子はない。だけど、口を酸っぱくしたような顔で見てくる。
やめて欲しい……まじで怖い! 距離を縮めてくる。
あっ、これ完全に怒らせたかもしれない!?

「ねぇねぇどういう要件かな?」

声音は優しいのに圧力がある。多分怒らせた。
風紀員長の実力は分からない。
それでもボクには、執事としての役目がある。

「お嬢様は一体どうするんですか?」
「ユウナ……? あっ、ごめん。ユウナも一緒に行こう!」

今この人、素直に謝ったよね!? 完全にユウナさんの事忘れてたやん。
ユウナさんの方を見ると、苦笑いをしていた。
ユウナさんの事を名前呼びしているから、多分親しい関係性なのだろう。
本当この人は凄い人だ。風紀員長は咳払いをし、改めて部屋に向かう事になった。
少し見慣れた螺旋階段を上り、理事長室より上の通路まで上る。
通路が見えるが、他の所と違い、全体的に薄暗く奥が見えない。
風紀員長は我が物顔で進む。その反対にユウナさんとボクは、警戒しながら歩を進める。
ここだけ何で薄暗いんだ? 変な研究でもしているのかと思ってしまう程。
怪しくて仕方ない通路だ。

「ユウナって本当気が強いよね~」
「いきなり何ですか?」
「え? あのフォストの婚約を啖呵切って断るのが」
「嫌な物は嫌何です」

ご最もです、この人一体ボクたちを何処まで連れて行く気だ? もし危なそうだったら帰ろう。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ!」

風紀員長は後ろを振り返りながらいう。
緊張じゃなくてどちらかっていうと、怪しくて怖いんだよ。
風紀員長はこちら向きで歩いている。
後ろに目がついてるのかって、言いたい程に体がブレる事がなく進んでいる。
だが急に止まった。一つの部屋の前に止まった。

「ここがわっちたちの部屋さ」

風紀員長は扉を開ける、すると自然と中が見える。
刃物を持った黒衣のローブが、複数人居った。
静かにボクは扉を閉めた。
よし帰ろうと思って、ユウナさんの腕を掴むが、襟元を引っ張られ首が絞まる。
グゥッと苦しんでいると、風紀員長が不適な笑みで言う。

「何処に行こうとしているのかな?」
「だったら言わせて貰うけど! あんな危ない場所入れるかよ!」
「入って貰わなければ困るよ。ここが風紀員室だから」

風紀員長の言葉に絶句をする。
そんなボクの様子を見て、風紀員長は笑い出した。

「あははは! 君案外いい顔するね」
「クロ君。この人と一緒になるとは災難だね」
「おっと? ユウナそれはどういう意味だい?」
「自分が一番理解しているんじゃないの?」

ボクを挟んでユウナさんと、風紀員長が言い争いをし始めた。
頼む誰か助けてくれ、ボクを掴んでいる後ろの人怖いから、解放して欲しい。

「学園の恐怖の権化。地獄の風紀員の大王」
「あのさぁ本当の事言わないでくれる?」

今、よく分からない単語が飛び回っていた。恐怖の権化? それに地獄の風紀員? ちょっと待て? ボクは一体何に配属されたのだ。

「さっきから部屋の前でうるせぇ! 入るならば入れ!」
「あっはい」

急に勢いよく扉が開かれ、無愛想な男が怒鳴った。その言葉は正しく、ボクらは返事をし入った。
中に入るといかにも怪しげな、黒衣のローブが何人もいる。
部屋は思った以上に狭く、大きい正方形の机が真ん中にある。
部屋は通路と同様に薄暗い。
そして何より、異質といえる程の魔力が充満している。
あの闘い以降、魔力に敏感になっている為、気分が悪くなりそうだ。
風紀員長は黒衣のローブの中心に立つ。

「さぁ新しい仲間の歓迎をしよう」
「賛成です! ですがリステリ貴様は消えろ!」

さっき扉を開けた男が、ユウナさんを溜め息を吐いた。

「なぁ新人! リステリに帰って欲しいよな?」
「…………」
「何首を傾げているんだよ? そこのてめぇだよてめぇ! お前に聞いてるんだからな」
「あぁ、お嬢様よりてめぇが消えろ」

ユウナさんを邪険に扱おうとしたから、苛立ちを隠せずに本音を言ってしまった。
男はフードを取り、怒り心頭の様子だ。
こちらに真っ直ぐ向かってくる。
眼前の距離まで近付いて来られた。

「おいディードやめろ」
「うるせぇ! 舐めた口を聞きやがったから教育してやるんだよ!」

男が拳を振り上げたのと同時に、横の壁に男が突き刺さった。
風紀員長が手を男に向けていた。今のは風紀員長の攻撃なのだろう。

「クロ君。あんま悪く思ってやらないでくれ。そいつはちょっと不器用なんだ」
「別にどっちでもいいすよ。お嬢様を悪く言わない限り」
「ああそれで勿論いい」

 
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