蒼薔薇と禁忌の果実〖完結〗(黒将軍と蒼薔薇の庭とは話が少し異なります)

カシューナッツ

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〖第15話〗

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 碧いジルベルト様にかつて戴いた金色の髪を飾るリボンがハラリとほどけて、私は、ただ、ボロを着た、栄養失調のみずぼらしい娘。

 きっともう、とうに私は常世には居られないことを私は気づいています。生命のことわりに反しても、ジルベルト様に一目会いたくて、最期の自分の言葉を、姿を心に留めて欲しかった。

 その願いを、蒼い薔薇の不思議な力か、冥界の使いが私を憐れんでくれたせいなのか、ジルベルト様に言葉を伝えることができました……。
 
 なんて、都合のいい私。
 夢に浸りきる私。

 きっと、ジルベルト様はあの蒼薔薇の庭でかつての私を見たのだと思います。あの方の、記憶の中の、エリアラ様の影だった私を。きっとあの方の罪悪感で塗り固めた、こんな廃墟に近い城で待っているなんて思わなかった私を。

「イル、イル……許してくれ!!」
    
 ジルベルト様、泣かないで下さい。私と貴方は、この世で結ばれる運命ではなかったのです。私がどんなに想っても、どんなに愛したとしても、ときに何かがそれを阻む。

 この戦乱が憎い。
 この戦乱に幕を引き王家の美しい奥方を娶った貴方が憎い。

 それでも、ずっと貴方を愛しています。叶うならもう一度出逢いたい。私はいつかの夢を見ます。叶うことを願いながら瞳を閉じます。

    ジルベルト様には幸せになって欲しい。ただ、その幸せ中に私がいないのは、淋しいですが。私は、あの方の微笑った顔が好きでした。

「医師を!早く!絶対に死なせてはならん!……イル、すまなかった。目を開けろ!開けてくれ!」

──────────

 目を覚ましたらジルベルト様は私の手を握りながら眠ってらっしゃいました。お城の仲間もちらほら集まっています。

「イル!目を覚ましたか!1ヶ月微睡んだり眠ったりの繰り返しだった!」

 少し年を重ねたレモンさんは、

「蜂蜜に干した生姜を粉にして湯でといたものだ。暖まるから飲んで下さい」

「どうしたんですか?レモンさん。急に改まって」

 言い終わらないうちにジルベルト様は言いました。
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