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乞食の忌み子〖第11話〗──①
しおりを挟むそしてこの前自分が爺に言った言葉。
『幻術でも暗示でも使えばいい。狛井家の得意分野だろう?』
あのとき自分に幻術や暗示をかけられるのは、亡き祖父と父と爺くらいだ。祖父は他界し解らない。父は自分の記憶を消せない。確かあの年の神無月、山神さまと供をして、主張中だった。
爺は、一族の皆の意見をまとめる立場で、巫女追放賛成派だ。そして、自分の養育係。跡取りの自分に問題の巫女の子供と仲睦まじい記憶が残るのは、爺にとって、心地いいはずはない。空の記憶を取り戻したい。けれど、仮にも跡継ぎに術をかけたと知られたら、爺の立場が悪くなる。蒼は悩んだ。
「どうした?難しい顔して」
「いや……なんでもない」
暫く黙り、暁は少し温くなったうどんの残りの汁を口に運ぶ。
「……後悔がない選択をしろ、それしか俺には言えねぇな。責任とれる、立場じゃねぇから。何か勘だけど大人の問題が絡んでる気がする」
暁の勘は、よく当たる。
「……暁、俺が陽が昇って辰の刻になっても戻らなかったら獅子尾家の皆に礼を言っていたと伝えてくれ。俺は一度狛井家に戻る……空を頼む。本当に世話になった。すまない、また来る」
耳と尾が、走ると出る。尻尾は空曰く、ふわふわらしい。自分で触ることはほとんどないので解らない。時間が惜しく本当の姿──『狗』の姿になる。黒い獣。朝の冷たい風と共に、帰宅する。蒼はこの姿を他者に見られるのが嫌で、玄関前、スッと人のかたちに戻る。
「若様!どうなさったのです。人間の臭いがプンプンしますぞ!これ、香を焚け!それと熱い茶をお持ちしろ!」
白檀の香が焚かれ、熱い茶が用意された。自分の好きな薄荷の小さな飴も、お茶の供のように用意されている。爺の小さな気遣いがチクリと胸を痛ませた。
「爺、帰ってきてすぐ不躾だと思うが単刀直入に言う」
「空様の件ですか………偶然でしょうか、宿命でしょうか……」
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