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【第41話】反魂……?
しおりを挟む『私はフィルの『人間の気』を反魂の儀式に使う瓶に貯めていた。それに、フィルが必要なものをくれた。アルトの遺髪だ。ときにフィル』
王様の声が大理石の美しい部屋に反響する。
『お前は生き返った身だが、その時アルトに会わなかったか?』
フィルは思い出したすべてを王様に話した。おばあちゃんの
『体温』
『狭間』
『空のお迎えがまだ来ない』
『帰り道は朱い花』
……… そしてその後、フィルが生命の珠を魔女クレシェンドに盗まれ、レガートが取り返し、代償にレガートが朱い爪を魔女に剥がれたこと。
フィルが泣くとおばあちゃんからもらった翡翠の指輪から雪のような光が舞ってレガートの爪は再生し、
透明な紫色になったこと。
『失礼ですが王様。何故フィル様は森へ自ら入られたのですか?自殺行為です。迷い森が生命を脅かす危険はご存じのはずでは?』
一人の重臣が一歩前に出て恭しく一礼した。王様は額に手をあて言った。
『……私とフィルの痴話喧嘩よ。あの日の夜中、秘密裏にフィルを寝室に呼んだ。疑うなら寝室の衛兵に尋ねるがよい……これ以上私に恥をかかせないでくれ』
『も、申し訳ありませぬ』
王様はフィルにしか解らない目配せをし、軽く微笑んだ。
『さて、話をまとめる。アルトはまだ空の世界に行っていない。反魂可能だ。そしてフィルには魔力、しかも魔力を増幅させる力や変化させる力がある。それに皆、あの唄の力を見ただろう。もはや花嫁とは呼べぬ。フィルはこの国に必要な術師だ。近々親衛隊と不作の農地に出向いて唄を歌って貰おうと思っている。そして王太弟レガートの力は、朱い爪によって、封じられていた魔力が解放された。レガートにも術師とし反魂に協力してもらう。私とほぼ対等な力を持つ術師だからな』
その声に重臣とおぼしき妖精が頭を下げ言った。
『王様、それでは掟に反しまする。外から来たものは王様のもの。それを術師とは。
花嫁にしないのでしたなら、伽人でも』
王様はその重臣の妖精をギロリと睨んだ。
『私の最愛の者、ひいては反魂が叶えば立后させる者の孫を伽人とは。控えぬか!私は王太弟、且つ親衛隊長の弟のレガートの日頃の功にかえて、花嫁フィルを降嫁させようと思う』
重臣たちは怯えるように、その場をざわつかせた。
『論功下賜ですか。ですが……レガート様は、呪いを受けたと、皆が申しております。それに、クレシェンドの伝説ではアクセント王は黒髪、クレシェンドは金色の髪をしていたと申します。王様に何かあってからでは、遅いのです。我々は怖いのです、王様!お取り消しを!』
重臣の妖精達は、声を揃えて頭を下げた。
『レガートにその気があれば私が眠っている間にクーデターでも起こしておるわ!口を慎め!親衛隊長とし、身を粉にして働き、私が眠りについている間、この国の氷を溶かし目覚めさせたのは、我が弟のレガートだ。異論がある者はあるか!』
皆無言で一歩下がり、王様に深々と頭を下げ、
『仰せのままに』
と頭を下げた。
王様は立ち上がり言った。
『これにて散会!』
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