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〖第11話〗
しおりを挟む「口づけは、初めての……はずだな。しかも年頃の娘に……すまない。嫌だったろう」
「嫌だなんて、そんな……」
私はジルベルト様が愛しいと、瞳で訴えました。ジルベルト様は私を抱き寄せ仰いました。
「イル……愛しい、イル……」
何度も繰り返し口づけると、身体が火照ります。書斎の隣は寝室です
「来るかい?」
ジルベルト様の柔らかな声。そして差し伸べられた手を私は掴みました。寝室の扉を後ろ手に閉め、口唇や吐息。言葉を重ねます。
「ずっと……お慕いしていました、ジルベルト様」
ジルベルト様は柔らかく微笑みました。
「私も、愛しているよ。ずっと、君を」
「ジルベルトさ……」
「二人の時は『ジル』でいい。亡き母と父しか呼んだことはない。無論エリアラ様も知らない」
「ジル……?」
「ああ、イル………」
私は何度も『ジル』と呼びました。重ねる口唇に、呼吸が早まります。ジルベルト様が身体に触れ、指を絡めます。声も絡み、ジル様の長い黒髪も私の金色の髪に、身体に絡みつきます。
心は?絡みあって離れられなくなればいいのに。情事の後、微睡む私の頬をジルベルト様は、優しい顔をしてずっと撫でてくれました。
それから毎日、私は一生懸命デザートを作りました。周りの先輩のシェフからはたくさんの料理を教えてもらいました。
──────────
いつの間にか時は過ぎ、私は副料理長になりました。メインはレモン料理長が作りますが、前菜やスープ、そしてスイーツなどは私が作ります。
周りの皆からは、称賛と『頑張れよ』の声。調理場のひと達は皆いいひとです。男気があって、優しい。私の部屋は調理場直結の休憩部屋です。狭くて落ち着きます。
御召があれば、ジルベルト様が食べたいものをすぐ作って差し上げられる。
料理を運んで、下げるのも役目です。ジルベルト様が一通り食べ終わり、食器を下げるときにジルベルト様は、私の耳元で、そっと、
「今日はイルも食べたい」
そう仰います。夜も更けた頃、ジルベルト様に私は『食べられ』ます。
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