最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

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18話 素質の意義とは?

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あの模擬が終わってから、ボクはユウナさんに質問責めを喰らっている。
最初は体の心配だけだったが、だんだんとヒートアップしていき、ボクの闘いでの摩訶不思議な力について聞いてくる。
あの時は何も考えれず、力を使えたが今となれば、自分でも全く分かっていない。
何故あの時魔法を使えたのか。
一番の問題は勝手に収束した、ポケットの中に入っている本。
急に大きくなったり収束するし、意味が分からない。

「ねぇ聞いてるの!?」
「えっあ、すみません」

話しを聞いてなかった為、ユウナさんが怒り出した。しかも眼前まで近付いて来た。
顔が近い。
余裕で勝ちますと、言ったのにボロボロになって勝った。
合わせる顔が全くない。
少し後ろに下がって距離を取る。
するとユウナさんの顔がシュンとなる。
これはこれで申し訳ないぞ!?

「あのここって何処ですか?」
「え? 医療室」

医療室といわれあぁーとなる。
なんせ壁も床も真っ白で、よく分からない装置がたくさんある。
それに色んな魔力が部屋に充満している。
今ボクらは何故医療室にいる? よーく思い出せぇ。
模擬が終わってからユウナさんに会った。
そこまでは記憶がある。それ以降は一切ない。
頭を回せ思考を巡らせろ。
ユウナさんと出会い、刀剣袋を手渡された後、ボクはその場に倒れ込んだ。
魔技場にいたローブの人たちが、ここまで運んでくれて今に至る。
慣れない事をしたせいか、頭が冴えないし回らない。
ユウナさんがいぶかしむように、顔を覗いてくる。
気が済んだのか覗くのやめて、唐突に上を向いた。
一体どうしたんだろう? と思っていると、淡々と語った。

「君は私と全く違うんだねー、私と違って物凄く強い。それに凄まじい魔法」
「ユウナさん何が言いたいんですか?」
「嬉しくもあり悔しい。同じと思っていたんだけどな」

ボクは今の状況。そしてユウナさんの言葉に理解ができなかった。
いや違う、理解をしようとしていない。
したくない、これ以上ユウナさんから聞きたくない。
手を伸ばし、顔に触れると水滴が手に流れる。
水滴? 今何処から流れた? ゆっくりゆっくりと顔を見る。
目尻に涙を溜めたユウナさんの表情。
なんで今泣いている? 誰が泣かせた? ボクか。
ボクしかいない。一体何の為に闘った? 泣かせる為に闘った訳ではない。
どうすればいい? 分からない。
ユウナさんを、嗚咽混じりながら語っている。語るのをやめない。

「君も落ちこぼれの下から去るんでしょ? だって君には素質がある。私と比べ物にならない程に、立派な魔法師になれる」

今までに言われた事ない言葉。それに欲しかった言葉を言ってくれる。
でも今ではない。断言できる、ボクが今望んだ言葉ではない。
もっと堂々と誇って欲しかった。
自分のように喜んで欲しい、ボクはただの駒に過ぎない。
だけどきっとユウナさんは理解をしない。
それが彼女の優しさでもある。
ボクはこのまま恩人である彼女を、見捨てて何処かに消えるのか? ……違うだろ。
否定をしろ、全力で否定し気持ちを伝えろ。

「ふざけんな! なんでボクが去らないといけない!」
「えっクロ君?」
「誰かに離れろとでも言われましたか? それならばボクが話しにいきます」
「ま、待って……」
「ボクは貴女に忠誠を誓った身、離れるとかないんですよ!」
「でも君には素質が?」
「素質? そんなのはどうでもいい! ボクは貴女を守れるだけの力があればいい。立派な魔法師にもなる気ない。この学園に入学したのも貴女の為だ」

はぁはぁとボクは息を切らしながら、ユウナさんに感情をぶつけた。
そこで初めて気付いた。自分の体が震えている。
パーンと手が払われる。
直後、ボクの胸元に拳が飛んできた。
ユウナさんを見ると、涙目だが怒っている表情だった。
ユウナさんの拳から、魔力の乱れを感じ取れた。
魔法を使えるようになって、魔力の属性も流れも見える。

「そんな事を言わないでよ、君は私と一緒に居ってはダメ」
「それならば言わせて貰います。お断りです。命令にも従いません」
「どうして?」
「ボクがユウナさんと一緒にいたい、ただそれだけです」
「変なのー、だったら命令していい?」
「頼みではなく命令すか、変なのでなければいいですよ」

変な命令ならば絶対に聞かない。
ユウナさんの魔力は未だに乱れているが、さっきと違い穏やかな笑顔になっている。
これはこれでよかったのか? いやこれでいい。
ボクはユウナさんの笑顔を見たかったんだ。

「私と一緒も魔法師になって」
「一緒にですか?」

ユウナさんからの命令。
それは想像もできない、思わぬ命令に腑抜けた返しをしてしまった。
ユウナさんはもっと笑顔になった。

「うん。私は実績ないから無理かもだけどね」

実績、ソロモンは多分実力主義。
クラス分けにも魔法師に関わるだろう。
ユウナさんは今落ちこぼれ、と言われ実績がない状態。
だとするならばボクが出す答えは。

「だったらボクがユウナさんの実績になります。貴女の右腕になります」
「期待しているね」

期待か……今ここの言葉凌ぎかもしれない。普通に期待をしてくれているだけ。
どっちにしろ分からない。
右腕として活躍すればいい。
コンコンと部屋に音が響く。
音の方向を見ると、少し場違い感を出している理事長が立っていた。
ユウナさんの裏返った声音も、また響いた。
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