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ジキタリスの花
〖第8話〗佐伯先輩と僕は不相応
しおりを挟む最近毎日女子が美術室に来る。先輩への夏休みのお誘いだった。
『勉強を教えて欲しい』
『絵を教えて欲しい』
彼女達の願いは様々だ。そして、散々僕の悪口を言って楽しむクラスの女子たちはどこから仕入れてきたか知らないが先輩に聞こえるように僕の過去を声高に言い出した。
『元貧乏人が佐伯先輩と話すことが不相応だよ。だって小学生の頃「ジャージ君」だったんだよ。モップのお母さんは今のお義父さんの浮気相手だったんだって。で、奥さんが亡くなって家を乗っ取ったんだってうちのお母さんが言ってた』
遠くから、佐伯先輩に聴かせるための悪口。内容は誰にも知られたくない過去。不快なゴシップ単語が沢山入っていた。
ちなみに『モップ』は僕のあだ名。髪の毛が癖毛で髪の色が薄いから。
でも、僕の母さんはもういない。もう、あの甘い厚焼き玉子や、鮭のおにぎりなんていらない。家政婦さんをいびるようになった母さんなんて母さんじゃない。
『それに比べて、佐伯先輩はパーフェクトだよね。お父さんは大学教授だし、お母さんも大学の准教授だって。格好いいし、背も高いし、頭も良いし、この前の全国模試三位だって!運動神経抜群だし。どっかの成金に、佐伯先輩と話してほしくないよねぇ』
『佐伯先輩はモップが可哀想だから優しくしてあげてるんだよ。ていうか、ジャージでモップってお掃除の時間って感じ!』
遠くから聴こえた笑い声。あの頃と同じ。言い返せない自分が嫌いだ。でも、全部本当のことだ。
綺麗な子たちだと思う。でもあの子たちは僕の心に土足で踏み込んでズタズタにする。
女子の話をうまくはぐらかす先輩。僕は離れた席で先輩から借りたマグリットの画集を見ながら、泣きそうになりながら震えていた。
先輩に会いたくて来たけれど僕は、今自分がここにいることがあまりにも惨めで、消えてしまいたかった。暫くして、クラスの女子を上手く帰した先輩が僕をじっと見て言った。『同情』が見え隠れする先輩の瞳。
「裏庭に、行かないか?少し早いけどホトトギスが咲いてるんだ」
「……気を………使わなくていいです…不相応なんでしょう?」
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