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2話 少女との出会い
しおりを挟む「魔物が人に頭を下げるなんて」
いや──膨大な魔力を持っている者に、魔物達は恐れ服従を誓う。と、聞いた事がある。
でも、ボクには魔力がない。
「ねぇ君、大丈夫?」
「え?」
今の自分の状況を整理していた時、一つの声──人間の声が聞こえた。
声をする方に振り向くと、そこには銀髪の少女。綺麗な水色の瞳が輝いてる顔は、今まで見た人の中で一番顔が整っていた。少女は笑みを浮かべ言う。
「君、ここで何してるってか大丈夫?」
「え? あ、うん大丈夫」
少女の言葉で自分が、変な状況に置かれているのを再び認識をする。
この少女は優しいのか、見ず知らずのボクを心配してくれている。ヒュウガの家ではない事。
──この少女の優しさに警戒をする。
「グゥゥゥゥ」
「グルルルル」
二頭の魔物が呻きを出し、少女に襲い掛かろうとした。
「え、なんで!?」
少女は逃げようとし、体勢が崩れ尻餅をついた。
「待て!」
少女はもう駄目だと思い目を瞑る。
その時、反射でボクは魔物──べオード ウルフに待ったを掛けた。
自分でも何をしているのか、分かっていない。反射的に声が出た。
自分が襲われるかもしれない。
けれど今はそれでもいいと思えた。
次の瞬間、ボクは再び驚きの光景を目の当たりにする。
「あれ? なにも起きてない?」
「止まっている?」
やっぱり……この魔物は、ボクの言う事を聞く。試して見る価値はある。
「お前らこの場から散れ」
べオードウルフはボクに、頭を下げ野原を駆けて消える。
「君……何者?」
「ボクにも分からないかな? ハハッ」
少女は少し引いている。そりゃ引くよね? 分かっていたよちくしょう。
「ふふ、君、面白いね」
「へ?」
少女の思わぬ言葉に腑抜けた声を、出してしまう。
「ごめん。自分じゃ立てないから、手貸してくれない?」
「あ、うん分かった」
少女に言われるがままに、手を差し出す。
少女はボクの手を掴み、立ち上がる。
「ありがとう。君、名前は?」
「ボクは……クロ」
「クロくんか、私はユウナ=リステリ。よろしくね!」
リステリ、何処かで聞いた事があるが。
何処で聞いたかは覚えてない。
「まさか、こんな何もない。土地で同世代の子に会うとは思わなかった」
「君──ユウナさんは何処から来たんですか?」
「呼び捨てで構わないよ。私はグロリアから来たよ」
グロリア? あ、思い出した。
ヒュウガの家にいる時、勉強の為、色んな書籍関連を読んだ時に、リステリの名前を見た。
ヒュウガに並ぶ、王国最強の家系。
「君はリステリの令嬢様?」
「リステリの名前を聞いただけで、そこまで分かるんだね」
ユウナさんは少し、寂しそうな顔をして語る。
「私は次のリステリの当主。ここには商談の為に来た」
「商談?」
「帝国最強の魔法師家系、ヒュウガとね」
ヒュウガの名を聞いた瞬間。
ボクの全身は震え、心臓がドクン、ドクンと跳ね上がる。
どうやら、ボクはヒュウガの名前を聞くだけで、拒絶反応が起きる。
だけど、それをヒュウガに商談しに行く。ユウナさんに知られては行けないと。思い、作り笑いをする。
「では頑張って下さいね」
「え? ちょっと待って!」
「一体なんですか?」
出来るだけ一刻も早くここから離れたい。
「クロくんって行く場所あるの?」
「……ないです」
「え?」
「行く場所ないです!」
少し屈辱感を覚えながら、ユウナさんの言葉に答えた。
ユウナさんは優しく微笑み、ボクに提案をして来た。
「私の屋敷に来ませんか?」
「従者としてですか?」
「あ、そうなるねハハッ。無理強いはしないよ」
ユウナさんは慌てながら、ボクに言う。
リステリの次期当主って事もあるのか。
年が近い筈なのにボクとは全く違って大人ぽい。
「……ユウナさん。その提案乗ります」
「え、いいの?」
「誘っといて驚かないで下さいよ」
ユウナさんはボクの言葉に嬉しそうにしていた。
従者──ヒュウガで奴隷のような。扱いをされていた時よりは幾分マシだと思う。
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