18 / 51
18話 素質の意義とは?
しおりを挟む
あの模擬が終わってから、ボクはユウナさんに質問責めを喰らっている。
最初は体の心配だけだったが、だんだんとヒートアップしていき、ボクの闘いでの摩訶不思議な力について聞いてくる。
あの時は何も考えれず、力を使えたが今となれば、自分でも全く分かっていない。
何故あの時魔法を使えたのか。
一番の問題は勝手に収束した、ポケットの中に入っている本。
急に大きくなったり収束するし、意味が分からない。
「ねぇ聞いてるの!?」
「えっあ、すみません」
話しを聞いてなかった為、ユウナさんが怒り出した。しかも眼前まで近付いて来た。
顔が近い。
余裕で勝ちますと、言ったのにボロボロになって勝った。
合わせる顔が全くない。
少し後ろに下がって距離を取る。
するとユウナさんの顔がシュンとなる。
これはこれで申し訳ないぞ!?
「あのここって何処ですか?」
「え? 医療室」
医療室といわれあぁーとなる。
なんせ壁も床も真っ白で、よく分からない装置がたくさんある。
それに色んな魔力が部屋に充満している。
今ボクらは何故医療室にいる? よーく思い出せぇ。
模擬が終わってからユウナさんに会った。
そこまでは記憶がある。それ以降は一切ない。
頭を回せ思考を巡らせろ。
ユウナさんと出会い、刀剣袋を手渡された後、ボクはその場に倒れ込んだ。
魔技場にいたローブの人たちが、ここまで運んでくれて今に至る。
慣れない事をしたせいか、頭が冴えないし回らない。
ユウナさんが訝しむように、顔を覗いてくる。
気が済んだのか覗くのやめて、唐突に上を向いた。
一体どうしたんだろう? と思っていると、淡々と語った。
「君は私と全く違うんだねー、私と違って物凄く強い。それに凄まじい魔法」
「ユウナさん何が言いたいんですか?」
「嬉しくもあり悔しい。同じと思っていたんだけどな」
ボクは今の状況。そしてユウナさんの言葉に理解ができなかった。
いや違う、理解をしようとしていない。
したくない、これ以上ユウナさんから聞きたくない。
手を伸ばし、顔に触れると水滴が手に流れる。
水滴? 今何処から流れた? ゆっくりゆっくりと顔を見る。
目尻に涙を溜めたユウナさんの表情。
なんで今泣いている? 誰が泣かせた? ボクか。
ボクしかいない。一体何の為に闘った? 泣かせる為に闘った訳ではない。
どうすればいい? 分からない。
ユウナさんを、嗚咽混じりながら語っている。語るのをやめない。
「君も落ちこぼれの下から去るんでしょ? だって君には素質がある。私と比べ物にならない程に、立派な魔法師になれる」
今までに言われた事ない言葉。それに欲しかった言葉を言ってくれる。
でも今ではない。断言できる、ボクが今望んだ言葉ではない。
もっと堂々と誇って欲しかった。
自分のように喜んで欲しい、ボクはただの駒に過ぎない。
だけどきっとユウナさんは理解をしない。
それが彼女の優しさでもある。
ボクはこのまま恩人である彼女を、見捨てて何処かに消えるのか? ……違うだろ。
否定をしろ、全力で否定し気持ちを伝えろ。
「ふざけんな! なんでボクが去らないといけない!」
「えっクロ君?」
「誰かに離れろとでも言われましたか? それならばボクが話しにいきます」
「ま、待って……」
「ボクは貴女に忠誠を誓った身、離れるとかないんですよ!」
「でも君には素質が?」
「素質? そんなのはどうでもいい! ボクは貴女を守れるだけの力があればいい。立派な魔法師にもなる気ない。この学園に入学したのも貴女の為だ」
はぁはぁとボクは息を切らしながら、ユウナさんに感情をぶつけた。
そこで初めて気付いた。自分の体が震えている。
パーンと手が払われる。
直後、ボクの胸元に拳が飛んできた。
ユウナさんを見ると、涙目だが怒っている表情だった。
ユウナさんの拳から、魔力の乱れを感じ取れた。
魔法を使えるようになって、魔力の属性も流れも見える。
「そんな事を言わないでよ、君は私と一緒に居ってはダメ」
「それならば言わせて貰います。お断りです。命令にも従いません」
「どうして?」
「ボクがユウナさんと一緒にいたい、ただそれだけです」
「変なのー、だったら命令していい?」
「頼みではなく命令すか、変なのでなければいいですよ」
変な命令ならば絶対に聞かない。
ユウナさんの魔力は未だに乱れているが、さっきと違い穏やかな笑顔になっている。
これはこれでよかったのか? いやこれでいい。
ボクはユウナさんの笑顔を見たかったんだ。
「私と一緒も魔法師になって」
「一緒にですか?」
ユウナさんからの命令。
それは想像もできない、思わぬ命令に腑抜けた返しをしてしまった。
ユウナさんはもっと笑顔になった。
「うん。私は実績ないから無理かもだけどね」
実績、ソロモンは多分実力主義。
クラス分けにも魔法師に関わるだろう。
ユウナさんは今落ちこぼれ、と言われ実績がない状態。
だとするならばボクが出す答えは。
「だったらボクがユウナさんの実績になります。貴女の右腕になります」
「期待しているね」
期待か……今ここの言葉凌ぎかもしれない。普通に期待をしてくれているだけ。
どっちにしろ分からない。
右腕として活躍すればいい。
コンコンと部屋に音が響く。
音の方向を見ると、少し場違い感を出している理事長が立っていた。
ユウナさんの裏返った声音も、また響いた。
最初は体の心配だけだったが、だんだんとヒートアップしていき、ボクの闘いでの摩訶不思議な力について聞いてくる。
あの時は何も考えれず、力を使えたが今となれば、自分でも全く分かっていない。
何故あの時魔法を使えたのか。
一番の問題は勝手に収束した、ポケットの中に入っている本。
急に大きくなったり収束するし、意味が分からない。
「ねぇ聞いてるの!?」
「えっあ、すみません」
話しを聞いてなかった為、ユウナさんが怒り出した。しかも眼前まで近付いて来た。
顔が近い。
余裕で勝ちますと、言ったのにボロボロになって勝った。
合わせる顔が全くない。
少し後ろに下がって距離を取る。
するとユウナさんの顔がシュンとなる。
これはこれで申し訳ないぞ!?
「あのここって何処ですか?」
「え? 医療室」
医療室といわれあぁーとなる。
なんせ壁も床も真っ白で、よく分からない装置がたくさんある。
それに色んな魔力が部屋に充満している。
今ボクらは何故医療室にいる? よーく思い出せぇ。
模擬が終わってからユウナさんに会った。
そこまでは記憶がある。それ以降は一切ない。
頭を回せ思考を巡らせろ。
ユウナさんと出会い、刀剣袋を手渡された後、ボクはその場に倒れ込んだ。
魔技場にいたローブの人たちが、ここまで運んでくれて今に至る。
慣れない事をしたせいか、頭が冴えないし回らない。
ユウナさんが訝しむように、顔を覗いてくる。
気が済んだのか覗くのやめて、唐突に上を向いた。
一体どうしたんだろう? と思っていると、淡々と語った。
「君は私と全く違うんだねー、私と違って物凄く強い。それに凄まじい魔法」
「ユウナさん何が言いたいんですか?」
「嬉しくもあり悔しい。同じと思っていたんだけどな」
ボクは今の状況。そしてユウナさんの言葉に理解ができなかった。
いや違う、理解をしようとしていない。
したくない、これ以上ユウナさんから聞きたくない。
手を伸ばし、顔に触れると水滴が手に流れる。
水滴? 今何処から流れた? ゆっくりゆっくりと顔を見る。
目尻に涙を溜めたユウナさんの表情。
なんで今泣いている? 誰が泣かせた? ボクか。
ボクしかいない。一体何の為に闘った? 泣かせる為に闘った訳ではない。
どうすればいい? 分からない。
ユウナさんを、嗚咽混じりながら語っている。語るのをやめない。
「君も落ちこぼれの下から去るんでしょ? だって君には素質がある。私と比べ物にならない程に、立派な魔法師になれる」
今までに言われた事ない言葉。それに欲しかった言葉を言ってくれる。
でも今ではない。断言できる、ボクが今望んだ言葉ではない。
もっと堂々と誇って欲しかった。
自分のように喜んで欲しい、ボクはただの駒に過ぎない。
だけどきっとユウナさんは理解をしない。
それが彼女の優しさでもある。
ボクはこのまま恩人である彼女を、見捨てて何処かに消えるのか? ……違うだろ。
否定をしろ、全力で否定し気持ちを伝えろ。
「ふざけんな! なんでボクが去らないといけない!」
「えっクロ君?」
「誰かに離れろとでも言われましたか? それならばボクが話しにいきます」
「ま、待って……」
「ボクは貴女に忠誠を誓った身、離れるとかないんですよ!」
「でも君には素質が?」
「素質? そんなのはどうでもいい! ボクは貴女を守れるだけの力があればいい。立派な魔法師にもなる気ない。この学園に入学したのも貴女の為だ」
はぁはぁとボクは息を切らしながら、ユウナさんに感情をぶつけた。
そこで初めて気付いた。自分の体が震えている。
パーンと手が払われる。
直後、ボクの胸元に拳が飛んできた。
ユウナさんを見ると、涙目だが怒っている表情だった。
ユウナさんの拳から、魔力の乱れを感じ取れた。
魔法を使えるようになって、魔力の属性も流れも見える。
「そんな事を言わないでよ、君は私と一緒に居ってはダメ」
「それならば言わせて貰います。お断りです。命令にも従いません」
「どうして?」
「ボクがユウナさんと一緒にいたい、ただそれだけです」
「変なのー、だったら命令していい?」
「頼みではなく命令すか、変なのでなければいいですよ」
変な命令ならば絶対に聞かない。
ユウナさんの魔力は未だに乱れているが、さっきと違い穏やかな笑顔になっている。
これはこれでよかったのか? いやこれでいい。
ボクはユウナさんの笑顔を見たかったんだ。
「私と一緒も魔法師になって」
「一緒にですか?」
ユウナさんからの命令。
それは想像もできない、思わぬ命令に腑抜けた返しをしてしまった。
ユウナさんはもっと笑顔になった。
「うん。私は実績ないから無理かもだけどね」
実績、ソロモンは多分実力主義。
クラス分けにも魔法師に関わるだろう。
ユウナさんは今落ちこぼれ、と言われ実績がない状態。
だとするならばボクが出す答えは。
「だったらボクがユウナさんの実績になります。貴女の右腕になります」
「期待しているね」
期待か……今ここの言葉凌ぎかもしれない。普通に期待をしてくれているだけ。
どっちにしろ分からない。
右腕として活躍すればいい。
コンコンと部屋に音が響く。
音の方向を見ると、少し場違い感を出している理事長が立っていた。
ユウナさんの裏返った声音も、また響いた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~
夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】
「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」
アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。
理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。
もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。
自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。
王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると
「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」
オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが……
アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。
そして今日も大きなあの声が聞こえる。
「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」
と
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
大魔法Hit!インパクト
夏々蜜柑
ファンタジー
主人公カツミは美術部員。クラスメートの麻美と茂も同部の仲間だ。物の印象を様々なに記号化して描くのが得意でイマジネーション能力豊かな高校生。
日常の一歩下、現世と異なる魔法力を法則とする世界があった。大陸に出現した邪道機械との戦いの切り札としてカツミは召還されてしまう。
カツミを呼び出した魔法使いラヌは雷と火を極めた強力な術者だった。砦の主人と呼ばれ、領域を統治し、理力が高く威厳ある少女だった。しかし彼女の魔力でも邪道機械には歯が立たない。ラヌはカツミの世界の法則をイメージを介して転用させろと言う。あまりの強引さに渋々応じたカツミだったが、自分の空想をラヌに武装させてしまい、激しい怒りと当惑を買うものの、その威力は絶大だった。遠慮がちで平和主義のカツミと誇り高く激しい性格のラヌはコンビを組んで戦うことになる。
二人の戦いはこの世界の何を変えるのか――――

東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!
大濠泉
ファンタジー
当社《東京異世界派遣株式会社》では、転送機で異世界へ派遣しております。
細胞サイズまで情報化して転送しますので、厳密に言えば、転送するたびに存在としては死んでから再生することになります。
さらに、体内に埋め込まれたナノマシンによって、異世界での現地適応を果たしておりますから、派遣依頼に応じて設定した〈勇者〉とか〈聖女〉〈魔法使い〉といった役割を全うしてもらいます。
ちなみに、〈俺様キャラの男〉や、〈ホスト狂いの女〉を派遣することになってしまったのは、バイト募集に応じてくれたのが、この二人だけだったからであって、他意はありません。あしからず。
※勘違い系コメディーです。
※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる