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10話 クロの覚悟と一触触発
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「何度だって言います。ボクはユウナさんと同じ学校に行きます」
執事長は少しため息を吐き、こめかみに手を置く。
次に何回もボクの方を見てきた。
何かを考えるように机の方を向き直した。
そういえばリステリの執事になって、二週間近くは経った。それでも執事長の部屋。執事長室には一回も足を運んだ事がない。
構造は客間と対して変わりがない。
部屋に入って真っ直ぐには机と椅子。横隣には本棚がある。
全体的に薄暗い色合いの壁。そこに圧倒的な威圧感の執事長。
この人が執事長ってのが納得だし、この人しか似合わないだろ。
と思えるくらい部屋にぴったりだ。
そんな執事長を相手に真正面から、頼み事をする。勝算何かはない。
それでもユウナさんの役に立てるならば、何だってする。
机に分厚い本が置かれる。少し体がビクッとしてしまった。
「クロさん。君は優秀だと思っていたんですが、バカな事を言って……」
バカねー知っているさ。自分が言っている事がどれだけバカな事。
「お言葉ですが執事長はボクに最強の可能性を見出した。それならば学校に行っても問題はないのでは?」
「ありありだ。確かにワタシは君に最強を見出した。それでもまだ早すぎる! 君の成長には目を見張る物はある」
ごもっともだ。今のボクの実力は底辺魔法師より上ってくらい。
ユウナさんが通っている学校はヒュウガが伝統で通っている学校。ヒュウドルとレベルは変わらないだろう。
……腑と思ってしまった事が合った。
リステリ家もヒュウガも帝国最強魔法師家系。実際はどちらの家系の方が強いのか。
何故そう思ったのか不思議だ。でも唐突に気になってしまった。
「それでも君の実力はまだ弱過ぎる。わざわざ学校に行かなくてもいい」
「そんな事はないです。学校に行けばまた変わる!」
「何一つ根拠がない。クロさん貴方が学校に行ってもお嬢様に迷惑が掛かる」
確かに今の実力からすればユウナさんの迷惑になる。そんな事は分かりきっている。それでもあんなユウナさんはもう見たくない!
「それは本当に迷惑なのかな?」
「何? 何が言いたい?」
優しい声音は途端に低くなり、人を威圧するだけの声音になった。どうやら執事長は怒っている。
「簡単な話しですよ。このままユウナさんが一人で行っても怪我して帰ってくるだけ」
「実にくだらない。リステリの令嬢を舐め過ぎた」
いつもは礼儀正しい口調。だけど今回は少し荒っぽい。フッ、こっちの方がやりやすい。笑みを浮かべる訳にはいかない。だから鼻で思わず笑ってしまった。
だってここまでの一連全てが予定調和なのだから。
このまま行けば執事長は感情的になる。攻めるならば今だ!
「貴方こそユウナさんの事を何も知らない。あの方がどんな想いで、学校に行ってるのか知っているんですか?」
「クロさん。いい加減にしなさい! リステリの令嬢をバカにし過ぎですよ」
「リステリの令嬢……リステリ令嬢ってそこまで重要かな?」
「あ? たかが執事の癖に何を言っている? 図に乗るな」
「確かに新米の執事が敏腕の執事に、意見を言うのは問題かもですね。でもやめません」
来た! この展開を待ち望んでいた。執事長はユウナさんの忠誠よりも、リステリの執事に誇りを持っている。
ユウナさんよりリステリとしての気品や品性を大事にしているだろう。
だからユウナさんの事には触れず、リステリ家を侮辱に近い言葉。それだけには異様に反応を示している。
後一押しでボクの勝ち。
「執事長の思いは必ずともユウナ様の意思とは限らない」
ドンっと部屋中に物音が響く。口から鉄の味がする。頬がジンジンと痛む。
最後の一言を最後に暴力を振るってきた。
あーくそ痛てぇな。油断していた。その為に受け身を取れてない。
もろに攻撃を喰らってしまった。だけどこれでいい。これがボクの狙いだ。
「執事長。急に暴力ですか」
「ガキが調子に乗ったからな」
「お言葉ですがボクは調子に乗っていません。それに貴方はリステリの執事として失格では?」
「遺言はそれでいいか?」
完全に怒ったな、このまま攻撃を喰らったら流石にやばい。立ち上がらないと、本棚を背もたれにして立つ。
真正面にいた筈なのに、たったの一撃で本棚にまで飛ばされた。
あんな優しい執事長が遺言と、最強にする前に完全に消す気だ。
まぁただでやられる訳にはいかない。
それでもこの場で、やられるとは思ってもいなかった。
執事長から怒気が滲みでている。筋骨隆々の体が更に大きく見える。
年相応の肉体での戦闘ならば、どんだけ楽な事か。そんな事考えても仕方ない。
執事長ごめんなさい──貴方もリステリも侮辱するつもりはないです。
でもボクにはユウナさんの期待を応える義務がある。
それは貴方が教えてくれた事でしょう? ただ仕事を真っ当するだけ。
本棚から少し離れ、迎え撃つ体勢を取る。徐々に徐々に距離を詰めてくる。
何度か特訓しているから分かるけど、相変わらず覇気が凄い。
「クロさん。貴方の腐った根性を叩き直してあげます」
「執事長忘れないで下さいね。ボクはリステリの執事である以前に、ユウナ様に忠誠を誓った執事です」
執事長は少しため息を吐き、こめかみに手を置く。
次に何回もボクの方を見てきた。
何かを考えるように机の方を向き直した。
そういえばリステリの執事になって、二週間近くは経った。それでも執事長の部屋。執事長室には一回も足を運んだ事がない。
構造は客間と対して変わりがない。
部屋に入って真っ直ぐには机と椅子。横隣には本棚がある。
全体的に薄暗い色合いの壁。そこに圧倒的な威圧感の執事長。
この人が執事長ってのが納得だし、この人しか似合わないだろ。
と思えるくらい部屋にぴったりだ。
そんな執事長を相手に真正面から、頼み事をする。勝算何かはない。
それでもユウナさんの役に立てるならば、何だってする。
机に分厚い本が置かれる。少し体がビクッとしてしまった。
「クロさん。君は優秀だと思っていたんですが、バカな事を言って……」
バカねー知っているさ。自分が言っている事がどれだけバカな事。
「お言葉ですが執事長はボクに最強の可能性を見出した。それならば学校に行っても問題はないのでは?」
「ありありだ。確かにワタシは君に最強を見出した。それでもまだ早すぎる! 君の成長には目を見張る物はある」
ごもっともだ。今のボクの実力は底辺魔法師より上ってくらい。
ユウナさんが通っている学校はヒュウガが伝統で通っている学校。ヒュウドルとレベルは変わらないだろう。
……腑と思ってしまった事が合った。
リステリ家もヒュウガも帝国最強魔法師家系。実際はどちらの家系の方が強いのか。
何故そう思ったのか不思議だ。でも唐突に気になってしまった。
「それでも君の実力はまだ弱過ぎる。わざわざ学校に行かなくてもいい」
「そんな事はないです。学校に行けばまた変わる!」
「何一つ根拠がない。クロさん貴方が学校に行ってもお嬢様に迷惑が掛かる」
確かに今の実力からすればユウナさんの迷惑になる。そんな事は分かりきっている。それでもあんなユウナさんはもう見たくない!
「それは本当に迷惑なのかな?」
「何? 何が言いたい?」
優しい声音は途端に低くなり、人を威圧するだけの声音になった。どうやら執事長は怒っている。
「簡単な話しですよ。このままユウナさんが一人で行っても怪我して帰ってくるだけ」
「実にくだらない。リステリの令嬢を舐め過ぎた」
いつもは礼儀正しい口調。だけど今回は少し荒っぽい。フッ、こっちの方がやりやすい。笑みを浮かべる訳にはいかない。だから鼻で思わず笑ってしまった。
だってここまでの一連全てが予定調和なのだから。
このまま行けば執事長は感情的になる。攻めるならば今だ!
「貴方こそユウナさんの事を何も知らない。あの方がどんな想いで、学校に行ってるのか知っているんですか?」
「クロさん。いい加減にしなさい! リステリの令嬢をバカにし過ぎですよ」
「リステリの令嬢……リステリ令嬢ってそこまで重要かな?」
「あ? たかが執事の癖に何を言っている? 図に乗るな」
「確かに新米の執事が敏腕の執事に、意見を言うのは問題かもですね。でもやめません」
来た! この展開を待ち望んでいた。執事長はユウナさんの忠誠よりも、リステリの執事に誇りを持っている。
ユウナさんよりリステリとしての気品や品性を大事にしているだろう。
だからユウナさんの事には触れず、リステリ家を侮辱に近い言葉。それだけには異様に反応を示している。
後一押しでボクの勝ち。
「執事長の思いは必ずともユウナ様の意思とは限らない」
ドンっと部屋中に物音が響く。口から鉄の味がする。頬がジンジンと痛む。
最後の一言を最後に暴力を振るってきた。
あーくそ痛てぇな。油断していた。その為に受け身を取れてない。
もろに攻撃を喰らってしまった。だけどこれでいい。これがボクの狙いだ。
「執事長。急に暴力ですか」
「ガキが調子に乗ったからな」
「お言葉ですがボクは調子に乗っていません。それに貴方はリステリの執事として失格では?」
「遺言はそれでいいか?」
完全に怒ったな、このまま攻撃を喰らったら流石にやばい。立ち上がらないと、本棚を背もたれにして立つ。
真正面にいた筈なのに、たったの一撃で本棚にまで飛ばされた。
あんな優しい執事長が遺言と、最強にする前に完全に消す気だ。
まぁただでやられる訳にはいかない。
それでもこの場で、やられるとは思ってもいなかった。
執事長から怒気が滲みでている。筋骨隆々の体が更に大きく見える。
年相応の肉体での戦闘ならば、どんだけ楽な事か。そんな事考えても仕方ない。
執事長ごめんなさい──貴方もリステリも侮辱するつもりはないです。
でもボクにはユウナさんの期待を応える義務がある。
それは貴方が教えてくれた事でしょう? ただ仕事を真っ当するだけ。
本棚から少し離れ、迎え撃つ体勢を取る。徐々に徐々に距離を詰めてくる。
何度か特訓しているから分かるけど、相変わらず覇気が凄い。
「クロさん。貴方の腐った根性を叩き直してあげます」
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