5 / 6
5.火竜の卵って?
しおりを挟む
「ブルーノは大したものが作れなくて申し訳ありません」と謙遜していたがとても美味しかった。
魚介をたっぷりと使ったパスタは海鮮のうま味がしみだしていて美味しかったし、玉ねぎのスープはじっくりと炒めた玉ねぎの甘味が感じられて何杯でも飲めそうだった。
「こちら、お口直しにどうぞ。フランボワーズのジェラートです」
「美味そうだ」
「冷たくて美味しそうですね」
クレメンテの言葉に同意してくれるブルーノ。
実は暴言はクレメンテへ向けて言った言葉にかかるのだ。だからこの言葉はジョルジョへ向けて言った言葉だろう。
第三者がいる中でクレメンテへ暴言を吐き続けるブルーノも、事情を知らない人から見ると頭がおかしい人になってしまう。それを避けるためにこうしてうまく暴言が出ないような話し方を身に着けたのだ。
しんどい。
こんな小細工しなくてもいいように早く呪いを解きに行きたい。
ジェラートはフランボワーズの色とバニラを混ぜたマーブルになっている。
色合いも美しく、さっぱりして美味しい。
チビチビと食べているクレメンテだったが、ブルーノがジェラートを見ながら何か悩んでいるように見えて声をかけた。
「どうした? 美味しいぞ」
「ええ。ちょっと気になっただけなんですが……」
同じようにジェラートを食べているジョルジョを見つめるブルーノ。
「火竜の卵ってなんでしょうか?」
「えっと、活火山に住む火竜が生んだ卵だと思うのですが」
ジョルジョが不思議そうに首を傾げる。
「本当にそうでしょうか? 私達はその言葉に思い込みをしていた可能性はないでしょうか?」
「思い込み?」
クレメンテの言葉に頷くブルーノ。
「普通に考えて、活火山に卵を取りに行くなんて出来ませんよ」
「だから勇者なんじゃないでしょうか?」
ジョルジョが不安そうに呟く。
それをさせられそうになっている自分を思い出して怯えているようだ。
「先代は鍛冶師だったのでしょう。暑さには耐性があるかもしれませんが、人間です。それに精々数十年前の話ですから、もしも火山に行って卵を取って来たならその方法も子孫には伝わっているのでは? それがないのなら、火竜の卵は本当は私達の想像する火竜の卵じゃないってことです」
「つまり?」
「例えば、このジェラートの名前って『フランボワーズとバニラのジェラート』ですよね。でもこれを『火竜の卵』って名前をつけても火竜の卵になるんじゃないでしょうか?」
クレメンテとジョルジョが顔を見合わせる。
「なるほど……」
こじつけのように聞こえるけれど、まともな人間は火山へ入れないのだからその可能性だって十分あるような気がしてきた。
「つまり、僕がそういう名前の料理を作って出したらどうかということでしょうか?」
ブルーノが頷く。
「先代は鍛冶師だったなら料理は作っていないでしょう。多分、道中で見つけたその土地の食べ物や果物がそういう名前だったのでは? でもあなたは料理人です。だからあなたの火竜の卵を作ってもいいかもしれませんね。どうせ誰も見たことがない食べ物なんですから」
魚介をたっぷりと使ったパスタは海鮮のうま味がしみだしていて美味しかったし、玉ねぎのスープはじっくりと炒めた玉ねぎの甘味が感じられて何杯でも飲めそうだった。
「こちら、お口直しにどうぞ。フランボワーズのジェラートです」
「美味そうだ」
「冷たくて美味しそうですね」
クレメンテの言葉に同意してくれるブルーノ。
実は暴言はクレメンテへ向けて言った言葉にかかるのだ。だからこの言葉はジョルジョへ向けて言った言葉だろう。
第三者がいる中でクレメンテへ暴言を吐き続けるブルーノも、事情を知らない人から見ると頭がおかしい人になってしまう。それを避けるためにこうしてうまく暴言が出ないような話し方を身に着けたのだ。
しんどい。
こんな小細工しなくてもいいように早く呪いを解きに行きたい。
ジェラートはフランボワーズの色とバニラを混ぜたマーブルになっている。
色合いも美しく、さっぱりして美味しい。
チビチビと食べているクレメンテだったが、ブルーノがジェラートを見ながら何か悩んでいるように見えて声をかけた。
「どうした? 美味しいぞ」
「ええ。ちょっと気になっただけなんですが……」
同じようにジェラートを食べているジョルジョを見つめるブルーノ。
「火竜の卵ってなんでしょうか?」
「えっと、活火山に住む火竜が生んだ卵だと思うのですが」
ジョルジョが不思議そうに首を傾げる。
「本当にそうでしょうか? 私達はその言葉に思い込みをしていた可能性はないでしょうか?」
「思い込み?」
クレメンテの言葉に頷くブルーノ。
「普通に考えて、活火山に卵を取りに行くなんて出来ませんよ」
「だから勇者なんじゃないでしょうか?」
ジョルジョが不安そうに呟く。
それをさせられそうになっている自分を思い出して怯えているようだ。
「先代は鍛冶師だったのでしょう。暑さには耐性があるかもしれませんが、人間です。それに精々数十年前の話ですから、もしも火山に行って卵を取って来たならその方法も子孫には伝わっているのでは? それがないのなら、火竜の卵は本当は私達の想像する火竜の卵じゃないってことです」
「つまり?」
「例えば、このジェラートの名前って『フランボワーズとバニラのジェラート』ですよね。でもこれを『火竜の卵』って名前をつけても火竜の卵になるんじゃないでしょうか?」
クレメンテとジョルジョが顔を見合わせる。
「なるほど……」
こじつけのように聞こえるけれど、まともな人間は火山へ入れないのだからその可能性だって十分あるような気がしてきた。
「つまり、僕がそういう名前の料理を作って出したらどうかということでしょうか?」
ブルーノが頷く。
「先代は鍛冶師だったなら料理は作っていないでしょう。多分、道中で見つけたその土地の食べ物や果物がそういう名前だったのでは? でもあなたは料理人です。だからあなたの火竜の卵を作ってもいいかもしれませんね。どうせ誰も見たことがない食べ物なんですから」
1
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
回顧
papiko
BL
若き天才∶宰相閣下 (第一王子の親友)
×
監禁されていた第一王子 (自己犠牲という名のスキル持ち)
その日は、唐突に訪れた。王国ルーチェントローズの王子三人が実の父親である国王に対して謀反を起こしたのだ。
国王を探して、開かずの間の北の最奥の部屋にいたのは――――――――
そこから思い出される記憶たち。
※完結済み
※番外編でR18予定
【登場人物】
宰相 ∶ハルトノエル
元第一王子∶イノフィエミス
第一王子 ∶リノスフェル
第二王子 ∶アリスロメオ
第三王子 ∶ロルフヘイズ
王弟転生
焼きたてメロンパン
BL
※主人公および他の男性キャラが、女性キャラに恋愛感情を抱いている描写があります。
性描写はありませんが男性同士がセックスについて語ってる描写があります。
復讐・ざまあの要素は薄めです。
クランドル王国の王太子の弟アズラオはあるとき前世の記憶を思い出す。
それによって今いる世界が乙女ゲームの世界であること、自分がヒロインに攻略される存在であること、今ヒロインが辿っているのが自分と兄を籠絡した兄弟丼エンドであることを知った。
大嫌いな兄と裏切者のヒロインに飼い殺されるくらいなら、破滅した方が遙かにマシだ!
そんな結末を迎えるくらいなら、自分からこの国を出て行ってやる!
こうしてアズラオは恋愛フラグ撲滅のために立ち上がるのだった。
太陽に恋する花は口から出すには大きすぎる
きよひ
BL
片想い拗らせDK×親友を救おうと必死のDK
高校三年生の蒼井(あおい)は花吐き病を患っている。
花吐き病とは、片想いを拗らせると発症するという奇病だ。
親友の日向(ひゅうが)は蒼井の片想いの相手が自分だと知って、恋人ごっこを提案した。
両思いになるのを諦めている蒼井と、なんとしても両思いになりたい日向の行末は……。
どうも俺の新生活が始まるらしい
氷魚彰人
BL
恋人と別れ、酔い潰れた俺。
翌朝目を覚ますと知らない部屋に居て……。
え? 誰この美中年!?
金持ち美中年×社会人青年
某サイトのコンテスト用に書いた話です
文字数縛りがあったので、エロはないです
ごめんなさい
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる