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流の唯一のひと〖23─③〗
しおりを挟む暴れる楓を抱きかかえ、寝室に連れていく。
「兄さん、怖いよ、そんな目で見ないで、気持ち悪いよ。さっきの人たちみたい」
「ちがうよ。俺は……ちがうよ……お前が好きなんだよ」
果たして本当に違うんだろうか。
好きなのに、伝わらない、だから無理やり抱く。あのヒートにあてられたαたちと似たようなものなのではないか?そう考えながら楓を見る。
震えて毛布を掴む楓の姿を見つめながら、しばらく手を握って、やさしく名前を呼び続けた。
「落ち着いてきたか?フラッシュバックはおさまったか?」
震えながら、泣きながらコクリと頷く愛しいかつての番。拭えない嫌悪感と恐怖感を与えた張本人が目の前にいるとは、と流は心のなかで自分を嗤う。流が染み付いた楓の精神と身体。愛しいかつての『弟』で『番』。弟を抱き薬を飲まされ『楓自体』を失った。
もう、堕ちてやろうか。
自分の一番欲しいものは、どう足掻いても与えられない。
楓の大切な『兄』にも戻れず、不本意な『番』解消により愛されることもない。
どんなことをしても『楓』から芽生えた不信の気持ちは消えない。
「兄さん、何であの時あんなことをしたんですか?あんな兄さんらしくない………」
卑怯だと笑って欲しい。
愛しているんだ、楓。
「お前だって奏に同じ事をしたじゃないか。しかも一度だけでなく恋人として。『親子』なのにな。俺はお前のヒートにあてられただけだ。お前は選択があった。自分を棚にあげてよく言えたものだな。お前は穢い」
「に、兄さ──」
カラーコンタクトをとると、虹彩が薄茶の綺麗な大きな瞳が映える。零れそうに潤んだ瞳が切ない。
「今更、奏を好きな奴と一緒にさせれると言っても、涼と双子とはな。面白い。奏は子供を産める身体らしいな。かなり難しいが。どんな化け物が生まれるんだろうな。お前がヒートなんかを起こしたせいで、沢山の人の人生が狂っていく」
「兄さん、もう、それ以上言わないで……兄さんは、兄さんだけは私の味方で居てください」
両手で顔を隠して楓は泣いた。
「味方でいてやる条件がある」
「何ですか?」
「抱かせろ。あの薬で仮死になって番を解消して、それ以来役に立たなくなったが、お前だけには『反応』する。笑えるな」
流は悲しげに自嘲した。
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