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Q1・ふさわしいものを選べ
二重思考
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デスクに肘をついてうなだれている俺の背後を、菓子を抱えた蝶野が通りすぎる。しかし数歩進んだところで引き返し、視線を合わせて声をかけてきた。
「ふじのんと何かあったでしょ」
藤乃だから「ふじのん」。そういえばこういう呼び方をする人だったな、と思い出しながら、俺はぼんやりと頷く。頭の中はずっと花房のことばかりだった。他人が見ても分かるくらいには違和感のある状態になっていたのか。
「バレてるよー。君たち、一緒にいる時間は短いけれど仲良しだったもんね」
勝手に隣の椅子を引き、蝶野は腰を下ろす。半開きの箱を俺の方に差し出した。
「お菓子食べる?」
「食べます……」
俺の言葉に、彼は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。無理もない。初めて誘いに乗ったのだから。彼が持ってくるのは妙な知育菓子だけではないし、今までもその気持ちがありがたいときはあった。しかしタイミングが合わずに断ってばかりだったのだ。今回、初めて即答した。差し出された菓子がどのようなものかも確かめずに。
それほど誰かに話を聞いてもらいたかったのだ。近くで様子を見ていたマリアが、スッと近寄ってきて耳打ちしてきた。
「気をつけなさいよ。そうやって心を許すと、どこまでも付きまとわれるわよ。それこそ地獄の底まで」
「酷いなぁ、まりちゃん。人をバケモノみたいに」
耳打ちとはいえ、蝶野にも聞こえるように話している。つまり彼に対する軽口だ。なんだかんだいってこのふたりは仲が良い。そして、仲の良い人たちを見ていると自分と花房の関係を思い出してしまう……。
「わっ、どうしたの」
再び突っ伏してしまった俺を見て、蝶野は心配そうな声を上げた。マリアもうろたえているのが気配で分かる。俺は気合いで表情を戻すと、改めてふたりの方を見た。
「おふたりは、自身に対して『日本語すら上手く扱えない』と思ったことはありますか」
おそらく、これが花房を傷つけた言葉だ。そこまでは分かっているものの、俺にとってはありきたりな言葉でしかなかった。言い間違い、語彙の不足、感情を正しく伝えられないこと。日常茶飯事だ。自分の空想の中でだけは、まっとうに日本語を使いこなせているつもりなのだが。
蝶野とマリアはきょとんと顔を見合わせた。それもそうか。彼らは俺よりずっと賢い。勉強ができる。何しろ教える立場の人間であるし、マリアは非公開だが蝶野なんてトウキ大出身だ。日本の最高峰。しかも国語担当だから日本語は大得意だろう。
「日本語話者なんだから、日本語は使いこなせるものじゃないの?」
不思議そうにマリアが言う。確かに彼女はそうだろう。社会科担当だが、他の科目の話題にも対応する様子を何度も見た。いわゆる「何でもできる人」だ。
「あなた、今まで病院や役場で言葉が分からずに苦労したことはある? そういう経験がないのなら、日本語を扱えていると捉えていいのではないかしら」
「講義のシラバスを読解できずにヘマをしたことはありますけどね……」
弱々しく答える俺に対し、マリアは肩をすくめて見せた。彼女からすれば、講義の選択をミスるなんて愚の骨頂なのだろう。せっかくの学びの場なのに、日本語の時点でつまずくなんて。言葉はあくまで伝達手段であり、それが本題というわけではない。
言葉なんて分かるのが当たり前。そういう前提で社会は動いている。
「僕は、日本語ってなかなか難しいと思うけどなぁ」
味方をしてくれたのは蝶野だ。彼はクッキーをかじりつつ、世間話のような口ぶりで話を続けた。
「例えば、まりちゃんは俺とソラくんとで言葉遣いを変えているけれど、それができない人もたくさんいるわけじゃん。意思疎通自体はできるけれど、偉い人の反感を買っちゃって苦労することもあるよね」
「まあ、敬語の使い方がおかしい若者は稀に見かけますが」
「というか、答えなんて無いんだよ。日本語は。漢字の読み方なんてどんどん変化していくしね。いまどき〈輸出〉を〈しゅしゅつ〉と読む人はいないでしょ」
「さすがにそれは無いですが、私は可能な限り正しい方で読みたいと思っています。〈てんぷ〉ではなく〈ちょうふ〉と読むタイプですね」
待って待って、ついていけない。文系講師たちの会話を聞きながら俺は混乱した。輸出って「しゅしゅつ」だったの? 「貼付」が「ちょうふ」だってことはどこかで聞いた気がする。高校の先生がぼやいていた。漢字くらい正しく読め、って。でも今の今まですっかり忘れていたし、俺はやっぱり駄目なのかもしれない。
「大丈夫、別に間違いではないから。試験ではどっちでもマルになるよ」
慰めてくれる蝶野に対し、俺は正直な感想を述べた。
「さすが蝶野さんは詳しいですね。トウキ大の入試でも、国語は楽勝だったんじゃないですか?」
面接時にも漢字雑学を披露していた。しかもあのトウキ大卒で、国語担当だから文系だろう。漢字も、現代文も、古文漢文も、日本にある言語は手足のように使いこなせる人。そういう印象を抱くのは当然だ。
しかし蝶野もマリアも複雑な表情をしている。
「ああ、やっぱり知らないのね。今の子は」
マリアがそう言うが、彼女だってまだ若い。今の子と言われるほど歳は離れていないはずだ。こんなわずかな範囲のジェネレーションギャップなんて、いったい何があったのだろう。普段はためらいなくものを言う蝶野が、珍しくはにかみながら説明した。
「僕ね、小論文形式の後期試験で合格したんだよ」
「小論文形式……?」
トウキ大にそんなものがあったのか。俺にも受験生だった時代があるが、そもそもトウキ大なんて選択肢になかったので知りもしなかった。とはいえ、実在するならもっと話題になっているはずだ。進路指導の先生からも聞いたことがない。
「僕の世代の三年間だけ。あっという間に廃止になったからねー。小論文形式の試験は、ほとんどセンター試験も考慮しないの。専門的な知識も求められないし、ただただ筆力で勝負。ズルといえばズルだから、無くなるのも無理ないよね」
「そんな、ズルだなんて」
大学が設けた試験形式なら、何も間違いではない。悪いことをしたわけではない。確かに、センター試験の勉強すら必要がないのには驚くが……。
「他のメンバーと違って、僕は国語しかできないんだよ。その国語だって、それでトウキ大に受かったわけじゃないから一般人レベル。古文とか普通に苦手」
「堂々と言えることじゃないでしょう」
マリアが呆れた顔をする。反対に俺は、こんな人もアラクネには必要だと思った。マリアのように「簡単よ、こうすれば解ける」と教えるだけではなく。一緒になって「難しいよねぇ」と話してくれる講師に救われた学生もいたはずだ。
「それじゃあ、蝶野さんは日本語に対してまだまだ自信がない、と?」
確認の意を込めて尋ねる。今までの話を要約すればそういうことになるはずだ。マリアは日本語に自信がある。日常で困ったことがないから。蝶野は自信がない。勉強としての国語は苦手だから。
だが、俺の解釈はあっけなく否定された。
「確かに日本語は難しいよ。でも、僕たちの立場で『扱えない』と言っちゃうのは違う気がするんだよね」
蝶野は首を振りながら話す。立場とは何だろう。学生を導く講師として? でも、今の言葉には俺の存在も含まれている気がする。自分とマリア、そしてアルバイトの俺。この場にいる全員。オフィスにいるスタッフたち。いや、それだけじゃない。日本で生まれ、日本語を教えられて育った全ての人間に対する言葉だ。
「少なくとも僕たちは日本語で思考ができている。喜んだり悲しんだり、綺麗だなぁと感じたり。痛いときには痛いと言える。ズキズキ、ヒリヒリ、キリキリ、痛みの種類だって説明できる。誰に教えられたわけでもなく――と言いたいところだけど、過去のどこかでちゃんと教えられているはずなんだよ」
「日本語で思考、か……」
自分の空想の中でだけは、まっとうに日本語を使いこなせているつもり。それを言い換えるなら「日本語で思考ができている」ということだ。「考える」という言葉を頭に浮かべて、俺たちはいつも何かを考えている。
言葉を知らない赤ん坊の頃は、どうやって考え事をしていたのだろう? いや、違う。そもそも考えることができないから、あんなに泣きわめいて不快を訴えることしかできなかったのか。言葉は、年相応の行動をとるための大事な道具でもあるのだ。
「それじゃあ、バイリンガルの人はどんな風に考えているんだろう」
自然と漏らした疑問に、マリアがハッと考えるそぶりを見せた。きっと、共通の身近な人物を思い浮かべていることだろう。思考に言葉が必須ならば、二種類の言語を知っている人はどんな考え方になる? 常人よりも効率的なのだろうか。それとも、どちらか片方だけを交互に使うのだろうか。
「まあ、彼の思考回路は特別なのかもね」
具体的な名をあげず、しかし明確にひとりの青年を想定しながらマリアは言った。自身に対する諦念も孕んでいるように聞こえる口ぶりだった。彼女は完璧を目指す人だ。海外に行ったことはないが、英会話はネイティブと意思疎通できるレベルらしい。しかし彼には追いつけない。日本に生まれ、日本語だけで育った時点で、どうしても。
「生きるため、周囲の環境に頼って言葉を覚えていた頃には二度と戻れないわ。私たちは通り過ぎてしまったの。赤ん坊が学ぶときのように、と銘打って語学を売り込む教室も多いけれど、無理なものは無理なのよ。後天的なバイリンガルにはなれたとしても、英語を母国語とする人にはなれない、絶対に……」
「やっぱり、羨ましいですか」
俺が尋ねると、マリアは操られたみたいにがくんと頷く。いつも自信に満ち溢れた彼女らしくない。ずっと心のどこかで引っ掛かっていたものが、今の質問で崩れ落ちてしまったのか。
「みっともない話ね。年下の同僚に対して……」
「いえ、俺も分かります」
そんなやりとりをした後、彼女はスタッフに呼ばれて撮影に向かった。今日も完璧な講義が行われることだろう。編集をしながら眺めているだけの俺も、ずいぶんと社会の知識がついた気がする。五教科を五人の講師で分けている都合上、彼女ひとりで地理も歴史も公民も倫理も担当することになるのだ。半端な技量じゃこなせない。
これほど立派な人でも、バイリンガルに対して劣等感を覚えている。でも当の花房は何かに傷ついていて……きっと、最後のひと押しになったのは俺の言葉で……。
「ねぇねぇ」
残った蝶野が椅子のキャスターを軋ませながら近寄ってきた。もともと離れていたわけでもないのに、さらにぐいっと。肩が触れ合うほどに。
「……何ですか?」
「実際のところ、何があったのさ。ふじのんと」
そう尋ねられ、あの日の出来事を思い返す。どこまで話していいのだろう。ここで選択を誤ると、花房との溝が余計に深まってしまう。すぐに答えられないでいる俺の様子を見て、蝶野は言葉を続けた。
「もちろん、あんまり詳しく聞くと僕にも守秘義務が発生するから、ざっくりでいい。ボウルによそったばかりのコーンフレークくらいざっくりと」
「三日ほど前、花房と食事に行ったんですけど……」
「ああ、それは詳しすぎる! しっとりしてるよ、ミルク掛かっちゃった」
何なんだ、この人は。まあ、花房の様子がおかしくなったのは俺が一方的に話し始めたあたりなので、そこだけを話せばいいか。彼の言動については一切伝えず、ただ俺の言ったことだけを説明した。
表現方法として言葉に敵うものはない。花房はバイリンガルなのだから、使える言葉が多い。だからもっと自信を持てばいいのに。俺は日本語しかできない上に、その日本語すら上手く扱えない――
「なるほど。そう言ったんだ」
俺の話を聞き終えた蝶野は、意味深に微笑んだ。その表情を見て、今の下手くそな説明でも理解してくれたんだと確信する。彼に話して良かった。たった一瞬で、そう相手に思わせることのできる男だ。
何かアドバイスはありますか、と問い掛けようとしたとき。
「それでは、悩める青年にひとつヒントを授けよう」
芝居がかった口調で蝶野は言った。ぽかんとする俺を横目に、彼は傍らにあった共有パソコンを引き寄せる。オフィスの備品だから、ホーム画面には常にアラクネの公式サイトが表示されていた。彼の指がタッチパネル式の画面に触れ、幹部メンバーの紹介ページを呼び出す。五人のバストショットの写真が並んでいて、それをクリックすると各々のプロフィールが読める仕組みだ。
「プロフィールがどうかしたんですか?」
「これは、うちのプログロマさんにサイトをリニューアルしてもらった際、ついでに文面も考えてくれたものなんだけど。当然、本人たちもチェックしているわけ」
ネットを探ればアラクネ幹部の噂話なんていくらでも見つかるが、ここに書いてあることはシンプルかつ真実だ。案件を持ち込む他企業も参考にするわけだから、短い言葉で的確に講師陣の売りを表さなければならない。蝶野や風見はトウキ大卒であること。蜂須とマリアは学歴非公開だが、アラクネ発足後の実績が記されている。そして、花房の枠には何が記されているかというと……。
「2002年生まれ、アメリカ・NY出身。十五歳から日本で生活を始めた。ケイト大学卒。日本語と英語を話す」
読み上げる俺の隣で蝶野は頷く。至極単純なことしか書かれていない。これがどうしたと言うのだろう。
「最初に提出された文面を見たとき、るりちゃんが単語をひとつだけ削除させたんだんだよね。この表現は変えた方がいい、って」
「単語をひとつ消した……?」
目をこらす。短い文章を何度も読み返す。こんなシンプルな紹介に何か問題があったのか……いや、これは修正後だから、問題がなくなったのか。ここにある単語ではなく、ここにはない単語。それが蝶野の言う「ヒント」なのだろうか。
「あるでしょ、もし自分が紹介文を頼まれたらこう書くだろうに、って言葉が。君とふじのんは仲良しだけど、まだ出会ってから日が浅いからね。当時のプログラマさんは非正規で、頻繁には来ていなかったから。立場としては近いよ」
サイトが作られた頃、ということはアラクネもまだ小さかったはずだ。幹部メンバーはともかく、他のスタッフはアルバイトがほとんどだったのかもしれない。だから花房のことをよく知らずに紹介文を書いてしまった。それを見た蜂須が指摘し、修正を経て掲載されることになった。その流れは分かるものの。
「何なんですか? 消された単語って」
俺が尋ねると、蝶野はひらひらと片手を振る。
「それは自分で考えてよ。宿題。提出はしなくていいけどね」
彼はそう言い残し、今度こそ席を立ってどこかへ消えた。俺は画面へと視線を戻す。たった二行の中に、羨ましい要素がこれでもかと詰まったプロフィールだ。
アメリカ出身、いいなあ。日本に来て、ケイト大に進学した。すごすぎる。日本語と英語を話す。これができれば人生における苦労はかなり減るだろうに。いかん、色々と考えていたら嫉妬みたいになっちまった。花房と仲直りしたいんだろ、しっかりしろ。
宿題は持ち帰るものだ。続きは帰宅してから考えることにして、俺は自分のパソコンの方へと意識を向けた。
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