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〖第25話〗変態強盗②

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「今トモが飲んでる薬、骨粗鬆症になりやすいから、チーズとか多いんだけど。薫くんチーズ大丈夫?」
「好きです」
 と薫くんは言い笑う。少し笑い方がぎこちない。まだ、雰囲気に慣れてないみたいだ。
「あと、鰹のタタキ、解凍ね。シソにも、鉄分あるんだよ。ニンニク醤油で、シソ巻いて食べて」
「はい。あの、マメのマットのトイレ、玄関先でいいですか?流石にリビングの絨毯には、申し訳ない気がして」
「そんな、マメちゃんは大事なお客さんよ?リビングで一緒にいましょ。窓があって一番怖かったし、お世話になるんだもん、感謝しかないのよ?私たち姉妹の我儘で、トモとのラブラブお泊まりが、ガードマンになって、マメちゃんまで一緒に来てもらってごめんね」
 トモ先輩とお姉さんが危険な目に遭うよりいいです。ありがとうございます。そうリビングの端にトイレシートを設置してあげていた。
「マメちゃん、おいで。ギュ~!ん~いつも通りの重量感。可愛い。大きくて、格好いいね。今日は宜しくね。あ~やっと落ち着いたね。お姉ちゃん。さて、飲み物でも飲もうか」
「あ、飲み物、少しですが」
 薫くんがエコバックを広げる。
「パインの炭酸!私これ大好き!カロリーオフの新しいのだ!」
「私、ノンアルビールもらっていい?」
「俺はミルクティー……好きなんです。甘いの」
 瞬時の薫くんのお父さんのチョイス、すごい。あとは、冷たいほうじ茶。
「あ、ほうじ茶!胃にやさしいから嬉しい」
 再び、薫くんのお父さんのチョイスはすごい。お父さんと薫くん、お家で話したりするのかな。
「あと、俺から。作ってみたんです。プルーンの砂糖煮。プルーン、鉄分あるから……トモ先輩に、良いかなって思って……美味しくなかったらすみません……。鉄分が多くてヨーグルトと混ぜたら美味しいと、ネットで見て……」
「ありがとう。すごく嬉しいよ」
「愛されてるね、トモ。お茶、ほうじ茶なら胃が空っぽでも飲めるから。頂いたら?せっかくだし」
────────────── 
お姉ちゃんが、料理の仕上げに入る。私は料理に敷くマットをそれぞれに広げていく。百均で買ってきたもの。安い割に使える。見映えもするし、簡単に洗えるし。
「一応ご馳走らしきものは作ったよ。普段はトモがやってくれることが多いけど、私はサポートなんだよ。トモはクッキー焼くのとかね、上手なのよ。ホットケーキの素で作るスコーンなんて美味しいの。チョコチップが入っててね……」
 お姉ちゃんが上手に本当4割、嘘6割で話をする。
 少しでも私を薫くんに良く思われたいと、朝早く起きて作って失敗した卵焼きをしょんぼりしながらお弁当箱に詰めていた時、
『見栄なんか張るんじゃないよ。そんなことでトモを嫌うなら所詮そんな男だよ』
 何て言ってたのに。お姉ちゃん、やさしいな、と思う。そして、もっとお手伝いしなきゃと思った。
 普段は私がサポートだ。メニューは一応大体のメジャーなものは作れるけど、私は何処かトロい。時間がかかってしまう。お菓子の方がかっちり分量が決まっているからグラムと工程を読んで暗記して作るだけなので、はっきり言って作りやすい。
 お母さんに、料理のコツを訊いても、
『お母さんは《お醤油?ん、適当》って言うけど……解らないよ。大さじ、小さじってないの?』
『う~ん。経験しかないのよね。野菜の水の出方も季節によっても違うし、ジャガイモとかだったら料理で種類を変えるしね。野菜はさまざまだから正解はないのよ』
 お姉ちゃんが、キムチーズグラタンを焼いてくれている。私はグラスとコースターを用意し、餃子の皮パリパリピザのトマトバージョンと茄子バージョンのスタンバイを終え、鰹のたたき(解凍)を冷やしたお皿に盛り付け、ニンニク醤油を小皿3つに作る。お姉ちゃんが小声で、
「トモ!あんたは薫くんに部屋でイチャイチャしてなよ!楽しみにしてたんでしょ。まだご飯には時間かかるから。私午前中にいつも通り片付けておいたから」
「奥の部屋だよ?一人じゃ危ない」
「マメちゃんがいるから大丈夫よ」
────────────────


《智美の部屋》


「トモ、トモの部屋見せてあげなよ」
「う、うん。薫くん、こっちなんだ。玄関近くてちょっと怖いね。窓もあるし。荷物、薫くんと並べてリビングに置いてきて良かった」
 入って。驚くのは私だった。きちんと、ブックエンドまで使って整理整頓され『なおされ』ている参考書、ノート、小説。並べられた赤本。趣味の本。ここまではよかった。『お姉ちゃん!隠してくれてたって良かったのに……!』とポケモンの小さなぬいぐるみ。マイナーな歌手のライブDVDとCD全集。他にはクラシックの夥しいCD。机には私のノートパソコン(3万は破格だった)。横のプリンターは、中学卒業に、自分でお祝いした。って水族館で撮った薫くんとのツーショットがポストカードを挟むピンに挟まっている。電子ピアノとヘッドホンに、楽譜が籠に整然と並ぶ。
「可愛くない部屋でしょ……」
「ポケモン、可愛い。カイリュウとミニリュウとゲンガー。チョイスが面白いですね。俺も好きですよ。いいですよね」
「昔、好きでね。可愛くて……子供っぽいね………」
 顔から火が出そうだ。
「あ、このDVD!家にあります。兄が大ファンのアーティストです。好きでパソコンで見てますよ。ライブとか、有給使っていってます。しかもファンクラブ入ってますよ。この人もう70歳だって兄に言われて驚きました。ピアノ、弾くんですか?すごいですね」
「うん。たまにね。高校に上がるときやめちゃったけど。趣味で。好きだったけど、なまってもう弾けない曲の方が多いの」
「指が憶えてるって聴きました。いつか、先輩のピアノ、聴いてみたいです」
 ありがと。床の絨毯マットに正座して、二人で向かい合わせに座る。沈黙が嫌で私は早速、風鈴のベルをドアにつけた。
「楽しかったね。お祭り。髪飾りも、お守りも、大事にする。あと……薫くんと一緒に過ごした今日も。まあ、まだ終わってないけど」
 夜は──ガードマンはこれからですから。俺が守ります。マメと一緒に。
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