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16.蚤の市

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 翌日予定通りに私たちは出発した。
 隣町までは行きと同じバリスさんの荷馬車で送ってもらい、そこから乗合馬車で一番近い機関車が走っている街まで移動してきた。
 その頃には陽がすっかり落ちてしまっていて、私たちは予約していたホテルに急いだのだった。もちろん部屋は別だし、先生は部屋の階さえも別にして部屋を取ってくれていた。そんなに気を使わなくていいのにね。

 翌日。
 朝食をホテルで済ますと朝早くから街に出た。
 先生が待ちに待っていた蚤の市の日だからだ。ちなみに、今日も泊まるから荷物はホテルに置いている。お金も多めに払っているし、それなりのホテルだから荷物を勝手に売られるなんてことはないはず。

「昨日はよく眠れたか?」
「はい。相変わらず素晴らしい宿で、朝まで目覚めずぐっすりでした」

 ライムント先生がフッと表情を緩める。

「先生はよく眠れましたか?」
「ああ。と言いたいところだが、今日見て歩く蚤の市と魔道具店の場所を調べて予定を組んでいたら遅くなった」
「あら、エンベルを笑えませんね」

 おもしろそうに揶揄う私の言葉に、先生は自分でもそう思ったのかかすかに頬を染めて視線を空へ向けた。

「なかなか来れないんだ。悔いを残したくない」

 年上の男性に失礼と思いながらも、不貞腐れた少年のようで私は思わず笑ってしまった。

「君はどうするんだ?」

 じろりと高い位置からにらまれるが照れ隠しとわかっているので怖くない。
 私は目を細めた。

「もちろん、先生に着いて行きます。私、今回は助手ですもの。荷物持ちも致します」
「君はどこかで休んでくれていてもいいんだが」

 機関車が止まる街だけあって大きくて活気のある街だ。移動動物園や演劇なんか観れたら楽しいとは思う。でも。
 私は首を傾げた。

「先生、こういう市は良く来られるんですか?」
「まぁまぁだ」

 曖昧な表現だけれど、初めてじゃないってことかな?
 頻繁には来ないってことよね。

「きっと店主の良い値で買われていたのでは?」
「そうだが?」

 私はわざと大袈裟に首を振った。

「こういうのは、値切られることを考えて多少高めにつけられていたりしますから、値段交渉は大切ですよ!」
「そうなのか? だが過度な値引き交渉は物の価値をわかってないと思われそうだ」
「そうですね。だから、適切な値段で買えるようにがんばりましょうね」

 すると先生はまるでこれから決闘に行くかのような険しい表情で頷いたのだった。

 * * *

「先生、もう移動しませんか?」

 私は前のめりにテーブルの上の品物を見ている先生へ声をかけた。
 いいかげん、同じ場所にずっといるのは飽きたし、他にも見て回りたいところがあったんじゃなかったっけ?
 見せてもらった手帳には、出店している店主の名前とメモが几帳面な文字で書きこまれていたもの。

「ああ……うん。ところでこの文字を見てくれ。この文字は飾り文字だ。普通、こんな文字は使わない。何故かわかるか?」

 持っていた燭台を私に見えやすいように傾け、かすかに見える文字を指さす。
 
「え、ええと。魔方陣に書く文字の配列を他の人に真似されないように。とかでしょうか?」
「なるほど。秘匿性を高めるためか。そういう意味も、もともとはあったかもしれないな。これも技術だ。だがこれは、少し違う」
「はい」
「これは教会の祭壇用燭台だ。教会へ来た者が自由に見られる位置にある。燭台自体もシンプルなフォルムだが緻密な装飾が美しいだろう。装飾の美しさを際立たせるために、わざわざ飾り文字で魔法陣を書いて文字さえも装飾の一部としたんだ。一体感があって美しいな」
 
 私には塗装が剥がれた古い燭台に見えるけれど、先生には光り輝く宝に見えるのだろう。
 私はテーブルを整えていた店主に笑顔を作ると質問する。
 
「すみません、これいくらでしょうか?」
「50でいいよ」
 
 店主が愛想よく値段を言う。

「ではこちらは?」

 私は燭台の前に先生が釘付けになっていた香水瓶を指さした。

「そっちは230」

 他にも見ていたけれど、先生の様子を見る限りこの二つくらいが本当に欲しいものだろう。

「じゃあ両方買うので250になりませんか?」
「いいよ」

 あっさりと店主が応じてくれた。
 私たちの、というか先生の身なりを見て最初からそれなりに高い値段を言われていたようだ。
 
 私はうーん、と唸った。
 もっと値引きできそうだけれど、貴族の紳士が必死に値切るのも世間体が良くないわよね……。
 値切るのは私だけれど、店主は先生が値切らせていると思うだろう。

「先生、どうでしょう? これを買って他のところを見ませんか?」
「ああ」

 案外素直に頷いたな、と思って先生を見ていたら、財布から大きなお金を取り出そうとしたので慌てて止める。

「せ、先生私立て替えておきます」

 先生の財布を持つ手を覆うように握り、先生の方へ押し返す。

「こういう場所では釣りの出る大きなお金は嫌がられます」
「そ、そうなのか」
 
 背伸びをして耳打ちする。
 こういうこともあろうかとお金を崩しておいていたのだ。
 
 大広場に所狭しと並んでいる市を目当てに大人数が来場している。
 中にはスリ目的の人もいるだろう。
 ただでさえ先生はお金持ちっぽいのだ。ここで大きなお金なんでホイホイ出したら目をつけられるに決まっている。

 支払いを終えて荷物を受け取ると次の目当ての場所へ移動する。
 人混みが凄くて、行き先がわからなくなったりする。
 
 それを何度か繰り返しているうちに、時間は昼を過ぎていた。
 
 疲れを感じた私達は大広場の近くにあったカフェへ入る。
 テラス席が日光も降り注いで気持ちよさそうだったけれど、煙草を吸っている人が多かったので、禁煙の室内席を案内してもらっていた。
 
「私気にしませんよ?」

 研究室で吸っている姿を見たことはないけれど、アデム殿下は吸っているようだったし、先生だって吸ったりしているんじゃないかな?
 こっちを選んだのは、先生なりの私への気遣いだ。

「特段良い物でもないからな。俺もあまり吸わないし、避けられるなら避けた方が良いだろう。それより注文はどうする? 気にせず選んでくれ」

 私は手元のメニューに視線をうろつかせた後、メニューを先生に渡しながら言った。
 気にせず選んでとは言ってくれたけれど、びっくりするような値段だったから。
 
「じゃあ、先生と同じ物で」

 先生はメニューをさっと確認すると、小さく手をあげ給仕を呼んだ。
 
 程なくして運ばれて来たのは、珈琲とカットされたケーキだった。
 見た目はチーズケーキに見える。
 先生の前にも同じ物がある。

「ケーキ?」
「フランだ」

 珈琲のカップを持ち上げながら先生が言う。
 
 研究室に行くとたまにお菓子があった。
 大抵、教授が貰ってきたとか研究室の人が好きだからとかで持って来たものだった。
 余っているからと、先生から珈琲と一緒に出してもらうのだけれど、申し訳なくて遠慮すると「減らないから食べてくれ」と言われたことがあった。

「この店はフランが有名らしい。ひとりだと食べにくいんだ。一緒に食べてくれ」

 そっぽを向きながら言うのは先生の照れ隠し。
 
 先生は特に甘い物好きというわけじゃないのだ。
 このケーキは私の為に頼んでくれたんだろう。長時間歩いて疲れたからと。
 
 私は嬉しさに顔がほころぶのを感じた。

 ケーキを口に運ぶ。
 ザクっとしたタルトのようなパイ生地と、クリームの滑らかな食感。濃い牛のミルクの香りにバニラの風味。

「美味しいです!」

 思わず笑顔になる私に、先生も微笑みながら珈琲を傾けている。
 
「そういえば、こんなもので済まないが礼だと思って受け取って欲しい」

 スーツの内ポケットを探り、渡してくれたのはレースのリボンだった。
 
「えぇっ!」

 テーブルに置かれたレースのリボンは、糸がとても細い。今は機械織りも多いけれど、これはきっと職人が気の遠くなるような時間をかけて織った一品だ。
 レースは糸の宝石と呼ばれる芸術品だった。
 私にはレースの鑑定はできないけれど、美しさから貴重な品であることは感じられた。

「こんな高価な物いただけません」
「大丈夫だ。宝飾品の魔道具を出している店でついでに買ったものだから」

 宝飾品は値が張る。
 私の崩したお金よりも先生の大きなお金が必要だったので、支払うところを見ていなかった。
 その間に買っていたのね。

「ですが……」
「君に受け取ってもらえなければこのリボンは行き先を失う」

 私は恐る恐る受け取った。
 レースの手触りに震える。

「気にするほど高いものじゃない。ついている魔法も品質保持だしな。珍しい魔法じゃない」

 私はその言葉を聞いて思わず吹き出してしまった。
 基準が魔法?
 先生らしい。

「だがそのおかげでそのレースは今日まで美しくあるのだろう」
「ありがとうございます。大切にいたします」

 レースの表面を撫でると微笑んだ。

「でも、本当に気になさらないで欲しいのですが。こう言ってはなんですが旅費も……」
「ああ、あれは……」

 先生は少し言い辛そうに言葉を区切った。

「これは内緒にして欲しいのだが、殿下が研究室にいるだろう」
「はい」
「実は留学費用として過分な金額を殿下と殿下の母国から大学に支払われているらしい。一部は寄付金として受け取っているそうだが、返せなかった残りを研究室で殿下が使えるように多く配分しているそうだ。殿下が必要な道具や本には使っているのだがそれだけじゃ使い切れていない。フィールドワーク、研究会や講演会の参加費等に使えばいいのだが、そうそう殿下が王都からの外出もできず。金額が増える一方だったわけだ」
 
 先生がフゥ、とため息を吐いた。

「今回も殿下が自ら行きたかったんだろう。だから代わりに俺と君の旅費を出して土産話を待っているという寸法だ」

 私は「そうだったのですね」と返すのが精いっぱいだった。
 
 カップを持ち上げると黒い水面がゆらゆらと揺れる。
 殿下と会ったばかりの時、確か私は「もうすぐ夏の長期休暇ですし帰ったりなさらないのですか?」と聞いた覚えがあった。
 殿下のお立場を考えたらホイホイ気軽に移動なんてできなかったはずなのに。全然気が付かなかった。あの後殿下はどんな様子だっただろう。
 
 私は自分の考えの足らなさに改めて反省するのだった。

 その後他の広場で行われている市に行き、街の魔道具屋とアンティークショップもいくつか見て回った。
 夕日が落ちる前にはホテルへ戻って来たのだった。

 部屋に備え付けてある文机。その前にある椅子に腰を下ろし、貰ったリボンをブローチが入っている革の宝石箱に一緒にしまう。
 明日もきっと汽車が出発する時間まで先生は子どものように目を輝かせてあちこち見て歩くのだろう。
 その様子を想像すると自然と顔がほころぶ。
 
 私は心が温かくなるのを感じると同時に頭の芯が冷えているのも感じた。

 先生には婚約者がいる。
 そして私にも。

 先生の婚約は私にどうにかできるものじゃない。それはわかっている。
 でも自分のことならどうとでもできる。

 数えるほどしか会ったことのない婚約者。
 一度都会に出た父が、故郷のこんな田舎じゃ嫁ぎ先を見つけるのも難しいだろうと考えて探してきてくれた相手だった。
 ありがたいと思っていた。前までは。

 でも今は、心に他の住んでいる人がいるのに別の人のところへなんて嫁げない。

 私は宝石箱を閉じると、決心した。

 婚約を解消してもらおう。
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