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奥様は我儘です?※R18

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 それが何かなんて考えるまでもない。思わず逃げ腰になるのを、大きな手のひらに腰を掴まれて阻止される。

「挿れるぞ」

 うなじに唇を当てられて、ぞくっとするような低音で囁かれた。

「ひっ、ぁ……っ!」

 みちみちと隘路を割り開いて、ジュード様のものが中に入ってくる。
 指とは比べ物にならない質量に、バチバチと目の奥で火花が散った。

「は、あぅ……っ、ん……」

 解されたそこは、ゆっくりと亀頭を飲み込んだ。
 狭い肉筒を押し拡げながら挿入される快感に、シーツを握りしめて耐えた。

「ん……っ、あぁ……っ」

 張り出したカリがしこりを擦り上げると、それだけで腰が砕けそうになるほど気持ちいい。
 肉の詰まった竿を根元まで埋め込まれた時には、快感のあまり腰から下が溶けてなくなってしまった気がした。

「ハ……ッ、挿入ったぞ」
「はぁ……っ、ン、あ……っ」

 みっちりと隙間なく埋まっているのなら分かる。
 浅く呼吸するだけでも、その形を意識してしまって、ひくんっと中が収縮した。

「っ……」

 息を詰める気配がして、腰を掴む手に力が篭った。

「ぁ、ん……っ」

 ずるずるとゆっくり腰を引いて、同じくらい時間をかけて中に戻ってくる。

「んっ、ん……! はぁっ、あぅ……」

 馴染ませるためなんだろうけど、緩やかな動きが逆につらい。
 中に埋まったモノの形を、嫌でも意識してしまう。

「ん……っ、やぁ……」

 膨らんだしこりを亀頭で押し上げられる。
 ゆったりと腰を回して捏ねられると、堪らず上ずった声があがった。

「あっ、あぅ……っ! ひぁ……っ」
「っ……」

 時折、堪えるような息遣いが聞こえてくる。
 俺なんかでちゃんと気持ちよくなってくれてるのかな、とぼんやりした頭で思った。

「あ……っ!」

 不意に力強く腰を打ち付けられて、パンッ、と乾いた音が響いた。

「他のことを考えるな……っ」
「あっ! あぅっ、あ……っ」

 そのまま激しく抽送を繰り返されて、ぐちゅぐちゅと濡れた音がひっきりなしに響く。

「ん、ンぅ……ッ! あぁっ! はげし、ぃ……! やぁっ!」

 腰を掴まれてがつがつと穿たれる。
 目の前がチカチカして、脳が快感で痺れた。

「あぁっ! あっ、んっ……! ひぅ……っ」

 許容量を超えた快感が怖くて、ジュード様に向かって手を伸ばしていた。

「こわ、い……っ、や、あぅ……! これ、や、です……っ、ひ、あぁっ!」

 顔が見たい。
 ちゃんと声に出せていたか分からない。それでも、ピタリとジュード様の動きが止まった。

「あっ……!? ひぅっ!」

 片脚を抱え上げられて、くるりと体が反転した。
 涙でぼやけた視界の先では、額に汗を滲ませたジュード様が俺を見下ろしていた。

「っ……我儘な奴だな」

 確かにそうかもしれない。顔を見られたくないと言ったり、顔が見たいと言ったり。
 でも、だって、仕方ないじゃないか。こんなの初めてで、どうしていいか分からないんだ。

「ん……」

 唇を合わせるだけの優しいキスが落ちてきた。
 力なくシーツに横たわっていた手を掴まれて、ジュード様の首に回すように促される。

「……掴まっていろ」

 ぶっきらぼうな優しさに、ポロリと涙が頰を伝った。

「……動くぞ」
「んっ……」

 ゆっくりと腰が動いて、中のモノが引き抜かれていく。中ほどまで引かれてから、ぐちゅんと音を立てて再び奥まで押し込まれた。

「あっ! あぅ……っ!」

 そのまま何度も抽送を繰り返されて、ずぷ、ずぷっと粘着質な音が響く。

「あぁっ、あ……! んぁっ!」

 腰を打ちつけられる度に、甘ったるい嬌声がひっきりなしに漏れてしまう。
 もっともっとと強請るように、はしたなく腰が揺れるのを止められない。

「はぁ……っ、ん、んぅ……」

 さっきまでの動きは手加減されていたのだと痛感した。
 逞しい腕に囲われてしまえば、逃げ場なんてどこにもない。

「あっ! やぁ……っ」

 ずるりと引き抜かれたそれが一気に奥まで突き立てられる。
 しこりを押し潰しながら奥の壁を叩かれると、お腹の中に溜まった快感の塊が弾けそうになる。

「ひぅ……! あっ、ンン……っ!」

 段々と足先が丸まっていって、爪先にきゅうっと力が篭った。

「あぁ……っ、じゅ、ど、さま! あ、いくっ、も、イっちゃ……ん゛うぅっ!」

 ごちゅんっと一際強く奥を突かれた瞬間、頭の中が白く染まった。
 ふわっと体が宙に浮くような心地がした。それも一瞬のことで、直後にガクガクッと体が痙攣して、開いた口からは悲鳴に似た嬌声が零れた。

「あ、あぁっ! ひ、あ゛~~っ! あっ、~~……っ!」

 ピンと足先が伸びて、きゅうぅ……っと中が締まる。

「っ……、は……」

 ジュード様が何か呟いたような気がしたけど、絶頂に悶える俺にはよく聞こえなかった。

「は……ぁ……」

 長い絶頂からようやく解放されて、ぐったりとシーツに体を沈める。もう指一本だって動かせそうになかった。

「あ……っ」

 ずるりと中のものが引き抜かれる感触にすら身震いしてしまう。
 ぽっかりと空いた穴から、こぷこぷと生温かいものが溢れ出る。その感触に、ジュード様も俺の中でイッたんだと知った。
 ぼーっと天蓋を見上げる俺に何を思ったのか、徐にジュード様が俺の足を抱え上げた。

「あ……っ」
「……まだだ」
「へ……? ひ、あぁっ! あっ!」

 ずぷぷっと再び挿入されたそれは、一度出したとは思えないくらい硬くて熱かった。

「やぁっ! もぅ、むりぃ……っ!」

 イッたばかりで敏感になっている肉壁を無遠慮に擦られる。
 過ぎた快感にボロボロと涙が零れた。

「っ……、まだ、足りない」
「んむ……っ」

 噛み付くように唇を塞がれて、息もできないくらいの荒々しいキスに翻弄される。

「ふ……んぅっ! んぅ~……」

 びくびくと痙攣する肉襞を掻き分けて、小刻みに腰を揺らされると堪らない。
 快楽から逃げようとシーツを掴むけど、すぐに引き戻されてしまう。抱え上げた両膝をマットレスに押し付けられて、ほとんど真上から腰を叩きつけられた。

「ん゛ぅ……ッ! あ゛っ、あぁっ!」
「っ……く……」

 目も眩むような快感がずっと続いていて、頭が馬鹿になりそうだった。
 肌と肌がぶつかる音と、濡れた水音。荒く掠れた吐息に、頭がクラクラするような甘い香り。
 それから丸一日、俺たち二人だけの寝室には淫猥な空気が立ち込めていた。

***

 発情期ってすごい。朝から晩までずっと、最低限の食事と睡眠以外は獣のようなセックスに明け暮れた。
 そうして丸一日経った今日、ようやく発情期の熱から解放された。

「つ、かれた……」

 声がガサガサだ。身体中ダルいし痛いしで、満身創痍だった。

「この程度で音を上げるとはな」

 疲れ切った俺に反して、平然とした様子のジュード様がベッドに腰掛ける。
 今朝起きた時には寝室からいなくなっていたのに、いつのまに戻ったんだろう。
 音もなく現れたジュード様に、びくーっと体が跳ねた。その反動でぎくりと腰が痛む。

「っ……いだだ」
「何をやっているんだ」

 呆れたような声の後、もふ、と柔らかい何かが頭に乗せられた。

「へ?」

 戸惑っている間にも、もふもふが顔の周りに敷き詰められていく。
 ころんと転がり落ちたそれが視界に映って、謎のもふもふの正体に目を見開いた。

「リアムのぬいぐるみ……?」

 俺の胸板の上でちょこんと可愛らしく座っているのは、リアムが大事にしているクマのぬいぐるみだ。
 姿は見えないけど、頭を包むもふもふたちもリアムのぬいぐるみなんだろう。

「……な、なんでここに?」
「……部屋の前に置かれていた」

 あ、もしかして、俺が風邪を引いたと思って、元気づけるために置いてくれたのかな。
 大切なぬいぐるみをせっせと部屋まで運んでくれたリアムの姿を思い浮かべるだけで、キューンと胸が高鳴った。

「ありがとう、リアム」

 リアムだと思って、そっとクマちゃんを抱っこする。
 ふわふわの毛に顔を埋めたところで、この部屋の惨状を思い出してハッとした。

「だ、ダメです!」
「いきなりなんだ」
「か、換気! 換気してください!」

 部屋にはまだ、甘くて蠱惑的な香りが残っている。
 リアムのぬいぐるみに万が一にでも匂いが移ったら大変だ。

「ジュード様! 窓開けてください!」
「……」
「ジュード様!」
「分かった」

 怪訝な顔をしながらも、ガラッと豪快な音を立てて窓を開けてくれた。
 外から吹き込んできた爽やかな風が、部屋の空気を一新してくれる。

「は~、いい風……じゃなくて! ぬいぐるみ! ベッドからどかしてください!」
「……嫌いなのか」
「ぬいぐるみは好きです! でも、あんなことがあったベッドにリアムのぬいぐるみを置きたくないんです……っ!」

 いくらカバーやシーツを変えたとはいえ、純真無垢なぬいぐるみを汚してしまうような気がして嫌だった。
 そんな俺の気持ちが理解できないのか、ジュード様は不服そうに顔を顰めている。

「お願いしますっ、リアムの優しさを汚したくないんです……!」
「……分かった」

 渋々と言った様子で頷くと、雑にぬいぐるみを引っ掴んで、ぽいっとベッドの下に投げ捨てた。

「あぁっ! な、なんてことを……!」
「ただの綿の塊だ」
「そういう問題じゃないです! リアムが大切にしてるものなんですから、そんな風に雑に扱わないでください!」

 悲鳴を上げる体に鞭を打って、慌ててぬいぐるみを拾い上げる。

「ああ、汚れてなくて良かった」

 あらぬ体液とかで汚れていたら切腹ものである。
 ほっと胸をなで下ろしていれば、ジュード様がずい、と顔を近づけてきた。鼻と鼻がくっつきそうな距離に思わず後ずさる。

「あ、あの……?」
「……お前は俺の番だ」
「つがい……?」

 聞き慣れない単語に首を傾げる。
 ムッとしたように唇をへの字にしたジュード様が、俺の手首を強く掴んだ。

「え? な、なんですか!?」

 ぐいっと引っ張られて、ジュード様の唇が手の甲に触れた。
 そのまま指の付け根までなぞるようにキスが落とされる。ジュード様の唇が触れた場所が、発火したみたいに熱を持った。

「母親である前に、お前は俺の番だ」

 だからツガイってなんですか?
 疑問を口にしようと開いた口は、今ではすっかり慣れ親しんだ唇に塞がれてしまった。
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