ジキタリスの花

カシューナッツ

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枯れたジキタリスの花

〖第4話〗あなたが忘れられなくて

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 僕はリュートにゲイだとはあまり言いたくなかった。彼はノンケ(異性愛者)だし、いい友達だからだ。ちなみに良い条件なら 『お誘い』にはのる。でも、相手の誘いにただ乗るなんてバカな真似はしない。相手が僕を誘うのではない。誘わせる。選ぶのは、僕だ。

 東洋人の僕のようなルックスはモテる。僕は相手には困ったことはない。トラブルはない。トラブルを起こすような奴はまず選ばない。

 名誉も、地位も、プライドも、心も捨てる、あるのは、欲求に飢えた身体。五感を使う一夜限りの恋人になる、ベッドとシャワールームでのゲーム。

『そっち』が集まる高級クラブにも行っく。計算通りに酔ったふりをして、ドアマンがいて、ポーターがいるような高級ホテルは当たり前に行った。身なりのいい──何処か先輩の瞳に似ている人を選んで誘わせた。

 ワンナイトの関係は気楽でいい。知らない人だから甘えるだけ甘えられる。快楽も食むだけ食んで。だが、事実パートナーのように決まりつつある遊び相手もいた。でも、その人は言った。

 『私は楽しかったけれど。君は優しすぎる。忘れられない人が居るんじゃないかい?』

 先輩が今の僕を見たらどんな顔をするか。

 がっかりする?
 幻滅する?
 失望する?
 先輩がそうさせたのに?

僕はひとり、シャワールームで泣く。こんな未練がましくて、みっともない僕のこころは、何処に持っていったらいいんですか?
泣いても泣いても、こころは渇いて、代わりに身体で埋めようとしている僕は、汚いですか?

先輩は何て言うんだろう。
それでも、昔の先輩なら、あの、パールのような雲の下にいた先輩なら、抱きしめてくれましたか?

僕は笑う。お伽噺だと。


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