最強の魔帝の少年〜魔力がゼロの無能と思われているが実は最強。落ちこぼれの令嬢を守る為に力を奮い無双する

黒詠詩音

文字の大きさ
上 下
4 / 51

4話 魔力の片鱗

しおりを挟む
「てめぇ何をしやがる?!」

 リグは激しく激昂をする。
 自分では自覚はないが、多分リグを殴り飛ばした。

「………」
「てめぇ俺を誰だと思っている!!」

 リグの問いにボクは黙っていた。
 ユウナさんが防煙魔法を掛けてくれたとはいえ、もし声を出せば気付かれるかもしれない。
 だから黙っていた。
それが逆にリグの反感を買う。

「ぶっ殺してやる!」

 さっきまでの様子とは違い、リグは感情を剥き出しにして襲い掛かって来る。
 怒りで支配されている為か、魔法ではなく肉弾戦で向かって来る。
 一つ一つの攻撃が鋭く速い。それでも……ボクは紙一重で躱す。
 こいつ、頭に血が昇っているから素手だ。リグもボクも素手の近接戦は、得意ではない。
 特にボクは兄弟の中で体が貧相だったから余計。
 でも、今のボクならばリグに勝てるかもしれない。
 と、錯覚するくらい。勝てるビジョンが見える。

「何で当たらねぇんだよ!」
「凄い! 全部ギリギリで避けている」
「フッ」
「貴様!!」

 あまりにもリグの攻撃が当たらず、つい笑みを溢してしまった。ああ──面白い。

「次はこっちの番だよ」
「な!?」

 ドンッと鈍い音が聞こえる。リグは膝から崩れ落ちた。
 悔しそうにボクを見上げる。……今まで散々虐めて来た奴に、やり返すのは気持ちいい。
 追撃で攻撃する為に、拳を大きく振り被った。
 次の刹那、下から拳が振り上がって来た。
 その攻撃を咄嗟に前へ出した左肩で防ぐ。一瞬、痛みが走ったがすぐに治った。
 あれ? ここまでリグの攻撃って、弱かったのか?

「何なんだよお前!」
「よっわ」

 振り上げていた拳をそのまま振り下す。
 爆裂音に近い轟音がし、リグは失神していた。
 リグの周りにある地面は大きくヒビが入ってる。

「あ、えっと──クロくん行こうか」
「はい」

 ユウナさんは少し、驚愕しながら歩みを進める。
 リグの横を通り過ぎる時、リグの体に黒い炎が纏っていた。
 あの黒い炎は魔力の一部の筈。
 なんで魔力の一部が出ているんだろう? 今気にしても仕方ないか。

「どうかしたクロくん?」
「いえ、何もありません」
「それよりクロくん凄いね!!」
「え?」
「え? じゃないよ。まだ魔法師の卵とはいえ、ヒュウガの人間を倒すって快挙だよ!」
「はは、そうですね」

 ボク一応、元とはいえヒュウガの人間何だよな。
 まぁその事実をユウナさんが、知る事は一切ない。
 兄弟の一人をまぐれでも倒せた事。
 それはボクが今後生きていく中で、自慢出来て自信に繋がる。ユウナさんの言う通り、\快挙なのかもしれない。

「クロくん心なしか嬉しそう」
「まぁ、ヒュウガの人間を倒せましたし!」

少し口角を上げ笑う。

「さてさて、それじゃ魔法でも使って向かおう!」
「え、それ最初からすれば良かったのでは?」
「あ、うっさい」
「酷い」
「ふふふ」

 ユウナさんが笑い出し、ボクも釣られるように笑う。思い切り笑った。
 多分、人生史上初と思うくらい笑った。

「転送魔法。テレポート」

 次の瞬間、白い輝きが見え眩しくて目を瞑る。
 目を開いた時には街中にいた。

「ここは?」
「私が住んでいる街。グロリアだよ」
「ここがグロリア」

 ボクは少し感動をしている。
 今まで家から、出られなかった事もあり、嬉しく感じている。

「じゃあ街を観光ついでに、屋敷に向かおうか!」
「はい」

 ユウナさんの言葉通りに、街中を観光し様々な物を見ていた。
 流石、帝国最強の魔法師家系が住んでいる街なだけある。

「どうクロくん。グロリアはいい所でしょ?」
「はい……そうですね」
「どうかした?」

 ユウナさんが不思議そうな顔をして、ボクに聞いてきた。
 ボクは観光の中で、一つだけ気になっていた事を聞く。

「あそこにある大きな建物は何ですか?」
「え、アハハハ。まさかここに気付くとは思わなかったな」

 気付かないと思った? あれだけ建物が立派で、大きければ嫌でも目に入る。

「クロくんは、気付いてないかもしれないね。ここはね膨大な魔力で隠されているんだよ」
「膨大な魔力で?」
「そう。ここはね魔法院学園ソロモン!」

 ……全然聞いた事がない。
 魔法学院ヒュウドルは知っているが、ソロモンの名称が付く。学園は聞いた事はない。
「あれれ? もしかして知らないの?」
「あ、はい。すみません」
「あれれ、ソロモンに気付いた物だから、てっきりクロくんは魔法の才能が飛び抜けているのかと思った」
「ハハッ」

 ユウナさん、それは全く違います。ボクはその逆で魔力ゼロの無能。

「それじゃあ屋敷に向かうよ」
「はい」

 ユウナさんの後ろを付いていく時、学園から黒い光が見えた。リグに合った黒い炎と一緒だ。
 ……それを尻目に屋敷に向かう。

「着いたよ。ここが私の屋敷」

 ヒュウガにも負けず、劣らずの屋敷が合った。

「立派ですね」
「まぁ一応名高い家系の屋敷だからね」

 ユウナさんの口振りだと、嫌そうに感じ取れる。
 実際有名家系というのは、他の人が思う程いい物ではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【宮廷魔法士のやり直し!】~王宮を追放された天才魔法士は山奥の村の変な野菜娘に拾われたので新たな人生を『なんでも屋』で謳歌したい!~

夕姫
ファンタジー
【私。この『なんでも屋』で高級ラディッシュになります(?)】 「今日であなたはクビです。今までフローレンス王宮の宮廷魔法士としてお勤めご苦労様でした。」 アイリーン=アドネスは宮廷魔法士を束ねている筆頭魔法士のシャーロット=マリーゴールド女史にそう言われる。 理由は国の禁書庫の古代文献を持ち出したという。そんな嘘をエレイナとアストンという2人の貴族出身の宮廷魔法士に告げ口される。この2人は平民出身で王立学院を首席で卒業、そしてフローレンス王国の第一王女クリスティーナの親友という存在のアイリーンのことをよく思っていなかった。 もちろん周りの同僚の魔法士たちも平民出身の魔法士などいても邪魔にしかならない、誰もアイリーンを助けてくれない。 自分は何もしてない、しかも突然辞めろと言われ、挙句の果てにはエレイナに平手で殴られる始末。 王国を追放され、すべてを失ったアイリーンは途方に暮れあてもなく歩いていると森の中へ。そこで悔しさから下を向き泣いていると 「どうしたのお姉さん?そんな収穫3日後のラディッシュみたいな顔しちゃって?」 オレンジ色の髪のおさげの少女エイミーと出会う。彼女は自分の仕事にアイリーンを雇ってあげるといい、山奥の農村ピースフルに連れていく。そのエイミーの仕事とは「なんでも屋」だと言うのだが…… アイリーンは新規一転、自分の魔法能力を使い、エイミーや仲間と共にこの山奥の農村ピースフルの「なんでも屋」で働くことになる。 そして今日も大きなあの声が聞こえる。 「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!」 と

東京異世界派遣 ーー現場はいろんな異世界!依頼を受けて、職業、スキル設定して派遣でGO!

大濠泉
ファンタジー
当社《東京異世界派遣株式会社》では、転送機で異世界へ派遣しております。 細胞サイズまで情報化して転送しますので、厳密に言えば、転送するたびに存在としては死んでから再生することになります。 さらに、体内に埋め込まれたナノマシンによって、異世界での現地適応を果たしておりますから、派遣依頼に応じて設定した〈勇者〉とか〈聖女〉〈魔法使い〉といった役割を全うしてもらいます。 ちなみに、〈俺様キャラの男〉や、〈ホスト狂いの女〉を派遣することになってしまったのは、バイト募集に応じてくれたのが、この二人だけだったからであって、他意はありません。あしからず。 ※勘違い系コメディーです。 ※小説家になろう・カクヨムにも投稿しています。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大魔法Hit!インパクト

夏々蜜柑
ファンタジー
 主人公カツミは美術部員。クラスメートの麻美と茂も同部の仲間だ。物の印象を様々なに記号化して描くのが得意でイマジネーション能力豊かな高校生。  日常の一歩下、現世と異なる魔法力を法則とする世界があった。大陸に出現した邪道機械との戦いの切り札としてカツミは召還されてしまう。  カツミを呼び出した魔法使いラヌは雷と火を極めた強力な術者だった。砦の主人と呼ばれ、領域を統治し、理力が高く威厳ある少女だった。しかし彼女の魔力でも邪道機械には歯が立たない。ラヌはカツミの世界の法則をイメージを介して転用させろと言う。あまりの強引さに渋々応じたカツミだったが、自分の空想をラヌに武装させてしまい、激しい怒りと当惑を買うものの、その威力は絶大だった。遠慮がちで平和主義のカツミと誇り高く激しい性格のラヌはコンビを組んで戦うことになる。  二人の戦いはこの世界の何を変えるのか――――

処理中です...