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Never sweet love
龍のお髭〖第3話〗
しおりを挟む最後の仕上げ。龍のお髭。目の前は圧巻だった。職人さんって、本当に格好いい。ひとつのかたまりが、糸のようになっていく。
『すごいね、すごいね!』
悠人はお土産をたくさん買っていた。
『食べきれるのか?』
『お店のマスターとか、ボーイさんとか、親しいお客さんとか』
少し前から、悠人は俺と同じ店で働いている。バーテンダー見習いだ。悠人狙いの客も増えた。
『悠人ちゃんは、美少年趣味だけじゃないのよね。ある意味、魔性ね。まっさらなのよ。降りたての雪みたいな。そこに足跡を、つけたくなるわ~。自分だけの足跡をね。私はイケオジが好きなの。カレッカレッのオジイサマ』
そんなマスターに72歳の恋人が出来た。
──────────
最初、マスターに俺と同じあがりと入りの時間をお願いした。
『過保護ね。でも悠人ちゃんは英明ちゃんが好きよぅ。いっつも英明ちゃんのことをみてるもの』
『熱々ね~』
この店はマスター……ママ?がいるバーだ。主にママが接客。バーテンの俺と見習い悠人がカクテルを作ったり、簡単なツマミを作ったり。スイーツを用意したり。
中々繁盛している、いい店だ。風紀の悪い客は『満席』と理由づけして帰す。
マスターは、今はスレンダーだが高校時代柔道をやっていた。
──────────
帰るのが遅くて、体内時計がずれながらも悠人は頑張っている。
『なあ、悠人。ご霊前、送らなくていいのか』
『あ、知ってたんだね。気を遣わせちゃってごめん。月餅を買ったよ。家用と母さん用に。本当なら帰らなければないんだろうけど、もう、決めたから』
『何を?』
あの村には戻らない、そう言うと思っていた。けれど、悠人の言うことは違った。
『君が僕の帰る場所。君がいるところが僕の家。ずっと一緒にいようね。君に何かあれば、僕の家がなくなっちゃう。だから元気でしわくちゃのおじいさんになるまで長生きしてね。もし君が──いなくなったら、2日後くらいに、僕も君を追いかけるから』
ふふっと悠人は笑う。淡くやさしく。ああ、綺麗だな、と俺は悠人に見惚れた。
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