112 / 115
珠合わせ、その後〖第57話〗──②
しおりを挟む「儀は終わった。閂をあけよ」
遠くで誰かの声がする。目を開ける。
「そうにいちゃん?あれ?いつの間にか二人で眠っちゃったんだね」
「ん?おはよう。眠ったというより、急に意識を失った感じだな………」
何だか胸のあたりがモゴモゴと動く。見るとすやすやと眠る可愛い赤子。
「赤ちゃん!赤ちゃんだよ!耳と尻尾があるよ!可愛い子。どうして?」
「儀は終了です。蒼様、空様」
朝日に照らされ耳と尾の色が金色に光る。可愛い男の子だ。
「大叔母さま、どうして、これは……」
思わず蒼は息を飲む。
「珠合わせ、上手くいきましたね。本気で古式の祝詞を読んだ甲斐がありました。お二人の珠の半分づつで、新しい命を作りました。古来の神官や巫女が行う珠移しのようなものです。お二人の力が足りなくなりそうなので蒼様の腕飾りの宝珠の力を借りました。二日後の婚礼の儀で全て終了です。お疲れさまでした。お生まれになった赤子の名前をお早めに考えてあげてください」
足元がふらふらする。徹夜をしながら泥酔するまで酔わされた感じだ。巫女二人に腕を支えられる。
空もフラフラしていた。巫女姿の大叔母に肩を支えられていながらも、両手で白い布にくるまれた赤子をいとおしそうに抱きかかえていた。
休憩所で三人で休む。布団に弱い癒しの術がかけてある。空と赤子と一緒に横になる。身体の重さがとれていく感じがする。赤子を挟んだ川の字。憧れていたもの。赤子は、まだ薄いがもう、髪がある。
「可愛いね。僕と、そうにいちゃんの赤ちゃんだよ。目元なんてそうにいちゃんそっくり。通った鼻筋も。きっと素敵な優しいひとになる。毛色は見たことがないね。金色だ。でもこの子光を反射すると毛並みが碧色だ。そうにいちゃんみたい」
「綺麗だな。だが毛並みが親が黒で子が金色とは、皮肉だな」
蒼は少し寂しげに笑った。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。


私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。


【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる