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〖第54話〗
しおりを挟む「美雨さんのお母さんのバレッタは美雨さんの絵に、必要だから写メに撮った。誤解させてごめん………あとお弁当は、一昨日は辛子を効かせたハムサンド二つ、玉子サンド二つ、ツナサンド二つ。スープジャーにミネストローネ、梅のど飴二個、朝『喉が痛い』って言っていたからだね。嬉しかった。昨日はのり弁、下におかかが敷いてあった。上の段に別盛りに明太ポテサラ、ホウレン草のお浸し、鶏肉の胸肉の竜田揚げ。マルコメくんの味噌汁。覚えてるよ。毎日、何が入ってるか楽しみなんだから」
真波は繋げた。
「美雨さん、俺を疑わないで。何が怖いの? 何であんな奴の言うことなんか何で信じるの?」
と私の目を見て真波は言った。
「俺が一番怖いのは、あなたに捨てられることだよ。誤解されたまま『さよなら』なんて絶対に嫌なんだ」
「私が怖いことは、あなたが私の日常から消えてしまうことよ」
──────────
私は一生懸命、言葉の糸を紡いだ。
「私の人生に、もう関わって来ないでって言った矢先なのにね。恵理子さんは、若くて綺麗で、私は彼女に嫉妬する。あの子は私が失くしたものを持ってる。あなたに釣り合う。あなたの隣を、私は歩くのが嫌なの。あなたを見て称賛の眼差しをしたあと、私を見て皆、嘲笑や、侮蔑、気の毒そうな顔をする人達がいる。当たり前にね。つらいの。つらいのよ。私ね、おばさんは嫌だった。綺麗になりたかったの………」
私は肩を奮わせ呟いた。ちぎれそうだった。
「全部俺が悪い。美雨さんの自信のことを考えてなかった。ただあの馬鹿の言葉の誤解を解けばすむことだと思ってた。あの時裸足でも外に飛び出して『あんな奴の言うことなんて信じるな』って、言うべきだった。安っぽいドラマみたいでも出来の悪い映画みたいでも、それで良かったんだよね」
真波は私の手を握り、綺麗な手だ。と言い、
「美雨さんの不安を一つづつ消していくべきだった。でも、今、こうして美雨さんを見つけられて良かった」
と、声を潤ませて笑い、話を続けた。
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