蒼薔薇と禁忌の果実〖完結〗(黒将軍と蒼薔薇の庭とは話が少し異なります)

カシューナッツ

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〖第4話〗

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「……お前のような子供が働かなければならない世の中とはな。学校へ行き、学びたいことはなかったのか?」

「料理です。だから、私はジルベルト様に会って救われました。毎日ジルベルト様が食べる様子を見て好き嫌いを判断して、栄養があって美味しいものを、と考えます」

「ありがとう。聡い子だな」
    
 いつも髪を撫でてくれる大きな白い冷たい手。不意にザァッと音をたて薔薇の庭に風が吹きました。
 
 揺れる蒼い薔薇。薄暗い森を、光が裂くように明るく照らしました。私の金の髪がきらきら光を反射します。薄紫の瞳には光は眩しい。ジルベルト様はマントを翻し私を覆い抱きしめ『風が収まるまで、暫くこのままで──』と仰りました。

 胸が苦しい。ジルベルト様の香水の匂い。抱きしめる腕の体温。湿度……。風が収まると何事もなかったように、無表情を装いながらジルベルト様は、マントをバサリといつものように整え「すまなかった」とだけ言いました。
    
 今日のジルベルト様は変です。いつものように私を見て笑ってくれません。
    
 俯きがちに、早くこの時間が──私といる時間が過ぎればいい、と言わんばかりの気まずい面持ちで、無言で、ジルベルト様はいつも通りの綺麗な所作で紅茶をお飲みになります。
    
 今日は自慢のアップルパイです。ジルベルト様はシナモンがお好きなので少々多めにいれたのに──いつもなら、気づいてくれるのに──何も言わず今日は黙々とアップルパイをお食べになります。まるで此処から早く──私が居る──蒼い薔薇の庭から立ち去りたいかのように。

 私は偶々余ったアップルパイを今日に限って持ってきていました。涙目になりながら口に押し込みました。味なんかしません。アップルパイなんて、いらない。林檎なんて、いらない。もう、私にとっての逢瀬はおしまいです。

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