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桜色の傷痕〖第25話〗──②
しおりを挟む「やめてって言ったのに、何で、そうにいちゃんは、やめてくれないの?」
潤んだ瞳は訴える。そそられる。無理やり口づけて押し倒したい。
「爺に言われなかったか?」
「なあに?」
「美しい者の涙は、時に逆効果になる。嗜虐心を持つ者なら、空は、今頃犯されてる。俺は必死で押さえてる。本当は今すぐにでも空を抱きたいよ。空は『こういうとき』否定の言葉を口にするけど、そうにいちゃんと『こういうこと』をするのは嫌か?行為自体が嫌か?」
空は「僕はね……」と小さい声で、話す。
「その、爺やさんに色々教えて貰ったけど、何だか恥ずかしい気持ちが消えなくて。『やだっ』ていうけど、言わないと快感に流されて支配されてしまいそう。今だってこんな……腕だけで、感じ……ちゃって。情けなくて、恥ずかしくて、『好色』だったらどうしようって。はしたないよ。『そうにいちゃんの婿は好色だ』なんて言われたら、ぼ、僕、そうにいちゃんに顔向けできないよ」
蒼は空の上気した頬を手で撫でる。じっと、自分だけ見つめる大きなつぶらな瞳。いとしくてたまらない。あまりにも。つらくなるほど。
それでも、苦しい。思われる自信がない。空の絶対の愛情を受ける自信が。空は何故自分が好きなんだろう?
「どうしたの?そうにいちゃん。悲しいの?」
そう言う空が悲しそうな顔をする。
「ごめんな。髪を洗おう」
石鹸を泡立て黒く、真っ直ぐな髪を洗う。
「懐かしいね。大人のそうにいちゃんと会って、一週間も経たないうちに、僕はそうにいちゃんの許婿になれた。奇跡だよ。諦めないで良かった。僕を見つけてくれて、ありがとう。初めて会ったとき、そうにいちゃんは泥だらけでくしゃくしゃの髪の僕を、まともにお風呂に入れなかった僕を、………洗ってくれたね」
あまりに色んなことがありすぎて、まだ再会してまともに時間はたっていない。その事をまともに蒼は把握していなかった。なのに、空のことより、蒼は自分のことばかりだと自分を恥じた。
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