80 / 94
〖第80話〗
しおりを挟むグラスを合わせる。甲高い綺麗な音がした。シードルは甘酸っぱい林檎。金色の林檎。
いただきます。何故か手を合わせてしまう。
「真波、パスタどうかな、食べてみて?」
「うん、美味しい。コンソメがいいね。あ、トマトのマリネも美味しい!酸味でさっぱりする」
「良かった!」
私は少し得意気になる。真波はグルメだ。鼻と舌が良い。
「美雨さん、ポテトのミートグラタンも熱いうちに食べてみて」
私の一口を真波が神妙な面持ちで見ている。
「おいしい! ミートソースに玉葱のみじん切り足して正解ね。とけるチーズ最高! 真波って味の細かいところに気づくね。すごい!」
「良かった。『おいしい!』って聞くまでドキドキするよ」
コンソメスープと、サンドイッチは、チーズも加わりほぼおつまみ状態。オクラと豆腐のサラダはスプーンで食べて正解だった。今日はかなり食べた。自分のお腹が良く入ると呆れる。チキンは手を油でベトベトにしながら食べて笑い合った。ウエットティッシュで手を拭いたあと、小さめのアイスケーキを食べた。
チョコケーキみたいにまろやかで美味しいアイスケーキ。上にかかっているココアパウダーの苦味が良い。お腹いっぱい、真波も嬉しそうだ。
「真波、ありがとう。こんなに楽しいクリスマスは初めて。私から小さいけどプレゼント」
食器棚の引き出しに隠しておいたプレゼント。お洒落な包装の箱。知り合いのデザイナーのデザインしてもらったカフスボタンとネクタイピン。真波の誕生石はオパールだ。カフスとネクタイピンの同じデザインの場所にオパールがあしらってある。真波は箱を開けて見る中身に、
「すごく贅沢。きらきらして星空みたいだ。ありがとう、美雨さん。俺も幸せ。あのさ、まだ酔っぱらっていないうちに、いや、充分酔っぱらってるから、俺からも、しょぼいけど………プレゼント」
真波が部屋に戻り、ダイニングで待つの私に差し出したのは綺麗な布に包まれた額装された絵だった。
「開けていい?」
照れ臭そうに、真波は頷いた。私の長い髪がアップで纏めて、鼈甲のバレッタでとめられ、後れ毛が跳ね、光る透明な氷雨が降る中、お気に入りのワンピースを着ておはぎとだいふくと遊んでいるという絵だった。光の風のような舞う小さな雨が綺麗だ。でも確かに透明な明るさの中、紺碧の寒さは感じる。
「綺麗ね。本当にありがとう」
「あと、これ。流石に鼈甲は無理だったんだ」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
甘過ぎるオフィスで塩過ぎる彼と・・・
希花 紀歩
恋愛
24時間二人きりで甘~い💕お仕事!?
『膝の上に座って。』『悪いけど仕事の為だから。』
小さな翻訳会社でアシスタント兼翻訳チェッカーとして働く風永 唯仁子(かざなが ゆにこ)(26)は頼まれると断れない性格。
ある日社長から、急ぎの翻訳案件の為に翻訳者と同じ家に缶詰になり作業を進めるように命令される。気が進まないものの、この案件を無事仕上げることが出来れば憧れていた翻訳コーディネーターになれると言われ、頑張ろうと心を決める。
しかし翻訳者・若泉 透葵(わかいずみ とき)(28)は美青年で優秀な翻訳者であるが何を考えているのかわからない。
彼のベッドが置かれた部屋で二人きりで甘い恋愛シミュレーションゲームの翻訳を進めるが、透葵は翻訳の参考にする為と言って、唯仁子にあれやこれやのスキンシップをしてきて・・・!?
過去の恋愛のトラウマから仕事関係の人と恋愛関係になりたくない唯仁子と、恋愛はくだらないものだと思っている透葵だったが・・・。
*導入部分は説明部分が多く退屈かもしれませんが、この物語に必要な部分なので、こらえて読み進めて頂けると有り難いです。
<表紙イラスト>
男女:わかめサロンパス様
背景:アート宇都宮様

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
実はこれ実話なんですよ
tomoharu
恋愛
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!1年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎ智伝説&夢物語】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎ智久伝説&夢物語】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【智久】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる