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〖最終話〗
しおりを挟む祥太は父さんと、庭いじり。家庭菜園で白菜を作っています。おばあちゃんは、今は柚子とアップルパイを作っています。母さんはオーブン前。
あれから3年。柚子と祥太は喫茶店『空中楼閣』に、【今日のことは3年の間、内密に】と、誓約書を書きました。柚子と祥太は二人きりでもその話はしませんでしたが不思議なことが起こりました。
***
喫茶店『空中楼閣』からの帰り道、あのジンジャーティーを飲んだ後の微睡むような夢に包まれたあと、不思議なことが起こりました。
祥太と柚子は彷徨うように『空中楼閣』からぼんやり、濃い霧の中を家に帰ると、皆、騙されたように、空中楼閣の微睡みで見た夢と同じように3年若くなっていました。まるで時空の狭間に落ちてしまったようでした。
家に帰ると祥太は高校3年生、柚子は中学2年生になっていました。空中楼閣に行く前と違う、家が明るい。柚子と祥太は、あの『空中楼閣』で見た時間通りに、上手にやりなおしました。全てが怖いくらいにうまく行きました。
***
いつの間にか時は過ぎ、喫茶店『空中楼閣』との誓約書の期限はとうに過ぎていました。あまりにも今が幸せで、少し怖いくらいです。3年という月日は長いようで短く、風のように過ぎました。まるで喫茶店『空中楼閣』へいったのは、幻だったかのようです。
もう、あの頃をやり直し、更に時間を重ねたのですから。もう、間違えない。祥太と目を合わせて誓ったことです。
今、柚子は医学部目指して頑張っています。祥太は介護士の資格を取り、日夜勉強に励んでいます。
「お勉強中だね。蜂蜜生姜湯持ってきたよ。柚子はお医者さんになりたいのかい?」
外の電灯が強風でチカッと揺れます。
「うん。たくさんの人の病気を治したい」
「小さなことからコツコツと、だね」
「うん」
私は意を決して言いました。
「──おばあちゃん、憶えてるの?あの日、3年以上前『空中楼閣』へ言ったの」
「憶えているよ。だから今がある。祥太にも柚子にもお世話かけたね。でも、ありがとう。この3年のやり直しの日々は楽しかった。未来を変えるんだもの。どんどん自分が変わっていくのが解った。頭の中の靄がすっきりして。二人とも、ありがとう。祥太にも、蜂蜜生姜湯届けなくちゃね。あの子も、また勉強中だろ」
嘘じゃない、夢じゃない。柚子はおばあちゃんに抱きついて泣きました。祥太が勧めた薬物療法と、デイサービス。おばあちゃんは楽しそうで、デイサービスがない日は、料理やお気に入りの雑誌のクロスワードを解いたりしています。家族皆で家事分担をし、
母さんの負担も減り、母さんの笑顔が増えました。なるべく家族でご飯を食べ、よく笑うようになりました。夢で終わらなかった。歯車は正しく動き出しました。今、皆が幸せです。
「おばあちゃん、おばあちゃん」
「泣き虫柚子ちゃん、涙を拭いて」
温まるよ。おばあちゃんが差し出したカップを手にとると、ほんのり温かくて、確かにホッとしました。あの空中楼閣で飲んだ味に似ていますがおばあちゃんが作った蜂蜜生姜湯の方がやさしくて、落ち着きます。けれど涙はとまりません。
「柚子、幸せかい?」
「幸せだよ。怖いくらい」
笑って柚子はおばあちゃんに訊きました。
「おばあちゃんは?」
「幸せだよ。あのひとにも会えたし、思い残すことはないね」
「おばあちゃん!長生きしてよ?おばあちゃん、私まだ全然料理上手くなってないよ、甘い玉子焼きもまだ上手く焼けるようになってないよ」
柚子は声を潤ませ苦笑いします。柚子は、おばあちゃんに料理を習っています。まだおばあちゃんが作った甘い玉子焼きがうまく作れません。最初の一歩さえ掴めていないのです。
***
喫茶店『空中楼閣』あれは夢だったのでしょうか。
実は柚子と祥太は喫茶店『空中楼閣』をそれから、何度か訪ねたのですが、どうしても辿り着くことができませんでした。
───喫茶店『空中楼閣』FIN
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『空中楼閣』のお店の雰囲気と、マスターが素敵でした。
ジンジャーティーも美味しそう。
おばあちゃん思いの兄妹にも、ほっこりさせて頂きました♪
華周夏と申します。
感想ありがとうございます。
私は空中楼閣があれば行きたいです。
亡くなった祖母を思って書きました。先日一周忌でした。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。とても嬉しかったです。
宜しければ作品だけは多くありますので、暇潰しにでも作品を覗いていって戴いたら、ほっこり嬉しいです。