氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第35話〗

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「ただ好き、美雨さんが好き。外向きの戦闘モードも格好いいけど、今みたいなOFFモードの美雨さんも好きだよ。あとね、個人的には美雨さんの使ってる香水と美雨さんの混じった香りがめっちゃ好きだと思った。なんてね」

「ありがとう。嬉しいよ」

「美雨さんの悲しいことやつらいことは分けて欲しいな」

 そう、見えない傷に、見せてない傷に彼は絆創膏を貼る。他人の孤独や傷に敏感なんだと思う。自分も傷を抱えているのに。
それでも常に前を向こうとする。しなやかで、温かくて、優しい、お陽さまの匂いがするブランケットみたいな人だと思う。そんな彼のぬくもりを感じられるのは、今は私だけ。そして、そんな彼の孤独に、私も温もりをあげたいと思ってしまう。

 私は、自分が思っているより、真波のことが好きなことに、今更ながら驚いた。おはぎとだいふくはすっかり真波に慣れたみたいだ。

「困ったな、もう鰹節ないよ。ごめんね」

 本当に困った顔をしながら真波が言う。二匹は彼の手をペロペロ舐めた。

「くすぐったいよ。まだおいしそうな匂い、する?」

 真波はおはぎとだいふくに問いかけながら真波は、おはぎとだいふくを撫でる。撫でられ、構われたことに満足したのか、それぞれ、直樹から巻き上げた恋愛相談で貯めたお金で買った、猫ベットに入り、うとうとし始めた。

「いい毛並みだね。随分毛が長いんだ。おはぎとだいふくの意味は解ったよ。あのたてがみがすごいな。モフモフ。美雨さんもお腹減ったでしょ。ご飯にしよう?材料は家から持ってきたよ。準備するから美雨さんは休んでて。着替えてくるといいよ。スーツも素敵だけどね。対面式キッチンかー。美雨さん、さては高給取りだね」

「まあね」

 私は次の部屋で楽な部屋着に着替える。


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