Bitter sweet love ～苦くて甘い僕らの恋愛模様～〖完結〗

Never sweet love

関帝廟〖第２話〗

「てくてく歩く。これさ、テクシーって言わなかった？」

「テクシー？」

「うん。タクシーじゃなくて、テクシー」
  
「母さんと手を繋いで、小さい頃にさ。家は貧乏だったから、何処に行くにもテクシー。まず、家の村にタクシーなんて呼べないしさ。山ん中過ぎて」

　悠人は薄く笑った。心許ない指先が俺の指に絡められる。

「昨日電話が来たんだ。母さん、なくなったって」

　そう言って悠人はまだ笑う。

「義理の母さんと父さんのじーばーに頭上がらなくて、いつも裏方にまわって苦労ばかりしてた。村を出る前、母さんはいったんだ『私みたいにはなるな』ってだから関帝廟で母さんの思い出だけでも、空におくりたいな。母さん、もう苦しまないでって。自分のしたいことだけやって、食べたいものだく食べて。高いメイク道具も買って。子供ながらにも綺麗な人だったのは覚えてる」

　確かに俺も覚えてる。自分の母さんみたいに派手なタイプではなく、白百合みたいな、可憐な………。

「関帝廟、バックに写真撮ろう！中じゃ撮れないだろ」

　手を繋ぐ。ギュッと。まるで離さない、というように、いや、離れていかないでというように。

──────────

いざ、関帝廟！あまりの派手さに驚いた。

「これさ、関羽なんだよな、祭られてるの。セイリュウエンゲツトウだっけ？トレードマーク」

「桃園の誓いの劉備と張飛と関羽の関羽？」

「そうそう。それそれ。俺ん家で、昔ゲームやっただろ」

「呂布が怖かったな。２プレイで『虎牢関の戦い』で呂布が出ると君が逃げろーって」

　ゲームの話で盛り上り、なんとか写真を撮った。中に入った悠人は、

『始めてみるくらいの長いお香をあげてきたよ。あれなら空に届くよ。母さんも今の僕を見たら、英明くんに頼りきりはダメよ。ちゃんと英明くんを支えてあげてって言うんだろうな。僕はしてもらうばっかりだから。ねぇ、僕は英明の帰る場所になってる？』

　と言い目尻に涙を滲ませた鼻声でそう言った。

「バカだな、なってるよ。悠人がいるから俺はちゃんと生きてるから。悠人に恥ずかしくないような人間になれてるから。行こう、あっちにでっかい肉まん売ってる店とかあるんだって。ちょっとあやしいグッズとか。さっき、金色の豚の貯金箱見た」

「うん！」