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〖第6話〗
しおりを挟む母さんは祥太を睨んで言いました。
「母さんばっかりどうして責めるのよ!母さんだって働いて疲れてるのよ!仕事先で嫌味を言われても黙って我慢して。ウサなんか晴らす時間もお金もなくて。ヘとへとになって帰ってきても誰もご飯なんか作ってくれた試しすらないじゃない!家事だってまともに皆出来ないじゃない!結局はみんな母さんがやるのよ。誰もあてになんかならないんだから!おばあちゃんのことまで、手なんか回らないわよ!母さんばっかり悪者にして!薬なんて、病気なんて知らないわよ!どうせお母さんは高卒よ、あんた達と違って頭が悪いわよ!いいわね、父さんは。帰ってきて晩酌して用意されてるお風呂に入って寝るだけ。ホントにいいご身分よ!これ以上母さんに何を望むのよ!母さんだって人間よ!もう、無理よ!なのに、なのに!あんた達は母さんをそんなに悪者にしたいの?」
へたりこんで大声で泣く母さんは、いっぱいいっぱいだったのです。家族の生活は全て母さんにおんぶしていました。祥太は母親の泣く顔を初めて見ました。
母さんもどうしようもなかったんだ……。そう祥太には思え、母さんを一方的に責めてしまったとひどく後悔しました。何も、自分は見えてなかった。母さんの辛さを、苦しさを、この家の生活に背負っていた事実を何も解っていなかった。同じ内容でも言い方があったのではないかと思えました。
「父さんにもおばあちゃんのこと言ったんだ……泣いてた。『俺は狡いな』とも言ってた。『いつも憎まれ役はお母さんだって。後で謝らないとな』って。それと、『おふくろのこと、俺は何にもしなかった、何かと面倒見てくれるお母さんに『ありがとう』の一言もなかった』だって。それでまずは週3回のデイサービス頼もうって。軽度の認知症のケア施設で日帰り。父さんがコネ使って少し遅い時間まで、ほら母さんのパートの日、おばあちゃんを預かってくれるって。送迎ありの優良のケアセンター紹介してもらったって。母さん、俺はもう高校生なんだよ?俺、その日は早く帰るから、母さんが時間無い時には俺がばあちゃんの相手するから。子供だけど子供じゃないんだ。だから頼って。助け合うから家族なんじゃないの?母さんの言葉で解ったよ。今まで、ごめんね母さん」
「………」
暫くの沈黙の後、母さんは、
『あんたは、もう大人ね………。』
祥太にはその声が、いつか貰うことになる介護士の資格のように重たく感じました。
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