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Bitter sweet love
君と一緒にいたいんだ〖第7話〗
しおりを挟む『帰らなくていい』
と言った。傍にいて欲しい、とも。それから悠人はずっと忙しく家事をしている。
「落ち着かないから、いいよ」
「ごめん。逆に何か動いてないと、落ち着かなくって。それに、英明は、そんなことしないって怒るかしれないけど、サボったら、何もしなかったら、追い出されそうで怖いんだ。働いてない分、家のことをしたいんだ」
この瞳には、逆らえない。濡れた子牛の瞳に似ている。
見捨てたら──死んでしまいそうな──。
それからずっと、夕方6時の出勤から、てっぺん回って3時、4時。俺が静かに帰ってきても悠人は起きていて、
「お帰りなさい。寝る前にスープたべて」
と、悠人は手作りの温かいスープをくれる。
「悠人ありがとう。ずっと………一緒にいれたらいいな」
「変なの英明。『ずっと一緒にいような』でしょ?」
無理に笑うことをやめたと言うのに、相変わらず、悠人の笑った顔は、これ以上もないほど、綺麗だ。まるで壊れてしまったアンティーク・ドールのように。
あれから何回かバレンタインを向かえてはチョコを交換した。いつも、寂しそうに
悠人は山の方角を見ている。
「村に帰りたい?」
「ううん。君がいるところが、僕の帰る場所だから。ただ、寂しくはあるね。僕の世界は狭かったから………でもやっぱり、あの雪は、見たいなあ。東京に住む人が村の雪を見たらビックリするだろうね。英明とも、たくさん雪合戦した。春は山菜。じーばーと一緒に籠にコゴミを採った。灰汁抜きしないで食べれるから便利だった……学校でも、山には行ったね。君とサボって遅咲きの桜を見た。綺麗だったな。あの頃から僕は君に惹かれてた」
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