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〖第28話〗
しおりを挟む「遅くなってごめん。ごめんね、山梔子」
「いつか、来てくれると思ってた。これからは、ずっと、ずっと一緒にいられるね」
ぎゅっと、山梔子は背に回した腕に力を込めた。僕は「山梔子」と呼びながら、みっともないほど泣いた。
涙がとまらなかった。情けない僕を慰めるように山梔子から、甘い匂いがたちこめる。
「君を覚えていて良かった。誰かを愛せる人間で良かった」
「惣介………」
山梔子は僕を抱いて、髪を撫でてくれた。
「惣介。いらっしゃい」
「叔父さん。あの、こちらは…?」
いつの間にか、チヨさんと同じ服を着た若い女性がいる。目の覚めるような美女。清潔感はあるけれど、豊かな長い髪は艶めいて綺麗だ。けれど、何処かで見覚えがある。不思議な既視感を覚えた。
「通称『香蝶』普段はチヨさんの姿だよ」
「え?でも………」
と叔父さんはいうけれど、どうして、この女性がチヨさんなのか、僕の中でイコールにならない。
「香蝶さん?あの、絵のモデルの香蝶さん?チヨさんには失礼ですが、おばあさんじゃ、なかった…?」
チヨさん、であり香蝶さんでもある綺麗な女性は、は楽しそうに、ふふっと笑った。
叔父さんは片手を宙にあげると、黒い羽根にレースが縁どられといるような艶めいて光輝く美しい大きな蝶々になり、叔父さんの指に止まり、パタパタとゆっくり羽を動かした。
「麝香鳳蝶、ジャコウアゲハ。彼女の本当の姿だ。この場所に来て、私との約束を守れたのは惣介が初めてだ。皆、東屋を覗きに行ってしまう。香蝶が唯一この領域内で蝶々の姿で身体を休める所だから、そっとしておいて欲しくてね。東屋が彼女の家。いや、本当はこの森が彼女の家なんだ」
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