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【第40話】フィルの生命の珠
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フィルの怒りも憎しみも溶けていくようだった。フィルに縋り、
子供に戻ってしまったかのように泣き続けるレガートを、置いて帰るのはつらいなと思った。
「レガート、そろそろ泣き止んで」
『フィル、力を……』
「もう、いいよ、あるがままに生きる。人間の世界に戻れば働き盛りだね。花屋にでもなろうかな」
ふふっとフィルは少し淋しそうに笑った。しばらくレガートは黙ったあと、
『……生命の珠を見せてくれ』
「言った通りだよ。見て、耐えられる?」
『真実を、見たい。フィルの悲しみも、怒りも、憎しみも受け止めるためには、
見なければ。知らなければ………いいか?
目を瞑ってくれ。大丈夫だ。
珠の大きさは時間に比例するんだ。
小さいから負荷はない』
レガートが見たのは、あまりに惨いものだった。許されない、許されてはいけない。
様々なフィルへの残酷な扱い。今、珠に映っているのは残飯を四つ這いになり、犬のように食べさせている様子だった。
えづくフィルを蹴って、笑っていた。
クレシェンドはフィルに姿を変え、フィルはレシェンドの術によって、歪んだレガートのレンズに桃色の髪の初恋の妖精の姿で映る。
鞭打ちを欲しがるクレシェンド。
レガートは笑いながら、愉しそうに自分は血だらけ傷だらけで使用人の服が裂けてボロボロのフィルの背中を指差し、
『穢い、どう扱っても構わない使用人にはお似合いだな。鞭では中々上手く「犬」と書けないな』
と笑っていた。覚えていない。こんなことなどしない。見たくない、吐きそうだ。
何でこんなことをさせた。
最後まで見た。強い思念が残っている。
許されない。許されてはいけない。
あまりに惨い。
でも、この生命の珠の記憶がある限り、フィルとの関係は元に戻らないように思えた。
──『壊してしまおうか』──
フィルの苦しい三ヶ月が失われるだけだ。いい考えだ。魔物が囁く。
けれど神獣は言う。その上で、もし記憶をフィルが自分で取り戻したら、フィルはレガートを許さない。ずっと凛とした大きな瞳で冷たい眼差しを送られるだろう。
静かに眠るフィルに口 づけ生命の珠を戻し、レガートは意識を取り戻したフィルに言った。
『妖精の気を受け取って欲しい。私を道具として使えばいい。栄養の素とでも思えばいいだろう?』
レガートの力無い笑顔に、フィルは、頷いた。
──────────続
子供に戻ってしまったかのように泣き続けるレガートを、置いて帰るのはつらいなと思った。
「レガート、そろそろ泣き止んで」
『フィル、力を……』
「もう、いいよ、あるがままに生きる。人間の世界に戻れば働き盛りだね。花屋にでもなろうかな」
ふふっとフィルは少し淋しそうに笑った。しばらくレガートは黙ったあと、
『……生命の珠を見せてくれ』
「言った通りだよ。見て、耐えられる?」
『真実を、見たい。フィルの悲しみも、怒りも、憎しみも受け止めるためには、
見なければ。知らなければ………いいか?
目を瞑ってくれ。大丈夫だ。
珠の大きさは時間に比例するんだ。
小さいから負荷はない』
レガートが見たのは、あまりに惨いものだった。許されない、許されてはいけない。
様々なフィルへの残酷な扱い。今、珠に映っているのは残飯を四つ這いになり、犬のように食べさせている様子だった。
えづくフィルを蹴って、笑っていた。
クレシェンドはフィルに姿を変え、フィルはレシェンドの術によって、歪んだレガートのレンズに桃色の髪の初恋の妖精の姿で映る。
鞭打ちを欲しがるクレシェンド。
レガートは笑いながら、愉しそうに自分は血だらけ傷だらけで使用人の服が裂けてボロボロのフィルの背中を指差し、
『穢い、どう扱っても構わない使用人にはお似合いだな。鞭では中々上手く「犬」と書けないな』
と笑っていた。覚えていない。こんなことなどしない。見たくない、吐きそうだ。
何でこんなことをさせた。
最後まで見た。強い思念が残っている。
許されない。許されてはいけない。
あまりに惨い。
でも、この生命の珠の記憶がある限り、フィルとの関係は元に戻らないように思えた。
──『壊してしまおうか』──
フィルの苦しい三ヶ月が失われるだけだ。いい考えだ。魔物が囁く。
けれど神獣は言う。その上で、もし記憶をフィルが自分で取り戻したら、フィルはレガートを許さない。ずっと凛とした大きな瞳で冷たい眼差しを送られるだろう。
静かに眠るフィルに口 づけ生命の珠を戻し、レガートは意識を取り戻したフィルに言った。
『妖精の気を受け取って欲しい。私を道具として使えばいい。栄養の素とでも思えばいいだろう?』
レガートの力無い笑顔に、フィルは、頷いた。
──────────続
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