蒼薔薇と禁忌の果実〖完結〗(黒将軍と蒼薔薇の庭とは話が少し異なります)

カシューナッツ

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〖第7話〗

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 私は、その日を境に蒼い薔薇の庭へは行かなくなりました。そして思いました。恋をしていたんだと。あの胸が痛んだあの日から。愚かにもエリアラ様と自らを比べて。なんて、分相応な娘なんでしょう。
 
 ですが、あの方とのティータイムは私の孤独を癒して、あの方に夢中になっていた私はただの恋する娘でした。愚かな娘。ただの『まかない』をつくる見習いコックをあの方が特別扱いしてくれるなんて、有り得ないのに。
 
 長い黒髪の、黒い瞳。優しくて、美しいあの方。誰よりも甘い言葉で、私を初めての恋に落として、誰よりも残酷に、恋の終わりという形をもって気づかせたジルベルト様。料理の手順が頭に入りません。デザートも味がしません。

 誰かが言っていました。アップルパイは禁忌の菓子。同じ味を共に口にした男女は恋に落ちる。赤い林檎は甘い甘い、禁忌の実。それから待つのは試練と罰。誘惑に負けたアダムとイヴ。

 罰は私だけで良い。ジルベルト様に勝手に恋した私が悪いのだから。それにジルベルト様は私を恋することなどはなかったのだから。

 毎日、ジルベルト様が職務にあたる時間に、独りでティータイムです。アップルパイなんて、作りません。だから私は焼き林檎でちょうど良い。火炙りにされる林檎。燃えているのは、何?

 心の中の醜い私が、美しい、あの方が大切にしている花々にポツリポツリと呟きます。

『エリアラ様、気づいているのでしょう?忠実な腹心の部下の愛に気づかない司令官なんていません。エリアラ様なんて、嘘の仮面を被った売国奴よ!この戦いに負けたらあの女のせいだわ』

 国の為に戦う英雄を、理不尽な悋気で罵るのです。私は汚い。独りで泣きながら焼き林檎を食べます。逢いたいけれど、会えません。私は、先日あの方に感情のまま口走った言葉は返ってきません。
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