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獅子雄家へ〖第44話〗──①
しおりを挟む次の間を使わず、机がある自分の部屋に布団をのべてもらうことかいつしか当たり前になった。
星影は籠から出してやった。昼は眠そうにして、薄暗いところに隠れているが、夜は毎日光を振り撒く。
「星影、無理はするな。充分きれいだから」
そう蒼が言うと、蒼の指にとまって羽を閉じたり広げたりする。
「そうにいちゃんの言葉が嬉しかったのかな、喜んでる」
「俺たちも休むから、今日はお前もおやすみ」
ふわりと星影は、消えるように闇に紛れた。
───────────
その日は、朝方から雪がちらついた。失礼の無い格好と見舞いの品を持って、獅子尾家へ向かうが、段々と雪が積もっていくのに中々着かない気がする。
「何か変だ。術だよ、そうにいちゃん。僕たちを迷わせる気だよ」
「やはりな。何となく誰が仕組んだか解るが、癪に障るな」
………挨拶回りに言っても、門前払いのようだった。手土産を従者に渡した帰り際、奥から
「面の皮の厚い子供が………見ておれ」
と叔父が言ったのを聞いた。『解』の印を組み、幻術を解いた。霧が晴れたように景色は晴れる。目の前に現れたのは崖だった。
「危ないところだった。もう、服装云々じゃないな。空、乗れ!」
黒い狗の姿になる。空をのせ、宙を飛ぶ。これが一番速いし安全だ。すぐに獅子尾家に着いた。玄関先で人の姿に戻り服装を整える。見慣れた暁の父が出迎えてくれた。
「よくいらしてくれましたな。暁の父です」
きゅっと握手をする。いつもならここで『親父、恥ずかしいよ』と照れ臭そうに暁が早足で玄関まで出てくる。
「こんにちは。当主代理の蒼です。こちらが、許婿の空です」
「こんにちは。お初にお目にかかります。空です。暁様のお父様ですね。話はかねがね伺っておりました」
朗らかに表情をくずす暁の父は空を気に入ってくれたようだった。
「ほう、どのような話を?」
「将棋がお強いと。それと、暁様が病だと聞いて、少しでもお元気になられるよう少しですが手土産の他に見舞品をお持ちしました。暁様の快癒を願い、こちらを。私が作りました」
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