妖精の園

カシューナッツ

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【第68話】レガートの疲労の理由

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朝御飯の後の日課のようにレガートは妖精の気をわけてくれる。やっと、手に触れられるのは馴れた。

最初、怖かったが、レガートは下から掬うようにフィルの手に触れるようにしてくれるので、怖くない。




朝、一日に一回。レガートがフィルに触れる時間。金色の粒子が身体に入ってくる感じだ。

温かくて安心する。ささくれだった心も癒されていく。 


「レガート、ありがとう。……最近疲れてない?」

 『大丈夫だ。親衛隊の訓練や、ドラゴンの会話訓練を始めたからな、多分そのせいだ』 

微笑みで出来上がる食卓のあと、バルコニーから、任務に向かうレガートを見送る。





最近羽根の色が紫を増してる。嫌な胸騒ぎがした。 三日に一度、医師の妖精の診察だ。


今までの食生活を話す。一日一回レガートに妖精の気をもらっていることも。

体力も回復していると、

医師の真っ白な豊かなお髭の妖精さんも笑って言っていた。



『フィル様とレガート様は気の相性が大変よろしいのかと。これほど回復なさるのは奇跡のようです。それに一日一回の妖精の気をフィル様に、とはレガート様だからできること。普通の妖精では身が持ちませぬ』 

毎日絶食に近かったから胃腸が収縮し、一度に多くは食べられないが、不思議とお腹が空くので主にナッツや果物の差し入れは回数を分けて食べる。

レガートは毎朝、小さな果物の籠を置いていく。 忙しくない日に小さなドーナツを二つ入れてくれる。

楽しみにしているけどレガートの負担にならないか心配だ。
それと、昼御飯におばあちゃんが作ってくれる、フィルの大好きな蜂蜜ミルク粥を残さず食べれるまで、いつのまにか回復していた。

一ヶ月が経ち、変なことに気づく。硝子に映った自分を見てフィルは気づいた。戻っている。

戴冠式の頃の自分に。
豊かな艶やかな金の髪。
若々しい肌。
時間の歯車を巻き戻したような年齢相応の顔。




理由は一つしかない。
妖精の気だ。たくさん身体の中に入っている。入りすぎている。 今日は親衛隊の任務はない。杖をつきながらレガートの執務部屋まで歩く。

こんなこと……時間の『逆行』が出来る程、妖精の気が他者に送れるのはレガートしかいない、あとは王様ぐらいだ。

身体つきが若くなってはいるけど、まだフィルは栄養失調の名残で足に筋肉がなくなり、上手く歩けない。

息をきらしながらドアを開けると、レガートは、驚いたように仕事をしていたテーブルから立ち上がり、倒れこむようにしたフィルを抱きかかえた。 



『フィル、どうした!私に用事があるときは水晶の笛を吹けば駆けつけると言ってあるのに!こんな無理をして……!』

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