氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第64話〗

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「自分の好きなもの。心が動いたもの。美雨さんしか描く気がしない。今もこれからも。お節のメニュー教えて」

 いい年をした私が真波を抱きしめ、真波はは私のうなじに身体を丸めて顔を埋め、私は真波の胸に顔を埋めた。久し振りの愛情表現の行為。だがロマンチックなことを話しているかと思えばお節の中身だ。

「お正月は、芹と油揚げとお豆腐とお餅のお雑煮と、鍋一杯のこづゆと、イカ人参食べて。黒豆はストーブでことこと。デザートの水羊羹も作ろう。田作り、昆布巻きだけ買えばいいかな。栗きんとんは、時間があれば手作りで。海老はエビチリで十分よね。お酒は『奥の松』はどう?」

 そう真波に言った後、真波は『あ、忘れてた』と言い玄関のドアを開ける。しょんぼりしてカーペットに正座しているこの子達も寂しいのかと思った。

「あんたたちも年末、年明け遊びに来なさい。ただし、お土産持参でね。それと二度と私の大切な恋人を馬鹿にしないで」

 私がそう言うと、左端に座る、ウール生地の仕立ての良いブラウンのコートを来た真波と同い年くらいの男の子が、

「自己紹介していいですか?」

「僕も」

 もう一人の手が上がった少しと言っても一、二歳年上に見える。真ん中の一人は縮こまるだけで手はあげない。左端のお喋りそうな男の子が、

「二瓶敬一です。隣が双子の弟の敬二」

 真ん中に正座する、紹介された敬二が、ぽそりぽそりと小さい声で、

「宜しくお願いします。今日はお騒がせしてすみませんでした」

 敬二が、頭を下げた。それに続いて両脇の二人が頭を下げた。三人に向かい合うように真波と私も並んで座る。

「俺は、星野一樹です。今回、問題になったヒモ発言は俺っす。すみません。真波がこんなキレイなお姉さんの彼氏なんて、つとまらないって思ったんすよ。もう、タラシで名を馳せてたこいつが『恋に落ちるってあるんだよ』って大真面目な顔して言って。昔のこいつとあんまりにも変わって、なんかつまんなくって。いい加減で女のひとにだらしなかったのに。だから、猫の話をでれでれ嬉しそうにしてた時『寝子』はお前じゃんって。ヒモなんじゃねぇの? お前なんかただのお遊びだよって言ったらマジで真波がキレて。じゃあ、賭けしようって。とにかく、本当にすみませんでした!」

 お客さんが気になるのかおはぎとだいふくがゆっくりとした歩調で五人の輪の真ん中に陣取る。

「うわあ。すごく可愛い子達ですね。大きくてふわふわ」
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