僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】

カシューナッツ

文字の大きさ
100 / 115

父への思い〖第51話〗──①

しおりを挟む

「温まったか?そろそろ、あがるか?」

「うん!」
    
 神泉から上がり服を着る。ザクザクと凍った雪を踏みしめるが、空はくしゃみを繰り返す。

「寒いだろう、冷えてしまう。すぐに着く。乗れ、空」
    
 狗の形になる。空を背に宙を駆けるとすぐに着いた。玄関前で人のかたちに戻り帰宅する。目のはしに提灯が見えた。空を部屋に先に行かせ、立ち尽くす人影を見つめる。
 
「父上?どうされましたか、そんな薄着で」

「白を……お前の叔父を私の棟の奥の離れに仮蟄居にした。結界が張ってあるのであそこでは術は使えん。お前には謝らないといけない。話を聞いて欲しい」
    
あまり蒼は父とは長く一緒に居たくない。苛々や圧迫感。負の感情ばかりを受けて帰る破目になることが多いからだ。

 まあ、この前の空を前に頬を染める父は面白かったが。

 あれよと流され、居間に通される。

「お前は柚子茶が好きだったな。私は焙じ茶が好きだ」
    
 好みの記憶から幻術ではない。術の罠も感じない。なら何だ?回りくどいことが嫌いな父らしくない。

「あと少しだな。結婚前に私に言いたいことはないか?」

「いえ、別に」

「私はお前に謝らなければならないことがある」

    珍しいことがあるものだ。父からの謝罪など聞いたことがない。まず、親が子に頭を下げるのを良しとしないひとだ。黙って柚子茶を飲む。甘くて美味しい。

「『このくらいで弱音を吐くようなら、当主は務まらん、鍛練だ』そう言ってきた。けれど、今になって、酷いことを強いてきたと解った。爺に『話しておきたいことがある』と言われ少し前に聴いた。三歳くらいの頃から『穢い色だ』と大人げない『大人に』尾を踏まれ、挙げ句、毒まで盛られて、必死で何十回も解毒して看病してきたと。知らなかった。いつも傷だらけだったのは、子供同士の喧嘩だと、思っていた。年端もいかないお前を『複数人』で殴ったり蹴ったりするとは、思いもしなかった。だが、何故言わなかった?何故頼らなかった?それに、毒を、盛られるとお前は『また鍛練と言われるから父上には言うな』と爺に口止めしたと。鍛練でも何でもない!どうして頼らなかった!」

    目頭を押さえ父は頭を俯いた。嘲笑したくなった。今更何を?初めてこの人も『父』の役目をしようとしていることは解った。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

記憶喪失のふりをしたら後輩が恋人を名乗り出た

キトー
BL
【BLです】 「俺と秋さんは恋人同士です!」「そうなの!?」  無気力でめんどくさがり屋な大学生、露田秋は交通事故に遭い一時的に記憶喪失になったがすぐに記憶を取り戻す。  そんな最中、大学の後輩である天杉夏から見舞いに来ると連絡があり、秋はほんの悪戯心で夏に記憶喪失のふりを続けたら、突然夏が手を握り「俺と秋さんは恋人同士です」と言ってきた。  もちろんそんな事実は無く、何の冗談だと啞然としている間にあれよあれよと話が進められてしまう。  記憶喪失が嘘だと明かすタイミングを逃してしまった秋は、流れ流され夏と同棲まで始めてしまうが案外夏との恋人生活は居心地が良い。  一方では、夏も秋を騙している罪悪感を抱えて悩むものの、一度手に入れた大切な人を手放す気はなくてあの手この手で秋を甘やかす。  あまり深く考えずにまぁ良いかと騙され続ける受けと、騙している事に罪悪感を持ちながらも必死に受けを繋ぎ止めようとする攻めのコメディ寄りの話です。 【主人公にだけ甘い後輩✕無気力な流され大学生】  反応いただけるととても喜びます!誤字報告もありがたいです。  ノベルアップ+、小説家になろうにも掲載中。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

壊すほどに、俺はお前に囚われている

氷月
BL
【後輩と先輩、交錯する心と体】 春、新学期の大学キャンパス。 4年の蓮(レン)は、人気者らしく女子に囲まれながらも、なぜか新入生・七瀬巧(タクミ)の姿を探してしまう自分に気づいていた。 彼は去年の秋、かつて蓮が想いを寄せていた男の恋人の友人として出会った相手。 ――まさか、この俺様が、また男に惹かれるなんて。 否定しようとすればするほど、目はタクミを追ってしまう。 無邪気に笑う顔。ふと見せる真剣な横顔。 先輩と後輩、互いに抗えない感情に囚われながら、夏の学園を駆け抜けていく――。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

処理中です...