蒼薔薇と禁忌の果実〖完結〗(黒将軍と蒼薔薇の庭とは話が少し異なります)

カシューナッツ

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〖第8話〗

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 謝らなくてはならないのに、私はあの方に会うのが怖い。一方的に、突き放した無礼な私を、解ってはいますが否定されるのが怖いのです。
 
 それに、嫉妬に蝕まれてしまった私は、恋に落ちた、独り浮かれて、勝手に恋に破れて、うらぶれた仕事もまともに出来ない料理係見習いの、学も身寄りもない冴えない娘。もう少ししたら、この屋敷も追い出されるでしょう。料理の出来ない見習いのコックなんて、誰も必要としないでしょう。毎日エリアラへの嫉妬の言葉を聴かされる蒼い薔薇。エリアラ様も逆恨みされて迷惑もいいところです。

 解ってはいるのです。あの方は手が届く方ではない。なのに特別扱いをされていると、のぼせた。私なんか相手にしてくれるはずがないのに。どうして気がつかなかったのでしょう。挙げ句、二人の仲を邪推して。羨んで、妬んで。もし私の邪推の通りだとしても、私が割って入る余地も権利もありません。

「馬鹿みたいだわ、勝手に盛り上がって、勝手にこんな、綺麗な薔薇に恨み言みたいに。ブルーローズさん。ごめんね。いつもありがとう。こんな話を聞かせてごめんね。でも、あのとき解ったの。私はまるで身代わりだった。私はエリアラ様の影じゃない!イルよ。だから、だから、つらかった。つらかったのよ。あの方が抱きしめたのは私じゃなくてエリアラ様だったから。だから苦しかった。悔しかった。あの方をお慕いしていたから。本当だったのよ。初めて心が揺れ動いたの。でも、諦めなければならないの。諦めたいの。でも、私、ジルベルト様を忘れられないのよ」

 うずくまり私は、芝に突っ伏し泣きました。噛み締めた涙は、嗚咽に変わり、叫ぶように、千切れるように。顔を濡らした。

「ジルベルト様……お逢いしたい。逢いたい──ああ……消えてしまいたい」 
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