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珠合わせ、その後〖第57話〗──②
しおりを挟む「儀は終わった。閂をあけよ」
遠くで誰かの声がする。目を開ける。
「そうにいちゃん?あれ?いつの間にか二人で眠っちゃったんだね」
「ん?おはよう。眠ったというより、急に意識を失った感じだな………」
何だか胸のあたりがモゴモゴと動く。見るとすやすやと眠る可愛い赤子。
「赤ちゃん!赤ちゃんだよ!耳と尻尾があるよ!可愛い子。どうして?」
「儀は終了です。蒼様、空様」
朝日に照らされ耳と尾の色が金色に光る。可愛い男の子だ。
「大叔母さま、どうして、これは……」
思わず蒼は息を飲む。
「珠合わせ、上手くいきましたね。本気で古式の祝詞を読んだ甲斐がありました。お二人の珠の半分づつで、新しい命を作りました。古来の神官や巫女が行う珠移しのようなものです。お二人の力が足りなくなりそうなので蒼様の腕飾りの宝珠の力を借りました。二日後の婚礼の儀で全て終了です。お疲れさまでした。お生まれになった赤子の名前をお早めに考えてあげてください」
足元がふらふらする。徹夜をしながら泥酔するまで酔わされた感じだ。巫女二人に腕を支えられる。
空もフラフラしていた。巫女姿の大叔母に肩を支えられていながらも、両手で白い布にくるまれた赤子をいとおしそうに抱きかかえていた。
休憩所で三人で休む。布団に弱い癒しの術がかけてある。空と赤子と一緒に横になる。身体の重さがとれていく感じがする。赤子を挟んだ川の字。憧れていたもの。赤子は、まだ薄いがもう、髪がある。
「可愛いね。僕と、そうにいちゃんの赤ちゃんだよ。目元なんてそうにいちゃんそっくり。通った鼻筋も。きっと素敵な優しいひとになる。毛色は見たことがないね。金色だ。でもこの子光を反射すると毛並みが碧色だ。そうにいちゃんみたい」
「綺麗だな。だが毛並みが親が黒で子が金色とは、皮肉だな」
蒼は少し寂しげに笑った。
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