最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

文字の大きさ
上 下
16 / 51

16話 学園の実力者? いえ卑怯者です!

しおりを挟む
「さぁどうした?」

両手を広げ、まるで掛かってこいと、挑発。
余裕の笑みを浮かべている。実に不愉快で不気味だ。
この挑発を乗るべきか? 拳を握り締め、距離を縮め拳を軽く出す。
拳はドルグアの顔面に見事直撃する。薄笑いをし反撃をしてこない。
やはり何か可笑しい。物理攻撃とはいえ、当たれば多少の痛みはある。全く感じないと、言わんばかりに薄笑いを浮かべている。
本当にボクの攻撃は効いてるのか? 少し不安になってきた。バックステップをし距離を取る。
さぁてどう出ればいい? もし物理攻撃が効かないのであれば、勝ち目はほぼゼロ。そして負けてユウナさんの人生は転落。

「どうしたその程度か?」

ドルグアの挑発がやたらと響く。
少し深呼吸をし、さっき同様に距離を詰める。
攻撃のモーションに移ろうとした時、複数の火球が飛んでき被弾する。

「ッ!!」

顔と体に直撃した。熱い、皮膚が焼けるような感覚。でもな執事長の火球はこれの比じゃねぇ! 一瞬止まっていた攻撃。体を捻らせ勢いを付ける。
拳を再び繰り出し、顔面を捉える。スゥッとドルグアが火球を、準備しているのが見えた。もう既に勢いのある拳を振り抜き、倒れ込むようにドルグアにぶつかった。
すると火球が空を切り爆散する。

「チッ!!」

と、分かるように大きいな舌打ちが、聞こえた。次の刹那、背中に鋭い痛みがが走った。ドルグアが背中へ肘を叩き込んだ。
ドルグアはニヤリと笑う。ボクが苦しんでいる姿を見て、喜んでいるのだろ? 何か勘違いしているぞ? ここからはボクの得意分野だ。
ガシッとドルグアの首根っこを掴み、立ち上がると同時に、ドルグアを引きずって走る。

「離せぇ! ぶっころ......」

苦しいんだろ? でも離さないぞ! ドッドッと地面が抉れる音が響き渡る。地面は土と砂でできている。その為簡単に抉れるし壊れる。
一つ難点を上げるとすれば砂煙が出る。そこだけは致し方ない。
ボクの視界に観客席の柱となる壁が映る。ボールを転がすイメージで、ドルグアを投げる。
勢いが付き、地面にバウンドし一回転しながら壁に激突した。
次の瞬間、観客から悲鳴の言葉と、ボクに対するヤジが入る。

「おい彼奴! 全然魔法を使わないぞ」
「この模擬意味あるのか?」

ヤジの中にはこの闘いの意味を、問う奴も出てきた。ドーンと轟音が鳴り響く。音をする方に視線を向ける。と空に雷の渦が舞っていた。

「静粛にしろ。ワシのやり方に文句があるのか?」

理事長は観客を静かにさせた。これは注意、いや正確には脅しだ。俺が決めた事、それに文句は誰にもさせないと。まるで暴君だ。 そんな事を考えていたら、顔面が血塗れのドルグアが視界に映った。どうやら理事長が観客に注意している間に、壁から出てきたようだ。
ドルグアは飄々としている。
ダメージを負っているのに、余裕の表情は変わらない。
そこで一つ疑問が出てくる、何故壁に激突したのに、顔面血塗れで済んでいるのだ? 見た所顔以外に外傷はない。
ボクの殴打も一切効いてなかった。それに殴った時、身のないカスカスの袋を殴ってる感覚だった。
まるで威力を押し殺しているような。

「痛てぇぇな。物理攻撃半減しているのにバカくそ痛いなァ!」

どうやらボクの想定は当たっていた。威力を半減されていた。その為、ダメージは効いてなかった。それには納得がいく。だがここで問題が発生。何故物理攻撃限定で半減をした? 使だってある。
一体何故だ? まるで最初から魔法を使えないのを知っていたみたいだ。
そんな事をドルグアは知る由がない。本当にそうか? 最初に感じた違和感。これも実は関係しているのでは? 

「お前見た目の割に力があるな。肉体を覆っているようだ」
「褒め言葉として受けとっておくよ」
「可愛げのない奴め!」

ドルグアは地面を蹴り、突進してくる。
ドルグアが向かって来る間。背筋が凍るような感覚。このまま攻撃を喰らってはいけない。
体が──本能が叫んでいる。それに従うようにドルグアの突進を、ギリギリで躱しながら攻撃をする。
次の瞬間、ボクの右腕は痺れる。それは全身にまで痺れが回り、硬直した。
理解が追いつかなかった。自分の身に何を起きているのか。

「やっと効いたのかよ、あの野郎これ不良品だろ」
「何を言って……!?」

ボクはドルグアの言葉の意味を、理解が出来ずにいる。ドルグアの右手を凝視する。そこには合ってはならない物がある。

「魔道具か」
「おっ! 大当たり! これは魔道具。名前何だったけ」

魔道具の名前を忘れたのか、こめかみに手を置いて考えている。ハッと顔を上げた。その顔は無邪気で考えがスッキリしたという感じ。それと同時に理事長からの怒声を浴びる。

「ドルグア貴様、何をしているのだ!!」

表情からも滲み出る程に怒気を纏っている。それに対しドルグアは平然としていた。ボクと最初に合って──喧嘩になりかけた時、理事長が止めに入った。
その時は分かり易く怯えていた。それなのに今は飄々と平然でいる。

「何をって模擬ですよ? 昇格する為の」
「昇格する為にはルールを破るのか?」
「ええ、破りますとも、魔法師になればルールとか不必要」
「ワシのやり方に文句があるのか?」
「あるに決まっているだろ! ボクは最強の家系ドルグア出身だぞ! 黄龍ではなく黒虎のトップの男だ」
「どこまでも勘違い甚だしい奴。ボクに物理半減している奴が、黒虎? 流石底辺家系だな!」
「なんだと!」

ドルグアの顔に血管が浮き出てくる。理事長との会話の時間。その間で痺れは解け、体は動かせれる。だけどこれはチャンスだ。
ドルグアに悟られてはいけない。

「結局ルール破っての魔道具頼り野郎が」

挑発、煽りのつもりで言った。それなのにドルグアは腹を抱え大笑いをした。その行動に唖然とする。

「お前知らないのか? リステリは魔道具頼りの落ちこぼれだぞ!」

その言葉を聞いて、ボクの全身から血の気が引いてるのが分かる。つまり今、ボクはユウナさんを侮辱したのと同じ……。

「いいねその顔! そしてそのまま死ね!」

ドルグアは魔道具でボクの腹を貫いた。
意識が朦朧とする。口の中に血が溜まる。血を吐き出し、ドルグアを睨む。ドルグアは妖艶な笑みを浮かべている。
ユウナさんに忠誠を誓い、守る為にこの学園に入学した。それなのにボクが真っ先に貶し、裏切ったも同然。
執事失格だ。これからどうすればいい? 頭が回らない。上手く思考を巡らせれない。後少しで意識が途切れそうだ……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉
ファンタジー
当社《東京異世界派遣株式会社》では、転送機で異世界へ派遣しております。 細胞サイズまで情報化して転送しますので、厳密に言えば、転送するたびに存在としては死んでから再生することになります。 さらに、体内に埋め込まれたナノマシンによって、異世界での現地適応を果たしておりますから、派遣依頼に応じて設定した〈勇者〉とか〈聖女〉〈魔法使い〉といった役割を全うしてもらいます。 ちなみに、〈俺様キャラの男〉や、〈ホスト狂いの女〉を派遣することになってしまったのは、バイト募集に応じてくれたのが、この二人だけだったからであって、他意はありません。あしからず。 ※勘違い系コメディーです。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

大魔法Hit!インパクト

夏々蜜柑
ファンタジー
 主人公カツミは美術部員。クラスメートの麻美と茂も同部の仲間だ。物の印象を様々なに記号化して描くのが得意でイマジネーション能力豊かな高校生。  日常の一歩下、現世と異なる魔法力を法則とする世界があった。大陸に出現した邪道機械との戦いの切り札としてカツミは召還されてしまう。  カツミを呼び出した魔法使いラヌは雷と火を極めた強力な術者だった。砦の主人と呼ばれ、領域を統治し、理力が高く威厳ある少女だった。しかし彼女の魔力でも邪道機械には歯が立たない。ラヌはカツミの世界の法則をイメージを介して転用させろと言う。あまりの強引さに渋々応じたカツミだったが、自分の空想をラヌに武装させてしまい、激しい怒りと当惑を買うものの、その威力は絶大だった。遠慮がちで平和主義のカツミと誇り高く激しい性格のラヌはコンビを組んで戦うことになる。  二人の戦いはこの世界の何を変えるのか――――

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...