氷雨と猫と君〖完結〗

カシューナッツ

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〖第15話〗

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出来上がりのふかふかの分厚いホットケーキをナイフとフォークで食べた。

 当たり障りのない世間話をしながらホットケーキを食べ進めていく。成程。バターとアカシアの蜂蜜の相性は抜群だ。

「厚みがあって、ふかふか。あなた料理上手ね」

「ホットケーキくらい、誰にも焼けるよ。あのさ、どうして俺の名前、訊かないの?」

「訊きたいけど、訊かない。あなたいい人だから。近づかないに限るわ。ご馳走さま。偶然は偶然で終わるから価値がある。短い時間の面白い出来事で終わるから、楽しいと感じるのよ。ホットケーキありがとう。美味しかった」

 そして、一言飲み込んだ。

『凍死しなくて済んだのはありがたいと思ってる。でも、何で私を拾ったの?』

 そう訊きたかった。美人や可愛い子ならともかく、こんなおばさん、家にあげるなんて相当の物好きよ。

 私はメイクも崩れてみっともない顔をしていたと思う。

 
 きっとパンダみたいだってあなた思って 
 
 少し笑ったでしょう?
 可哀想だった?
 そんなに惨めに見えた?

 あなたは優くて親切な素敵な男の子だと思う。施しのように、可哀想な私を拾った。きっとあなたは誰にでもそうする。

 けれど施された私は、何故か今苦しい。無意識に彼を目で追う。優しくされて窮屈で、不思議に切ない。
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