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〖第83話〗
しおりを挟む「俺だって、男だよ。それより恋人だよ。それはさ、美雨さんに比べれば子供だし、色々どんくさいだろうし、要領も悪いよ。でも、俺はあなたの恋人なんだよ?頼ってよ!」
「うん」
私はふくれっ面をしながら、感情を露にする真波を、受け止めることを忘れた。真波の感情をないがしろにし、炒飯もぐもぐとを口に運ぶ私を見て、真波は、
「うん、じゃないよ!ちゃんと訊いてよ!」
軽い気持ちで流そうとした私に、初めて見せた、真波の激しい感情に、心臓がドクンッと跳ねた。
「俺はさっ、美雨さんに比べて何にも出来ないよ。料理も、『俺は中々できる方かな』って思っていたけど、美雨さんは働きながら家事までしてるのに全然敵わない。掃除も、洗濯も、勿論料理も!俺は美雨さんの役に立ちたいのに、結局、何の役にもたってない!自分が一番解ってるんだよ。中途半端な絵しか描けないプライドだけが高い役立たずだって」
真波は泣きそうな顔をして私を見つめる。
「炒飯美味しい?」
「………美味しい」
真波は小さく頷き呟いた。
「真波、私が家事ができるのは、当たり前よ。だって私、言いたくないけど、あなたより二十年多く生きてるのよ? 二十年って長いの。生まれたばかりの子供が成人式を迎えるまでよ。それに、話しは戻るけど、誰かと付き合ってて『頼って』て言われる恋愛はしないと思っていたから。いつも頼られて、いつの間にか先回りして、最後は家政婦さんみたいな恋愛だった。彼も、それが当たり前で。……真波にそう言われて、嬉しかったよ。ありがとう」
真波のテーブルに投げ出されたように置かれた手を私は握りしめる。
「それにね、私はあなたの絵が好きだよ。綺麗だけど儚くて何処か寂寥感がある、氷みたいに透明な、あなたの絵が好きだよ」
キスを重ねたあと真波と一緒に残りの大掃除をした。笑いあったり、真剣な顔をしたり、 連携プレーで、私は半分叫びながら真波は笑いながら、大きな蜘蛛を追い出したり。
だいふくと、おはぎは迷惑そうに、早々にゲージに入った。辺りが暗くなり始めて、街灯がつくころ、大掃除は終わった。
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