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7.雪山

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 オリヴァーの視線がディンを捉えていないのも不思議だったが、ようやく合点がいった。
 人間には真っ暗でよく見えていないのだと。
 ディランもいったん火をつけるのは諦めたようで三人で固まっている。これからのことを相談しているようだった。
 
 ディンは少し考えて人型を取ることにした。狼の姿で誘導できたら良いのだけれど、見えないのなら人間になって手を引っ張っていくしかないと思ったのだ。
 素っ裸だから寒いぜ。と思いながらディンは静かに声を出した。

「諦めないで」

 ビクリと三人が揺れた。ディランは見えもしないのに剣に手をかけて鋭く誰何した。

「誰だ!」
「この先は他の出口とつながっているんだ。俺が手を引いてあげるから先に進もう」

 そっとオリヴァーの手に触れる。
 手袋の上から握られたことを察したオリヴァーが身を固くする。

「あ、あなたは誰ですか?」
「大丈夫だよ。心配しないで。さ、行こう」

 我ながらこんなので大丈夫か?と思っていたが、不思議なことに三人は大人しくついてきてくれたのだった。

 しばらく靴音と、ひたひたと歩くディンの足音だけが洞窟に響いていた。
 人間の足でも1時間は歩いていないはずだがすっかりディンは冷えてしまった。
 早く狼に戻りたい。そう思いながら、丁度良い場所までくるとオリヴァーの手を離した。

「ここから真っすぐ進むと光が見えるよ。泉があるからその横の道をさらに進むと他の出口から出られるからね」
「待ってください!あなたの名前は……?」
「名前?」

 ディンだよ。と言おうとしたら、狼の姿に戻っていた。
 言葉の代わりに鳴き声が響く。
 オリヴァーは人影を探すように手を左右に大きく振っている。
 やがて誰もいないことを悟ると、みんなの手を引いて先へと歩き出した。

 するとすぐに眩しい光が飛び込んできた。
 暗闇にずっといた目には光が強すぎたのか、三人とも何度も瞬きを繰り返す。
 
「ここは……!」

 透明な水が湧き、雪に覆われた山の中にありながら光が差し込んでいる。
 しかし三人を驚かせたのは、泉の奥にある朽ちかけた石像だった。
 
「なんでしょう、石像のようですが……」
「まさかエーディンの神殿でしょうか!」
「女神エーディンの住まう山です。神殿があってもおかしくありませんでしたが、こんなところにあったなんて!」

 ――はぁ?あれが?

 ディンの目にはかろうじて人型とわかる程度のボロボロな岩だ。
 言われるまで女神像だと考えもしなかった。
 
 神々しいものを見るように三人とも石像を見つめている。
 さっきまで遭難して落ち込んでいたのに、すっかりそのことは忘れてしまったようだった。
 信仰心ってすごいな、と思いながらディンは泉ですっかり乾いてしまった喉を潤した。
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