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〖第2話〗
しおりを挟む雪が降る日はしんしんと底冷えがする。呼気の白さに雪の予感がして、マフラーを忘れたことを少しだけ後悔した。
交通量が多い通りは空気が濁って灰色だ。曇り空は、イルミネーションの青色と白々した眩しい白色のLEDライトに照らされても、透き通ることはなく、不健康な光をぼんやりと小さな電球にまとわりつかせるだけだった。
────────────
少しだけ遅れて店に着いた。彼はカウンターのいつもの席で黒ビールを先に注文していたが、口をつけていなかった。煙草の吸い殻だけ、時間の経過を物語っていた。
「時間、丁度よね?マスター、赤いの下さい」
カンパリの水割り。甘く、淡く苦く、紅く澄んだお酒。
私だけの裏メニューだ。乾杯をしてから、新しく立ち上がったプロジェクトについて話したり、
『最近、寒くなってきたからキムチ鍋したいね』
と話したりした。
『シメはうどん?おじや?』
明るく話そうとする私を尻目に、直樹は曖昧に頷くだけで何も言わなかった。
私は、二杯目ののカンパリの水割りを飲みながら、お通しの残りのミックスナッツをつまむ。ミニポテトグラタンとお腹が空いていたのでホットサンドを注文した。
それから、何に祝うでもなく、手持ち無沙汰にする直樹と、もう一度、意味もなくカンパリの水割りで乾杯する。マスターが作るカンパリの水割りは、自分で作るよりも、やはりずっと美味しく、照明に映える。
「暫く、忙しくしていてあんまりこういう機会無かったよね」
私は直樹を見つめてぼんやりしてから煙草に火をつけたところで、彼は長い沈黙から口を開いた。
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