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【第62話】王家にまつわる哀れな娘
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ある王子がいた。第三王子で自分に王座が回って来ることのないと王子は確信していた。
長兄は頭が良く利発で、次兄は武に優れ明るく豪快だった。
自分は特に冴えたる才能がないことを王子自身、解っていた。
ある日散歩をしていると森に捨てられたのであろう、物乞いの身なりの汚い人間の娘に出会った。
その頃森は人間界と自由に行き来が出来た。厳しい環境ではあったが。
娘を可哀想に思った王子は隠れて宮殿に連れて帰り、娘をきれいにしてやり、服を与えた。
娘は絶世の美女だった。
しかし王子はそんなことは気にとめなかった。
ただ、使用人の服しかないと謝った。
娘は王子の優しさに喜び、
王子のためなら何でもすると言った。
王子は私の友達になって欲しいと言った。いつも一緒に遊ぼうと。
王子は誰の目にとまることなく、
いつも一人で寂しかった。
王子は段々と、娘のまっさらな無垢な純粋さに惹かれていった。
ある日二人が部屋で遊んでいると次兄がたまたま第三王子の部屋にやってきて、娘に一目惚れをした。
次の日、娘の話を聞きつけた長兄が娘を見ると、長兄も娘にたちまち恋をした。
問題はそこからだった。
娘を取り合い、仲違いをした長兄と次兄だったが、父である王に諌められた。
しかし腹の虫が収まらなかった次兄がついに親衛隊と軍隊を率いてクーデターを起こした。
長兄と王を処刑し、
美しい娘を手に入れたのもつかの間、
次兄は長兄の部下の生き残りに毒を盛られて死んだ。
残ったのは三男アクセント。王の戴冠式の日、綺麗な衣装に身を包み嬉しそうに娘は言った。
『アクセント様、この王国はあなたのものです』
にこやかに娘は続けた。
『言っていたではありませんか。「一度でいい、王になってみたい。綺麗なドレスを着たお前と舞踏会でダンスを踊りたい」と。夢を見るように、あの野原で私に花冠を作り言ってくださったではありませんか』
王子はその一言でまことしやかに囁かれていた噂を信じた。
この娘がすべてを画策し、自分を王にするために国を乱したと。
娘の無垢で純粋な、罪を罪と思わない、子供のような残酷さはいつかこの国を滅ぼす。
隠しナイフで娘の胸を突こうと思っていたアクセントだったが、ただ一心に自分だけを想い、何の気なしに言った、夢のような自分の望みを叶えようとする拙い愛が切なく、娘を殺すことはできなかった。
娘は褒めて欲しいかのようにアクセントを見詰めた。
王子は娘を抱きしめた後、目の前で自分の羽根を落とした。
娘は王子は死んだと思い、心痛のあまり壊れてしまった。泣き叫び、森へ入って、それきり。娘の後の詳細は知らない。
アクセント王と娘の間には子供がいた。その子供が小国をまとめあげ、後にこの王家、プレスティッシモ王家を確立した第百代王、スタッカート大帝だ。
アクセント王は一命をとりとめ、子のスタッカートに早々に譲位し、離宮を作り独り死ぬまで娘の面影を想い続けた。
幼く拙い、愚かで純粋な愛の末路だった。アクセントは、もう二度と娘に会わないことと引き換えにこの白亜の離宮で王国の繁栄を願った。
国に、混乱を招き家族を失ったのが耐えきれなかったのだろう。これが王家に伝わる伝説だ………
────────続
長兄は頭が良く利発で、次兄は武に優れ明るく豪快だった。
自分は特に冴えたる才能がないことを王子自身、解っていた。
ある日散歩をしていると森に捨てられたのであろう、物乞いの身なりの汚い人間の娘に出会った。
その頃森は人間界と自由に行き来が出来た。厳しい環境ではあったが。
娘を可哀想に思った王子は隠れて宮殿に連れて帰り、娘をきれいにしてやり、服を与えた。
娘は絶世の美女だった。
しかし王子はそんなことは気にとめなかった。
ただ、使用人の服しかないと謝った。
娘は王子の優しさに喜び、
王子のためなら何でもすると言った。
王子は私の友達になって欲しいと言った。いつも一緒に遊ぼうと。
王子は誰の目にとまることなく、
いつも一人で寂しかった。
王子は段々と、娘のまっさらな無垢な純粋さに惹かれていった。
ある日二人が部屋で遊んでいると次兄がたまたま第三王子の部屋にやってきて、娘に一目惚れをした。
次の日、娘の話を聞きつけた長兄が娘を見ると、長兄も娘にたちまち恋をした。
問題はそこからだった。
娘を取り合い、仲違いをした長兄と次兄だったが、父である王に諌められた。
しかし腹の虫が収まらなかった次兄がついに親衛隊と軍隊を率いてクーデターを起こした。
長兄と王を処刑し、
美しい娘を手に入れたのもつかの間、
次兄は長兄の部下の生き残りに毒を盛られて死んだ。
残ったのは三男アクセント。王の戴冠式の日、綺麗な衣装に身を包み嬉しそうに娘は言った。
『アクセント様、この王国はあなたのものです』
にこやかに娘は続けた。
『言っていたではありませんか。「一度でいい、王になってみたい。綺麗なドレスを着たお前と舞踏会でダンスを踊りたい」と。夢を見るように、あの野原で私に花冠を作り言ってくださったではありませんか』
王子はその一言でまことしやかに囁かれていた噂を信じた。
この娘がすべてを画策し、自分を王にするために国を乱したと。
娘の無垢で純粋な、罪を罪と思わない、子供のような残酷さはいつかこの国を滅ぼす。
隠しナイフで娘の胸を突こうと思っていたアクセントだったが、ただ一心に自分だけを想い、何の気なしに言った、夢のような自分の望みを叶えようとする拙い愛が切なく、娘を殺すことはできなかった。
娘は褒めて欲しいかのようにアクセントを見詰めた。
王子は娘を抱きしめた後、目の前で自分の羽根を落とした。
娘は王子は死んだと思い、心痛のあまり壊れてしまった。泣き叫び、森へ入って、それきり。娘の後の詳細は知らない。
アクセント王と娘の間には子供がいた。その子供が小国をまとめあげ、後にこの王家、プレスティッシモ王家を確立した第百代王、スタッカート大帝だ。
アクセント王は一命をとりとめ、子のスタッカートに早々に譲位し、離宮を作り独り死ぬまで娘の面影を想い続けた。
幼く拙い、愚かで純粋な愛の末路だった。アクセントは、もう二度と娘に会わないことと引き換えにこの白亜の離宮で王国の繁栄を願った。
国に、混乱を招き家族を失ったのが耐えきれなかったのだろう。これが王家に伝わる伝説だ………
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