77 / 103
【第68話】レガートの疲労の理由
しおりを挟む朝御飯の後の日課のようにレガートは妖精の気をわけてくれる。やっと、手に触れられるのは馴れた。
最初、怖かったが、レガートは下から掬うようにフィルの手に触れるようにしてくれるので、怖くない。
朝、一日に一回。レガートがフィルに触れる時間。金色の粒子が身体に入ってくる感じだ。
温かくて安心する。ささくれだった心も癒されていく。
「レガート、ありがとう。……最近疲れてない?」
『大丈夫だ。親衛隊の訓練や、ドラゴンの会話訓練を始めたからな、多分そのせいだ』
微笑みで出来上がる食卓のあと、バルコニーから、任務に向かうレガートを見送る。
最近羽根の色が紫を増してる。嫌な胸騒ぎがした。 三日に一度、医師の妖精の診察だ。
今までの食生活を話す。一日一回レガートに妖精の気をもらっていることも。
体力も回復していると、
医師の真っ白な豊かなお髭の妖精さんも笑って言っていた。
『フィル様とレガート様は気の相性が大変よろしいのかと。これほど回復なさるのは奇跡のようです。それに一日一回の妖精の気をフィル様に、とはレガート様だからできること。普通の妖精では身が持ちませぬ』
毎日絶食に近かったから胃腸が収縮し、一度に多くは食べられないが、不思議とお腹が空くので主にナッツや果物の差し入れは回数を分けて食べる。
レガートは毎朝、小さな果物の籠を置いていく。 忙しくない日に小さなドーナツを二つ入れてくれる。
楽しみにしているけどレガートの負担にならないか心配だ。
それと、昼御飯におばあちゃんが作ってくれる、フィルの大好きな蜂蜜ミルク粥を残さず食べれるまで、いつのまにか回復していた。
一ヶ月が経ち、変なことに気づく。硝子に映った自分を見てフィルは気づいた。戻っている。
戴冠式の頃の自分に。
豊かな艶やかな金の髪。
若々しい肌。
時間の歯車を巻き戻したような年齢相応の顔。
理由は一つしかない。
妖精の気だ。たくさん身体の中に入っている。入りすぎている。 今日は親衛隊の任務はない。杖をつきながらレガートの執務部屋まで歩く。
こんなこと……時間の『逆行』が出来る程、妖精の気が他者に送れるのはレガートしかいない、あとは王様ぐらいだ。
身体つきが若くなってはいるけど、まだフィルは栄養失調の名残で足に筋肉がなくなり、上手く歩けない。
息をきらしながらドアを開けると、レガートは、驚いたように仕事をしていたテーブルから立ち上がり、倒れこむようにしたフィルを抱きかかえた。
『フィル、どうした!私に用事があるときは水晶の笛を吹けば駆けつけると言ってあるのに!こんな無理をして……!』
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる