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【第88話】結婚式
しおりを挟む『この二人に永遠の愛を、祝福を』
王さまの祝福の言葉、おばあちゃんからティアラを受けとる。
レガートが前もって外しておいた翡翠の指輪を聖水で清めフィルの左手の薬指にはめる。
レガートにも同様に、異例だったが王様が認めてくれて、エーエフの指輪を聖水で清めレガートの左手の薬指にはめる。
フィルの純白のベールをレガートがめくり、そっと口づけた。
小さく『続きは今夜』とフィルの鼓動を速まらせる低い声で小さく言った。
みんなが笑顔で祝福してくれた。
無事婚礼の儀が終わり、控えの個室に王様とおばあちゃんとレガートとフィルだけになった。
リトの家のワインをレガートが
『少しだけ、飲むか?』
と言われフィルはレガートからグラスを貰い、少し飲んだ。
とても美味しい。
リトの実家の特製ワイン。
普通の葡萄ではなく山でも貴重な山葡萄のお酒らしい。
「おばあちゃん!」
「なんだいフィル。真っ赤な顔をして」
「あのね、私、幸せだよ。本当に、本当に幸せだよ。花嫁さんになれた。レガートのお嫁さんになれた!」
感情が溢れてきて、しがみつき泣きそうになったとき、おばあちゃんは言った。
「フィル、しがみついて涙を受け止める相手はもう違うよ。困った顔でお前を見てらっしゃるよ。同じ言葉を伝えなさい。きっとお喜びになるよ」
振り返る。目が合うとやはりレガートは柔らかく笑う。
「レガート!」
飛び付くように抱きつくフィルを悠々とレガートは受け止める。
『どうした?フィル』
「レガートに会えて良かった。森で私を見つけてくれてありがとう。レガートは私の初恋のひと。愛してるよ。ずっとずっと愛してるよ。レガートだけ。レガートだけだよ。幸せだよ……?本当に、本当に幸せ。お嫁さんになれた。今まで長かったね………有難う、レガート………」
フィルは、泣きながらそう言うと、レガートの腕の中で眠ってしまった。
二時間くらい経ち、夜は舞踏会だ。
衣装合わせに手間取った。
花嫁の純白の絹の親衛隊の軍服。
ヴェールはアルトおばあちゃんから譲り受けたもの。
親衛隊であることも示したいと、バッチを襟元のアクセントに。
護衛がわりにマントちゃん。白く変化してもらう。
レガートと指を繋ぎ、広間の真ん中に立つ。普通、王様とおばあちゃんの位置だが、王様が譲ってくれた。
音楽が鳴った瞬間、明かりは消え、悲鳴が広間に響いた。
皆怯え、親衛隊が来賓を守る。
レガートはフィルを後ろに庇い、エーエフの剣をフィルに渡す。女性のすすり泣く声ホール中に聞こえる。
『退魔の剣だ。王家に伝わる親衛隊長のみ帯刀が許されたエーエフの大剣だ。何かあった時は声の影を刺せ』
それから、とレガートはフィルに小さく耳打ちした。
『それと、私に……もしものことがあったら、その時は……頼む。フィルにしか頼めない。頼みたくない』
剣を持つ手が震える。
「レガート、無理だよ。……無理だよ……」
『頼んだ、フィル……』
そしてレガートは小さく
『必ず戻ってくる』とも。
レガートはフィルを見つめ、黙って頷いた。
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