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My sweet lover
月に一度の贅沢〖第2話〗
しおりを挟む「悠人ちゃんが英明に飽きたら俺のとこきてよ」
美少年系好きの常連の大きな画廊を経営している菅野さんは一目で悠人を気に入ったらしく、個人ナンバーが控えてある名刺まで悠人はもらう始末。困った顔で名刺を受け取り笑うと、
「君の笑顔には風情があるなあ。憂いを帯びて美しいね」
と、言い目を細めてまるで美術品を眺めるように悠人を見ていた。
──────────
「………明、英明、どうしたの?ぼーっとして。疲れちゃった?」
駅弁のはらこ飯と、お稲荷さんの入った袋を手に下げ、悠人は覗きこむように英明を見る。英明は悠人の大きい瞳を独占しているようで、不思議な優越感を感じる。
「お稲荷さんはおあげから作るのは大変なんだよね。英明は甘いお稲荷さんはあんまり好きじゃないから。あそこのお稲荷さんは、僕が作る味に似てる気がする。自画自賛だけど、僕、お稲荷さん作るの、ちょっと上手だと思う」
照れながら言う悠人が可愛らしい。きっと、どんな悠人も、ビールッ腹でお腹が出ても、しわくちゃのおじいさんになっても、悠人は可愛いをだろうなと思った。
さて、何故こんな風に駅にいるか。それは『月に一度の外食の日』だからだ。レストランじゃないのは、悠人が『家がいい』と言ったから。だから俺と悠人で東京駅の駅弁コーナーにいる。
お持ち帰り、今日の夕飯は、悠人が、はらこ飯とお稲荷さん。俺は煮穴子のお弁当とお稲荷さん。ビールはノンアルコールビール2本づつ。
家について、悠人は手を洗い、さくさくと何かを作っている。
「何作ってるの?」
俺が悠人の手元を覗きこむと、
「はんぺんと三つ葉。すぐ出来るよ。うん、お味見する?」
ふわふわ三角の白いマシュマロのようなものが浮いている。可愛い。
味見皿で味見する。美味しい。
いつものお味噌汁のお椀で飲む、はんぺんのおすましはやさしい味だった。
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