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初恋の味はチョコレート・クッキー
番外編〖第1話〗
しおりを挟む家の両親は四六時中ベタベタ、甘々している。年頃の息子がいるのに、
『好きだよ』『愛してる』の連呼。挙げ句の果てには風呂まで一緒。何処にも、いつでもほとんど一緒。
一番困るのは、夜中のアレの最中の音漏れ。あのさあ、俺がいること解ってる?流石に中身は聴こえないけど、まず聴く気無いし、親のアレ聴いたら萎え萎えだし。あの二人、何だかなあ。それでも、『愛してる』って言ってるの聴くとなんだか無性に切なくなる。
あの二人には終わりがないのかな。一生一緒。どちらか欠けたら後追いしそうで怖い。特に母さん。父さん死んだら後追いするか廃人コースだよ。父さんは生きる素を失いながらもギリギリ生きて、母さんのためだけに生きそうだけどね。まあ、愛しあってるのは解ったから。お腹いっぱいだから。
こんな両親で、お陰で恋愛には冷めてるよ。良い年と言っても二人はまだ四十代前半。二人が大学を卒業してすぐ、俺が生まれたから。まあしかたがないっちゃ仕方がないけど、て、あと俺は自分の名前が気にくわない。『ユミ』ってなんだよ『ユミ』って! 必ず女子生徒に間違えられる。『ついてる』よ!俺は男だー!
変な家庭環境のせいか、恋も知らず、だから初恋もまだ。童貞ではないけど。これは父さんと母さんの御面相に感謝。背も高いしね。女の子にはモテる。でも長続きしない。
『何か違う』と思ってしまう。母さんが父さんに『オミ、好きだよ』と使う好きと、付き合った女の子が『ユミ、好きだよ』と言う、熱量の大きさの差みたいな。
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