蒼薔薇と禁忌の果実〖完結〗(黒将軍と蒼薔薇の庭とは話が少し異なります)

カシューナッツ

文字の大きさ
上 下
18 / 19

〖第18話〗

しおりを挟む
 私は街で流行っている髪染めをして、金色の髪を黒色に染めました。もう、目立つことはありません。

 この髪でエリアラ様の再来などと呼ばれることもなくなりました。面倒なのは2月に1度染めないと、また金色の髪に戻ってしまうと言うことです。だから私は1ヶ月半たったら街で髪を染めます。

 いつの間にか毎日炊き出しを行ううちに、村の人たちから『炊き出しの場には女神がいる』と言われるようになっていきました。炊き出しの皆は男女問わず雑魚寝ですが、やさしいおじいさんがまるでボディーガードのように守ってくれます。

 かつての戦乱の世、ジルベルト様が怪我をされたらと、ジルベルト様のおびただ本の蔵書がある図書室で薬草や外科的処置、リハビリを学びました。

 今は志高い少年、少女にそれを教えています。勿論、学びたい人は誰でも歓迎しました。私自身、もっと学びたい。東の国では『医食同源』と言う言葉があるといいます。

 いい香りの香水、美しいドレスもいりません。どれくらい時間がたったでしょう。

 ある日、ジルベルト様から、『学校を作る』と言うお触れが出ました。続きがありました。

『学費は学校が休みの時、料理を我が妻に習って欲しい。炊き出しの女神に』

 いつも親切にしてくれたおじいさんが被り物を取り、顔についた泥を取りました。

「帰りましょう。奥様。ジルベルト様はあれから何度もお忍びでいらっしゃり、着るものを変えて、身体を泥で汚して、砂で髪を汚してまでイル様をご覧になるためにいらっしゃっています。広場の隅で、ただ、見つめておられました。そして、この前仰っておりました。『私は美しい鳥を傷つけ、籠にいれ、鳥は悲しみに耐えきれず逃げていってしまった。愛しかたを間違っていた。ただ、大切にするだけでよかったのに』この前の差し入れの林檎ジャムはジルベルト様に自ら作られて。ジルベルト様のしたことは確かに一番してはいけないことです。ですが、今やつれるくらい、イル様に会いたがって。お願いします。戻ってきてください」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒将軍と蒼薔薇の庭〖データが飛んだので改稿です。読み切り〗

カシューナッツ
恋愛
『蒼薔薇と禁忌の果実』の元になった話です。手違いでデータを飛ばしてしまったのでデータが確保できた所から記憶をたどり改稿しました。 禁忌の果実より、切ない話になっています。 一気読みのかたちになっています。

物置小屋

黒蝶
大衆娯楽
言葉にはきっと色んな力があるのだと証明したい。 けれど、もうやりたかった仕事を目指せない…。 そもそも、もう自分じゃただ読みあげることすら叶わない。 どうせ眠ってしまうなら、誰かに使ってもらおう。 ──ここは、そんな作者が希望や絶望をこめた台詞や台本の物置小屋。 1人向けから演劇向けまで、色々な種類のものを書いていきます。 時々、書くかどうか迷っている物語もあげるかもしれません。 使いたいものがあれば声をかけてください。 リクエスト、常時受け付けます。 お断りさせていただく場合もありますが、できるだけやってみますので読みたい話を教えていただけると嬉しいです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

Fly high 〜勘違いから始まる恋〜

吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。 ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。 奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。 なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

マンドラゴラの娘

まさみ
ホラー
植物学者の父親と大きな屋敷に暮らす13歳の少女、ミラ。 学校へ行くのを禁じられ退屈していたミラは庭師見習いの少年・デュークと仲良くなるが、ある日突然彼が蒸発。 「裏庭の温室に行ってはいけないよ」 父の戒めに隠されたおぞましい秘密とは。 (ホラー/洋風) イラスト:ハルキ(@haruki_358)様 宮菜(@miyanamiya38)様

過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。

黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。 明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。 そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。 ………何でこんな事になったっけ?

処理中です...